伸びるauとSBM、身が削られるドコモ、そして最後の「開国」…今年一年の携帯電話契約動向を振り返ってみる(2013年)

2013/12/18 20:00

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年の瀬も押し迫り、年賀状の作成や室内の大掃除など、今年一年の締めくくり作業に追われる今日この頃。当サイトでも月単位で定期更新・定点観測を行っている対象のうちいくつかにスポットライトを当てて、今年一年の動向を総決算的にまとめている。今回は電気通信事業者協会(TCA)が毎月月初に公開している、日本国内の携帯電話の契約数動向について、簡単にではあるが総まとめを行うことにする。



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全体としては漸増、シェアは2増1減


まずは今年一年…とはいえ12月はまだ終わっていないので11月分までの動向をざっとグラフにまとめてみる。

↑ 携帯電話契約件数(万台)(-2013年11月)
↑ 携帯電話契約件数(万台)(-2013年11月)

↑ 携帯電話契約件数(増減)(-2013年11月)
↑ 携帯電話契約件数(増減)(-2013年11月)

NTTドコモ、au(KDDI)、SBM(ソフトバンクモバイル)の3社を合わせた携帯電話契約総数は概して増加の一途をたどっている。一方、3社間の増減状況を見ると、SBMが常に先頭を走る形でauがそれに続き増加継続。一方ドコモは先に行く2社に追いつく機会が無いどころか、前月比でマイナスの月すら複数機会体験してしまっている。

各社の勢いの違いはMNP(ナンバーポータビリティ)の動きにも表れている。

↑ MNP件数推移(-2013年11月)
↑ MNP件数推移(-2013年11月)

auとSBMはプラス圏、ドコモはマイナス圏で11か月すべてを過ごしている。これはドコモなら「auやSBMに移転するドコモ契約者数が、auやSBMからドコモに契約し直す人よりも多い」ことを意味する。学校なら転校する生徒数の方が転入してくる生徒数より多い状態。元々ドコモの契約者数は圧倒的多数を占めているため、全体契約数における割合は多分を占めているものの、シェアは確実に動き、ドコモの比率は低下を続けている。この1年(11か月間)でドコモのシェアは1.75%ポイント減り、その分auとSBMが吸収してしまっている。

↑ 2013年1月から11月における3社契約者総数に占めるシェア変動
↑ 2013年1月から11月における3社契約者総数に占めるシェア変動

現時点(2013年11月分)ではドコモ45.6%、au29.0%、SBM25.4%。ドコモの50%割れはすでに2010年4月時点で起きているが、3年強でさらに4%強が削れている計算になる。

数字のみで契約者数「動向」を確認した上での総括としては、「SBM堅調、au順調、ドコモ一人負け」と評することになるのだろう。もっとも現時点では今なお、契約者数の上ではドコモが一番、auが二番、そしてSBMがそれらに続く状況に違いは無い。

牛丼業界と類似!? 風向きを変えるドコモの「転換」


携帯電話の契約者数動向に変化を与え得る、携帯電話業界の事件、イベント、出来事を思い返してみれば、多種多様な要件がピックアップできる。「低コストの定額制サービスが次々に登場」「iPhone 5s/5cの発売とドコモのiPhone発売参入」「ドコモのツートップ戦略と3トップ化への転換」「スマートフォン用ゲームアプリ、コミュニケーションアプリの盛況ぶり」「auでの通信障害相次ぐ」「LTEサービスの品質競争」「NECカシオとパナソニックのスマートフォン事業からの撤退」などなど。

これらの事象の中で、もっとも大きなインパクトを与えた、牛丼チェーン業界ならば「吉野家の牛丼価格値下げによる三社横並び状態」に等しいのが、「iPhone 5s/5cの発売とドコモのiPhone発売参入」。牛丼業界における「吉野家の牛丼値下げ」により松屋とすき家の「牛丼価格プレミアム」が無くなったのと同様に、ドコモがiPhoneの販売に参入したことによりauとSBMの「iPhone販売プレミアム」が無くなってしまったことになる。

携帯電話の中で今や主流となったスマートフォンだが、iPhone以外にも多種多様な機種は存在する。しかし詳しい機能や特徴の理解・把握が難しい多くの人にとって、スタンダードで安全牌的な存在は、今やiPhoneが座していると言っても過言ではない。新たにスマートフォンを購入する人だけでなく、一般携帯電話(フィーチャーフォン)所有者がスマートフォンに買い替える場合においても、「iPhoneのある」auやSBMにiPhoneのために移転する人は多い。MNP件数動向を一年ベースでは無く、もう少し長期間の範囲で見るとそれが良くわかる。

↑ MNP件数推移(2008年5月-2013年11月)
↑ MNP件数推移(2008年5月-2013年11月)

元々ドコモはMNPの点でも低迷気味だったが、SBMがiPhoneを導入し始めたことでドコモのMNPのマイナス幅は拡大。そしてauもiPhoneを販売し始めるに至り、ドコモのMNPにおけるマイナス幅はさらに、加速度的に拡大していく。これが「iPhone販売プレミアム」の効果。要は、SBMのみのiPhone販売でマイナス1だとすると、auの参入でマイナス2…となるところだったのが、「iPhone希望者」にさらなる選択肢が生じたことで相乗効果を呼び、ドコモからの離籍者が大幅に増加してしまったことになる。

ところが2013年9月にドコモでもiPhoneを販売しはじめたのをきっかけに、MNPのマイナス幅は急速に縮小していく。かつてSBMやauがそうだったように、販売し始めの不慣れなところもあり、今なおMNPはマイナス、つまりドコモからの流出数の方が多い状況に変わりは無いが、下げ止まらぬ崩落状態からは脱し、改善方向に進んでいることは誰の目にも明らか。当然、それと同時にauとSBMのMNPの値は(プラスには違いないが)幅を縮小しつつある。

牛丼業界のプレミアム問題は単に価格の変更だけで、MNPのような構造も無いため、すぐに効果が表れている。一方携帯電話の契約者数動向ではドコモの販売体制の整備状況に加え、すでにiPhoneシリーズが一定数普及していること、新規参入を果たしたiPhone 5s/5cそのものの商品価値・販売におけるインパクトの問題もあり、さらには「iPhone販売プレミアム」の影響力はそれなりに大きいが「牛丼価格プレミアム」ほどでは無いことから、即効性は見られない。しかし少しずつ、確実に影響は生じている。

無論先行するSBM、au共にiPhone販売に関してはこれまでの経験を活かし、アドバンテージをさらに押し広げるような施策を打ち出している。またそれ以外の点でもLTE周りを中心に、各社共他社に対する優位性をアピールし、その裏付けとなる環境整備と開発を推し進めている。

「iPhone販売プレミアム」の消失が明確化する来年は、ドコモがどこまで状況を回復するか、それが一番の注目点といえる。とりわけMNPの動向に注目することで、その流れを推し量ることができよう。

また今件各数字には一切確認できないが、個人的には一般携帯電話(フィーチャーフォン)にも一目置いておきたい。新作発表会の際に新機種そのものが登場しないことも多くなったが、今なお新たな需要は確実に存在する。中でもスマートフォンの複雑な機能やタッチパネルの操作に不慣れな場合が多いシニア層に、どのような切り口で攻め込むのか。一般携帯電話の取り扱い方に、一つのカギがある気がしてならない。


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