テレビかネットかそれとも実店舗か…音楽を購入するきっかけのルートを探る(2016年)(最新)
2016/03/29 13:08
世の中には意識して、あるいは無意識のうちに音楽に触れる場面と多数遭遇する。テレビを観れば番組内はもちろん、テレビCMでも音楽が流れるのは当たり前、街中を歩いていても店から流れるBGMや、路上を走行する宣伝車両の曲、さらにはカーステレオから漏れる音楽。ゲームのプレイ中や動画視聴、そしてウェブの閲覧の際にですら、音楽は耳に飛び込んでくる。それら日常生活における音楽との接点の中で、どのような機会が曲の購入のきっかけとなるのだろうか。日本レコード協会が2016年3月に発表した最新調査の結果「音楽メディアユーザー実態調査 2015年版(公表版)」をもとに、その実状を確認していくことにする(【発表リリース:2015年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表】)。
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調査対象母集団の要項は今調査に関して先行する記事【「有料音楽離れ」も「音楽離れも」…世代別の「音楽との付き合い方」(2016年)(最新)】を参照のこと。
音楽への対価支払いは主にCDの購入か楽曲ファイルの購入を通してとなる。また対象となる楽曲は、「ファンであるアーティストの楽曲」「すでに知っているアーティストの楽曲」「未知のアーティストの楽曲」に大別される。そこでアーティストの立ち位置に注目した上でそれぞれの種類の楽曲(物理メディアによる提供の楽曲、音源データによるもの双方)に関して、どのようなルートの情報が購入の動機につながったのかを複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。当然調査該当期間に楽曲を購入した人が対象となる。
なお今件項目では2013年の調査公開値までは「無料聴取者(購入はしないが視聴をしていた人)」も合わせ対象としていたり、回答項目内容の区分が異なる形のものだった。直近2015年分とは単純比較ができないため、参考値として合わせグラフを提示しておく。
↑ 楽曲ファイル購入のきっかけ(2015年、複数回答)(購入者限定)
↑ (参考)未知アーティストに関する新品CD購入のきっかけ(複数回答)(購入者限定)
↑ (参考)未知アーティストに関する楽曲ファイル購入のきっかけ(複数回答)(購入者限定)
楽曲購入対象となるアーティストにおける認知の度合いで、購入動機につながる情報の取得ルートが大きく異なる、非常に興味深い結果が出ている。まず第一にテレビ(旧調査項目では番組やCMによる仕切り分けがなされていたが、直近ではすべてまとめて「テレビ」としてある)の影響力の大きさがあらためて掌握できる。楽曲を購入した人の3割台は、その楽曲のアーティストがどのような認知度であっても、購入動機にテレビを挙げており、幅広い層へのアプローチにテレビが有効であることが分かる。
他方、音楽界隈では敵視されることも多い、同時に今後有効活用すべきだとする動きも多々見受けられる動画配信サイトやネットラジオも、実はテレビと同じような影響力の方向性を示している。影響力そのものはまだテレビには及ばないものの、アーティストの認知度や方向性をあまり勘案しなくても済むプロモーションメディアとして、大いに注目すべき値に違いない。同様の傾向はラジオや新聞、雑誌でも見られるが、すでにその値に倍する結果が出ている。
他方、同じインターネット経由でもウェブサイトの場合には、特にアーティストのサイトに顕著な傾向が出ているように、元々ある一定の興味関心が無いと情報を取得し動機付けるだけのきっかけは得られないことが分かる。これは例えば、商店街に足しげく通っていても、パンを日頃通販で買っている人はパン専門店に足を能動的に運ぶことはほとんど無く、結果としてそのパン専門店で登場した新作のパンを知る機会が無ければ、手に取り購入する機会も無いようなものである。何らかの気づき、きっかけが無ければ、自分が普段興味関心の無い場所に足を運ぶ機会は無い。
動画配信サイトもインターネットのサービスには違いない。しかし多分に関連性や連動性に基づいた、あるいは今流行の映像音源などを積極的にアピールしてくるため、実CD店舗に足を踏み入れたのと似たようなきっかけを得る機会がある。また特定アーティストの楽曲を知るためだけでなく、何となく、あるいは検索をするために来訪する人も多い。商店街の例ならば入り口で各店舗の案内掲示板が大きく貼り出され、各店のお買い得品のサンプルがずらりと披露され、アドバイザーが色々とお得情報を教えてくれたり、買い物の助言をしてくれるようなもの。結果としてファン・既知・未知のアーティストそれぞれに対し、それなりのきっかけを与えてくれることになる。
また動画サイトの場合には、直接ダウンロード販売へのリンクを設定している場合も多々あり(サンプルをアップロードして試聴させ、購入をうながすプロモーション映像の公開様式)、これも購入動機としては大きなものとなる。「いいな」と思った直後に購入アクションを起こせるのが、インターネットによる「きっかけ」創生のメリットでもある。
テレビそのもののメディア力はいまだに大きく、音楽を知り、購入意欲をかき立てさせるきっかけとして重要なポジションにあることに違いは無い。他方、動画配信サイトもまた、音楽を知り、対価を支払う機会として、無視できない存在となりつつある。特に連動性が高く、購入衝動をすぐに体現化できる楽曲ファイルとの相性の良さは、注目に値する。
娯楽としての音楽の周辺環境が大きく変わる中、これらの「きっかけ」との関わりはどのような変化を見せていくのか。今後の環境変化に伴い、次年以降の調査結果が楽しみでならない。
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