総計32.9万台・前年同月比マイナス5.9%、中型のみ堅調(薄型テレビ出荷動向:2017年5月分)(最新)

2017/06/23 05:22

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2017年6月21日付で電子情報技術産業協会(JEITA)は同協会公式サイト上において、【民生用電子機器国内出荷統計】の最新値となる、2017年5月分のデータを公開した。その公開値によれば2017年5月の薄型テレビの出荷台数は32.9万台となり、前年同月比ではマイナス5.9%となった。サイズ別では小型・大型が減少、中型のみが増加している。付加価値型に限定して集計すると、4K対応は減少し、HC(ハイブリッドキャスト)は増加を示した。



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純粋出荷数、前月・前年同月比の確認


データ取得元の詳細やデータ内容に関する諸注意、「出荷数」の定義は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:薄型テレビなどの出荷動向(電子情報技術産業協会(JEITA))】に掲載している。必要ならばそちらを参照のこと。なお2013年11月分以降は諸般の事情で、一部の記事ではいわゆる「上書き更新」の形で記事展開を行っているので注意が必要となる(JEITA側では毎月データを更新発表している)。

最初にグラフ化・精査するのは純粋な出荷台数。直近2017年5月分の出荷台数、そして過去の公開値を基に当サイトで算出した前月比・前年同月比によるもの。テレビは季節(さらにいえば月)による売行きの変化が大きく、単純な前月比よりも前年同月比の方が、全体的な出荷すう勢を推し量りやすいため、前年同月比も合わせて掲載している。なお2014年4月分以降、出荷台数の区分について、基データでは大型(37型以上)が「37型から49型」「50型以上」の2区分に分割掲載されているが(後ほど2014年1月分から3月分の値も公開されている)、今件記事では過去からの継続性を維持するため、「37型以上」の区分で算出するよう、当サイト側で各種再計算を行っている。また2016年2月分から付加価値型として元資料では別途計上されている4K対応型、HC対応型の動向も合わせて反映させている。

↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(万台)(2017年5月分、JEITA発表)
↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(万台)(2017年5月分、JEITA発表)

↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(前月比・前年同月比)(2017年5月分、JEITA発表)
↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(前月比・前年同月比)(2017年5月分、JEITA発表)

2017年5月における薄型テレビの日本国内出荷台数は32.9万台。前月の33.7万台と比べれば台数は減少している。そして前年同月比ではマイナス5.9%とさらに大きな下げ幅で台数を減らしており、単純前月比・季節変動考慮をした実態共にネガティブであると評価できる。ちなみに2年前同月比を試算するとプラス2.2%(年換算ではプラス1.1%)で、実のところはわずかながらポジティブであり、今回月の下げ方は反動によるところが多分にあった結果であるのが分かる。

サイズ別の出荷台数動向としては、絶対数では中型が一番少ないが、前年同月比では一番良い結果が出ている。他方、小型は前年同月比で2割減と大きな下げ。もっとも2年前同月比はプラス3.4%で、前年同月の反動で大きく下げた結果のようだ。

他方、情報開示以降は常に堅調さを示していた付加価値型だが、最近はやや軟調な月も見受けられるようになり、落ち着きを示す状況にシフトしつつある。今回月では4Kが前年同月比でマイナスを計上してしまった。

超大型に該当する50型以上の動向と合わせ、その前年同月比を確認しておく。

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(前年同月比)(50型以上限定)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(前年同月比)(50型以上限定)

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(前年同月比)(付加価値実装型限定)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(前年同月比)(付加価値実装型限定)

薄型テレビの需要トレンドは小型から中型、中型から大型、さらには超大型(50型以上)へのシフトが漸次進んでいるとの解釈ができる出荷動向が続いている。ケーブルテレビ事業者が提供してきた経過措置的サービスのデジアナ変換サービスの終了で、一時的な小型テレビのミニ特需も生じたが、昨今では再び中型・大型にトレンドがシフトする動きが確認できる。今回月は中型のみが前年同月比でプラスで全体としてはマイナス。当サイトで月次報告をしているチェーンストアの売上動向では、2017年6月分はいくぶん軟調な結果が出そうだ。

4K対応テレビやHC対応型は協会側の公開値が2015年以降の開示であることからも分かる通り、ここ数年で普及浸透し始めたテレビの付加価値様式。テレビの買い替え・新規購入者には注目に値する、セールスポイントとなる仕様に他ならず、また新商品にも該当する品目が増えていることから、売上は堅調な状態が続いていた。計上開始の2015年頭からの数か月はスタートダッシュ的な状態で飛びぬけているが、それ以降も4K対応は100%内外、HC対応も数十%のプラスが続いていた。

しかし2016年の春先から特にHC対応において失速感が表れている。同年7月以降はやや持ち直しているが、大きな上昇幅の成長の歩みは止まったと判断する時期が来ているのかもしれない。それでも4K対応は今しばらく大きな数字を見せる気配だっただけに、今回月でわずかながらもマイナスを示したのは驚きではある。

台数そのものと前年同月比の変化


【カラーテレビの買い替え年数】で全般的な傾向値が出ている通り、テレビの買い替え期間の間隔は大体8年から10年(直近の2017年分では9.3年)。1年や2年のような短期間で「地デジ特需」の反動が収まるとは考えにくい。極端な話、7年から9年先の需要を先取りしてしまう事例もありえる。

次のグラフはサイズ別に薄型テレビの出荷台数、さらには台数の前年同月比の推移を算出したもの。「停波前特需、特に年末・年度末」「停波直前の駆け込み型特需」「停波後の年の年末に慌てて購入」の3期間で販売台数は上乗せされ、それ以降は軟調な動きで推移しているのが把握できる。さらに昨今のトレンド転換が確認しやすいよう、一部で対象期間を変えた(短くした)グラフを併記しておく。

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、万台)(-2017年5月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、万台)(-2017年5月)

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(-2017年5月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(-2017年5月)

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(2012年1月-2017年5月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(2012年1月-2017年5月)

グラフ中に吹き出しを配した「アナログ波停止」(2011年7月)までは小型(青線)・中型(赤線)の方が値は高く、出荷台数が多い=良く売れていた。とりわけ停波による切り替えまで一年未満となった2010年末から、その傾向が強くなる。そしてアナログ波が終了し、デジタル波への移行が完全実行された2012年以降においては、これまでとは正反対に大型(緑線)が伸びはじめる。前年同月比ではいずれもマイナスだが、線の上下関係には明らかな違いが生じている。停波によりトレンドの転換が起きた形である。

この動きは、切り替え前は「テレビが視聴できなくなるのが困る。『テレビ視聴環境が無くなる』のを避けるため、まずは1台調達」、そして切り替え後は「末永く使うのを前提に、少々高くても大型のものを調達」といった消費者側の心理が反映され、売れ筋が変化したと判断できる。

同時に地デジ導入後に顕著化した薄型テレビの需要低迷によって、販売価格が大幅に下落。その結果、大型テレビの購入ハードルが下がったのも、大型テレビの実績堅調化の一因。上記で記した通りテレビの買替年数は8年から10年であり、サイズによる価格差もそれほど大きくはないのなら、大きなサイズで良好な環境を長期にわたり楽しみたいとする流れは、納得の行く推定ではある。

注目すべきは「前年同月比」のグラフの動向。地デジ切り替え後に需要が大幅に減った2011年夏以降、急降下の後、各項目ともマイナスが続いていた。これは直前の特需の反動が主要因(震災起因は無い。もし震災によるものなら、もう数か月前に始まっていたからだ)。しかしその下落から1年経過した2012年秋を過ぎても、状況は回復せずにマイナスが続いている。これは単なる「計算上の反動」だけでなく、1年を超える期間における需要減退が起きていることを意味する。「地デジ化特需」が先取りしたテレビの需要は、1年分だけでなく、数年分まで及んでいる。

一方で前年同月比のグラフにもある通り、2012年夏以降、マイナス幅は少しずつ小さくなっている。先取りした需要の先取り分が漸次消化され、従来の状況への回復過程にある。全サイズでプラス化を果たした2013年9月から再び一部で失速したものの、大型テレビはプラスを維持していた。

2013年末から2014年の春までは、2014年4月の消費税率改定を前に、税率が引き上げられて支払金額が増える前にテレビを前倒して購入してしまおうとの思惑による「駆け込み需要」もプラスに作用し、各サイズとも出荷数は順調に伸びた。ところが2014年3月以降は一転して大きく出荷実績を減じている。一般顧客向けの販売市場では3月の時点で駆け込み需要は続いているが、出荷ではすでに4月以降を見据え、市場の需要減退に備えて大幅に出荷数が減らされた次第である。

2014年4月に入り実際に税率が改定されると、出荷台数はますます減り、グラフも大きなマイナス局面に転じることとなった。以降、サイズによる出荷動向に法則性は見出しにくくなり、グラフの形状もマイナス圏を中心にカオスな動きを示すように。上記にある付加価値型テレビの堅調さと合わせ見るに、消費税率引き上げ後の出荷≒販売動向としては「サイズによるセールスの良し悪しは傾向が見出しにくくなった。売れる時は大型が良く売れる」「全体的には大よそ軟調」「付加価値型が良く売れる」の様相を呈していると見ることができる。

今回月では中型のみが売れ、小型・大型が伸び悩むという特異な値動きを示しており、折れ線グラフの上でも違和感を覚える流れが確認できる。もっとも何らかのトレンド形成となる動きではなく、誤差の範囲内のものだろう。次月以降も同じ傾向ならば、何かが起きていると見るべきだろうが。

月ごとの販売動向を経年で


最後に季節変動を考慮せず、特に月次の販売動向の確認ができる、別の切り口によるグラフを生成、精査を行う。このスタイルは当サイトでやはり毎月更新している定点・逐次更新上書き型の観測記事「たばこの販売実績」でも用いているもので、個々月の動向を経年で比較している。このように月単位の動きを重ねると、「毎年年度末と年末が季節上の特需時期となる」「その翌月は反動で販売台数が大きく落ち込む」のように、テレビ販売のパターンが読める。

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(万台)(-2017年5月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(万台)(-2017年5月)

月単位で確認しても地デジ化直前の2011年(一番濃い青)をピークに、それ以降は減少が続いているのが、流れとして把握できる。その一方、2011年から2012年にかけての下げ方と比べれば、2012年から2013年への下げ幅はわずかなもので、下げ止まりの時期に突入しているのが分かる。そして2014年は4月の消費税率改定に振り回される形で、2月までは大幅上昇、3月以降は何度かプラスに戻す月もあるものの、概して軟調での動きに落ち着いている。

今回月はアナログ波停波後の5月に限れば、2015年の32.2万台に次ぐ低い値に留まっている。もっとも2013年以降は30万台で低迷したままなので、単なる振れ幅の領域内なのかもしれない。



上記の通り2016年2月分から付加価値型の2系統の公開値を一部グラフに反映させ、具体的に考察を始めたが、その上で改めて各サイズの出荷動向を見直すと、アナログ波停止による影響は当然なので別として、消費税率引上げが一つのターニングポイントとなり、トレンドが変化した感は否めない。もちろん他の環境変化(付加価値型テレビの出現や普及浸透の開始)と時期的にだぶっているのも事実だが、テレビの調達(買替含む)に関する消費者の心理に影響を与えたと推測するのには十分な変化に違いない。

他方、サイズによる傾向が以前よりも見出しにくく、付加価値に消費者の視点が集まっている現状は、サイズによる出荷実績の検証が、さほど意味をなさなくなる時代が到来しているのかもしれない。もちろんよほどのことが無い限り、小型は選択されにくい時代となっていることに変わりはないのだが。


※薄型テレビ出荷動向の記事更新は2017年5月分をもって終了させていただきます。最新のデータはJEITAの一次データでご確認ください。(2017.07.22.)


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