高齢者は63.0%が6年以上と長期居住傾向…賃貸住宅の平均居住年数(2021年6月発表分)(最新)
2021/08/04 03:23
賃貸住宅の管理会社で構成される協会「日本賃貸住宅管理協会」では、半年毎のペースで【賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)】の更新版を公開している。その最新版となる「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)・2020年度下期(2020年10月-2021年3月)」が2021年6月付で公開されたのをきっかけに、各種賃貸住宅の最新市場動向の確認を行っている。今回は賃貸住宅管理会社が管理する物件における、「居住者の平均居住年数」に関して現状の精査を行うことにする。
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短期間の学生や外国人、長期間の家族世帯や高齢者
各種調査要項などについては先行記事の【メディア別賃貸住宅業者への反応の変化をグラフ化してみる】に記載しているので、必要な場合はそちらを参照のこと。
賃貸住宅の利用客層を「学生」「一般単身(学生除く)」「一般ファミリー」「高齢者(65歳以上)」「法人」「外国人」に分類し、その上で個々の平均居住年数をグラフ化したのが次の図。「一般ファミリー」と「高齢者」では特に、長年居住者が多い(緑系統色の面積が広い)のが分かる。個々世帯のライフスタイルをイメージすれば(家族世帯は子供の就学問題、高齢者は周辺地域との接点の維持や引越しの手間のハードルの高さ)、引越しの必要性は低い、同じ住居に継続して住み続ける希望を強く持つのは必然的な話で、居住年数が伸びるのは当然の結果ではある。
↑ 平均居住年数(全国)(2020年度下期)
「学生」は2-4年が大半で、4年以上は1割足らずしかいない。「学生」の賃貸住宅利用者の大半が大学生であること、そして通常の大学が4年制なのを考えれば、つじつまは合う。4-6年で3.4%の値が確認できるのは、浪人生時代からの居住者、あるいは留年者と考えられる。または就職してもしばらくは学生時代の住居に居残っているケースもあり得よう。
また「外国人」は4年までの短期滞在が大部分で、スタイル的には「学生」に近い。さらに「1年未満」と「1-2年」が合わせ3割近くで、「学生」よりも短期性が強い。そして「高齢者」は他の区分とは比較にならないほど、6年以上の長期居住者が多数を占めている。これは「一般ファミリー」以上に引越しの必要性が薄いことに加え、上記でも言及したように、高齢の人は近所づきあいも含めた周辺環境そのものとの結びつきが強く、単なる居住空間以上の意味合いが、その居住場所にあるからに他ならない。さらに引越しの物理的、あるいは経済的負担に耐えがたいのも要因だろう。
東京と大阪で異なる動きも!?
これを首都圏・関西圏、さらにはそれら以外の地域となる「首都圏・関西圏以外」に分けてグラフ化すると、地域別の特徴が出てくる。
↑ 平均居住年数(首都圏)(2020年度下期)
↑ 平均居住年数(関西圏)(2020年度下期)
↑ 平均居住年数(首都圏・関西圏以外)(2020年度下期)
「首都圏」「首都圏・関西圏以外」では全国平均と大きな違いは無い。関西圏では「一般単身(学生除く)」の短期利用者が多めなのと、「高齢者」の長期利用者が多めに見える。
昨今急増傾向を示し、さまざまな観点で注目を集めている高齢者の賃貸状況にかんがみ、「高齢者」のみに限定して地域別の動向を見ると、次の通りとなる。
↑ 平均居住年数(高齢者限定)(2020年度下期)
「関西圏」における6年以上居住者の比率が大きいのがあらためて確認できる。ただし同時に4-6年の比率が小さいため、「4年以上」の視点で見れば、「関西圏」が一番少ないのもまた事実ではある。いずれにせよ、どの地域でも、「高齢者」の6割以上が6年以上の居住年数であることに変わりはない。
生活環境が整った都市部における、高齢者の長期入居者率は今後も上昇を続けていくことは容易に想像ができる。その動きに伴い、高齢者の単身世帯も増加する。管理会社側としては、管理そのものの困難さに加え、該当賃貸住宅の建て替えの際の立ち退き問題など、各種負担は今まで以上に大きなものとなるに違いない。
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