テレビ業界の売上高(ICMR2013版)
2014/02/12 14:30
メディアの変化、特にインターネットの浸透が進んでも、テレビ業界は未だに巨大な市場であることは、毎月掲載している経済産業省や電通・博報堂の広告費動向を見ても明らか。それではそのテレビ業界における売上高は、他国ではどのような値を示しているのだろうか。イギリスの情報通信省が2013年12月12日付で同省公式サイト上に公開した、世界各国の通信業界・メディア動向をまとめた通信白書の最新版【International Communications Market Report 2013】の内容をもとに、その実状を確認していく。
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日米はケタ違いの大きさ
「International Communications Market Report 2013」ではテレビ業界における主要国の売上を「広告」「公的資金」「その他(実質的に有料放送による視聴番組の売上)」の3区分に仕切った上で掲載している。主に「公的資金」部分は他の区分と比べて少額なため具体的金額が書かれておらず、再構築の際に省略化したものも多分にあるが、それでも再精査の上でその動向をグラフ化すると次の通りとなる。
以前記事にした「コミュニケーション系主要4部門の売上」グラフ同様、上位国、今件では日本とアメリカの売り上げが他国と比べてあまりにも多いため、両国を含めたもの、除外したもの、計2つのグラフを生成し、併記している。またアイルランドはゼロではなく、元データ上に数字表記が無かったためこのような形となっている。表記そのものを除いても良かったのだが、後述する部分では記載してあるので、あえてこのままにした。
↑ テレビ業界における売上高(2012年、単位:億ポンド=170億円)
↑ テレビ業界における売上高(除く日米)(2012年、単位:億ポンド=170億円)
トップを走るアメリカは「その他(有料放送)」部分が大きい。次点をいく日本でもそれなりな金額を示しているが、まだ広告費に頼る面がある。また公的資金の類による比率の高さも日本独特。
日米以外では視聴者数の多さもあり、中国がやや大きめ。そしてブラジル、イギリス、ドイツ、フランスなどが上位についている。インドが少なめなのを除けば、多分に各国の人口に左右されている感はある。一方でドイツやイギリスのように公的資金の注入がそれなりに行われている国もあれば、ブラジルやロシア、インドのようにほとんど無きに等しい国もあり、国毎のテレビに対する施策の違いが見えて興味深い。
国民一人当たりに換算すると
テレビの普及率やテレビへの興味関心度の違いも反映されるが、人口数の多い少ないがテレビ業界の売上には多分に影響する。そこで業界全体としての規模では無く、効率的、質的な面を推し量るため、各国の国民一人の売上高を算出したのが次のグラフ。勢いをチェックするため、2011年から2012年の変化も精査しておく。
↑ テレビ業界における国民一人あたりの売上高(2012年、単位:ポンド=約170円)
↑ テレビ業界における国民一人あたりの売上高(2011年から2012年への変異、単位:ポンド=約170円)
アメリカは市場規模そのものが一番なだけでなく、一人当たりの売上高もトップを貫いている。これなら総売り上げが断トツになるのも当然。日本はそれに続いているが、オーストラリアが競る形で近づいているのが意外。他方、ブラジル、インドや中国のような人口が多い国では、まだ一人あたりの売上が少額に過ぎず、国民数の多さが国単位としての売上を支えているのが分かる。見方を変えれば、今後社会文化・生活水準が今まで以上に向上してテレビの普及率が上がり、さらにテレビ関連の娯楽が活性化して業界が活性化することで、国単位の売上が大きく伸びる可能性を秘めている。
他方年単位での成長ぶりを見ると、日本やアメリカは大きく伸び、さらなる市場拡大の可能性を呈している。イタリアやスペインの落ち込みが著しいが、これは他の「ICMR2013版」の記事で何度か記している通り、両国の不景気が大きく影響していると考えて良い。人口が多い国としては、インドや中国は少しずつだが確実に伸び、今後の期待ができる。
昨今では4大従来メディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の中で唯一緩やかながらも広告費における成長が見受けられる日本のテレビ市場だが、世界規模で確認すると5本の指に入るどころか、アメリカに次ぐ大きさを示していることが分かる。
今後メディアの性質の変化に伴い、テレビの売上はそれでもなお成長を維持できるのか、あるいは落ち込みはじめるのか。特にインターネットの普及浸透が進む国における動向を、特に注目していきたいところだ。
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