「日本はアメリカ合衆国との間で貿易や投資部門での協力を促進すべきである」同国有識者97%が同意(最新)
2020/04/17 05:15
外務省は2020年3月18日付で同省公式サイト内にて、アメリカ合衆国における対日世論調査の結果を発表した。その内容によれば調査対象母集団のうち有識者に対し、日米間の経済関係における一層の深化のために日本が特に進めるべき政策について尋ねたところ、選択肢の中では「貿易・投資部門での協力促進」を求める意見の回答率が最高値を示し、97%の人が同意を示していた。次いで「クリーンエネルギーや高速鉄道などの技術協力などの促進」が続いている(【発表リリース:令和元年度海外対日世論調査】)。
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調査概要に関しては今調査に係わる先行記事に該当する【アメリカ合衆国の日本への一般人信頼度85%・有識者は89%に(最新)】を参照のこと。
先の記事【日本が1番中国2番…アメリカ合衆国のアジア地域諸国に対するパートナー意識の重要度推移】にある通り、今調査対象母集団のうち有識者において、日本をもっとも重要視すべきアジアのパートナーと認識した人においては、その理由として「貿易・経済関係」を最上位に挙げている。
↑ 「日本」と回答した理由(有識者、自由回答)(再録)
それでは有識者たちは日米間の経済関係を今まで以上に深化するために、日本側は特にどのような政策を進めるべきだと考えているのだろうか。提示した選択肢について同意をした人の割合(有識者全員が回答)を示したのが次のグラフ。
今件設問は2011年度から開始されたため、それ以前のデータは無い。またシェールガスについては2013年度から新規設置され、日米間のFTA(自由貿易協定)締結は2013年度以降は設問から除外されている(日本がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉に加わったことで、実質的に意味合いが無くなるため)。さらに2017年度ではTPPに関して日本が署名した一方でアメリカ合衆国が離脱したため「TPPへの参加」の選択肢が無くなり、代わりに「貿易・投資部門での協力促進」が新設されている。
↑ 日米間の経済関係をより深化するために日本が特に進めるべき政策は(有識者)
設問が設定されていない年のものを除けば、多くの選択肢・年度で8-9割台の高い値を示している。唯一「シェールガスなど資源開発での協力」が5-6割台と低めに留まっているが、これは設問に事例として挙げられたシェールガスをはじめ多分野でアメリカ合衆国が他国に教示されるべきものは少ない、との認識によるものだろう。仮に今設問が「資源開発に伴う環境問題対策云々」との表記であれば、もう少し高い値を示した可能性はある。
他方、「TPPへの参加(2017年度以降は無し)」「日米間FTA締結(2013年度以降は無し)」「クリーンエネルギーや高速鉄道などの技術協力などの促進」はいずれも高い値を示している。少なくとも有識者の間ではこれらの分野に、より一層の日本側のアプローチ、貢献を望み、期待していることに違いは無い。また2017年度で新たに加わった「貿易・投資部門での協力促進」は97%ともっとも高い値を示し、アメリカ合衆国側の本音が見えてくる結果となっている。
「TPPへの参加」は2015年度では78%、2016年度では57%と大きな下落を示している。TPPは2016年の米大統領選挙において民主党の候補クリントン氏、共和党の候補トランプ氏双方とも反対を表明しており、当選したトランプ現大統領は就任直後にTPPからの離脱を表明し、その大統領令に署名している。TPPへの忌避感は有識者の間でも2015年度時点からあったものとの解釈もできる。
シェールガスも高速鉄道計画も、そしてクリーンエネルギーも日米双方の経済動向に対して大きな影響を与える要素。だからこそ包括的な意味合いを持つ選択肢「貿易・投資部門での協力促進」の回答率がもっとも高いのだろう。日米両政府が今後どのような対応をし、有識者たちの期待に応える動きを示すのか。注意深く見守りたいところだ。
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