たばこ・雑誌からコーヒー・カードへ…今年の一年のコンビニ動向を振り返ってみる(2013年)
2013/12/15 20:00
毎月定点観測と分析を行っている、日本フランチャイズチェーン協会発表によるコンビニエンスストアの統計データ。今月発表予定の2013年11月分はまだ未発表だが、年の瀬も押し迫ったこともあり、同協会発表のデータなどをグラフ化し、今年一年のコンビニに関する動向を簡単にではあるがまとめてみることにした。
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全体規模としては拡大方向に
まずはコンビニ業界全体としての規模動向の把握。店舗数の増減状況と、売上高・来店客数の月次推移をグラフ化した。
↑ コンビニエンスストア店舗数推移
↑ コンビニエンスストア・売上高と来店客数推移(前年同月比)(全店)
2月にやや落ち込みが見られるが、これは前年同月にローソンで発売された、東日本大地震・震災の復興支援のための宝くじ(【東日本大震災復興支援グリーンジャンボ宝くじ、ローソン店舗でも発売】)の反動によるもの。それ以外は概して拡大の動きを示している。この1月から10月までの間に、店舗数は2000店近くも増加。閉店した店舗も考慮すると、新規開店した店舗数はそれ以上に及ぶことになる。
各店舗毎の動向はともあれ、コンビニ業界全体では、この1年間で店舗数、売上、来店客数共に拡大成長の傾向にあると見て良い。
既存店ベースで見ると客数横ばい、売上漸減
これを既存店ベース、つまり前年同月時点で存在した店舗のみを勘案して、売上高・来店客数の月次推移を算出すると次の通りとなる。毎月月次で記事にしている、プラスマイナスの値はこちらを用いている。
↑ コンビニエンスストア・売上高と来店客数推移(前年同月比)(既存店)
来店客数・売上高共に、概してマイナス領域で推移。つまり「コンビニ全体の来客数増加及び売上高拡大は、店舗数そのものの増加が支えており、各店舗単位での来客数・売上高は低迷している」ことになる。
新規開店した店舗が増えれば、商用エリアが重なる店舗も増え、必然的に客を奪い合う形になる(他企業の店舗はもちろん、同じ企業の店舗同士でもシェア争いは起きる)。店舗数の増加に伴い、1店舗あたりの売上や来客数が減る傾向にあるのは、致し方ない話。
もっともコンビニ業界全体として売上・来客数が増加している、領域が拡大しているのだから、それで構わないとする考え方もある。地域社会に密着したサービスを提供する、社会貢献的観点における存在意義が増している昨今においては、いかに多くの人を対象とするか・商用エリアとして取り込みかが重要であることを考えれば、正しい戦略といえる。
サービス部門の堅調さ、日配食品の手堅さ
最後のグラフは、商品構成別売上高の前年同月比。コンビニの注力動向が良く出た図となっている。
↑ コンビニエンスストア・商品構成別売上高前年同月比(全店ベース)
かつてコンビニを支える二つの大黒柱、雑誌類とたばこ。双方とも「非食品」に当てはまるが、この部類が一番勢いがない。雑誌は紙媒体そのものの低迷に加え、ショーウィンドウ効果が薄れてきたこと、立ち読み客による弊害もあり、かつてのような効果は期待できなくなっている。売り場面積は縮小し、さらに雑誌の一部をレジから直接渡す形に変え、展示そのものをしなくなった店もあるほど。たばこは今なお売上全体において大きな割合を占めているものの、社会的情勢に伴い、今後縮小方向を示すことは目に見えている。
低迷する大黒柱に差し代わる形で、今年のコンビニで目立った勢いを見せたのが、「惣菜」「ドリップコーヒー」そして「プリペイドカード」。「惣菜」は震災以降の中食志向の強まりに合わせて波に乗った形となり、フライヤー商品を中心に販売種類を続々と増やしている。そしてプライベートブランドの拡充も一役買っている。
「ドリップコーヒー」はリピート率の高さや「ついで買い」の誘発など、「たばこ」同様の効果が期待でき、しかも購入層はより幅広い。アロマ的効果も望める。店内にイートインコーナーを設けることで、雑誌に代わるショーウィンドウ効果を担わせるところも出てきている。「惣菜」「ドリップコーヒー」共に「日配食品」に該当するが、堅調さがグラフの動きにも出ている。
そして「プリペイドカード」。この半年ばかりの間に、急速に各コンビニで販売筐体が拡充され、多種多様なカードが販売されるようになった。インターネットの普及率上昇、スマートフォンやタブレット機の急速な浸透に伴い、オンラインゲームやオンラインショッピングを利用する人が増え、それに連動する形でクレジットカードを使えない(カード非所有者)・使いたくない(カードを使うのはリスクが高いと考えている人)・あえて使わない(クレジットカードによる使い過ぎを自制したい人)による需要が急増している。また、贈呈品として用いる場合も増えている。
リピート率は比較的高く、単価も高め。店舗側に落ちるマージンは売り上げの数%と言われているが(公開はされていないが、例えば某社の5000円分のプリペイドカードで手に入るゲーム内通貨は4762枚。クレジットカード経由で購入するとほぼ1枚=1円であることを考えれば、最大で5%近いマージンとなる)、単価が高いため利益も大きくなる。
さらに設置スペースも雑誌などと比べれば小さくて済むだけでなく、たばこのように滞在時間も短いものとなり(雑誌のように立ち読みで滞在時間が伸びることは無い)、回転率も上がる。その上、展示してあるカードはレジで支払いと引き換えに手続きを行いはじめてアクティブ化(プリペイドカードとして有効になる)ため、展示されているカードが盗難にあっても、店舗のリスクは最小限で済む。「小さく高単価だから盗難リスクが高いのでは」という心配は不要。
コンビニサイドとしても「プリペイドカード」は降って沸いたような「新たな大黒柱」に成りうる存在。店舗全体の売上高に占める比率は数%でしかないが、今後社会的な変化が無い限り、成長が望める分野なだけに、各社ともさらに注力をしていくに違いない。
まとめると2013年のコンビニ動向としては「店舗数増加による全体規模の拡大」「店舗当たりの売上・来場客は漸減」「集客アイテムの世代交代が明確化」となる。集客アイテムについては、雑誌もたばこも無くなることはありえないが、今後も規模縮小はほぼ確実とみられるため、来年はさらに新世代のアイテムへの注力が進むことになる。また、新たな集客アイテムの開拓も漸次行われるに違いない。
全体規模の拡大の派生的動きとしては、トラックなどを用いた移動店舗の実証実験的展開や、通販ルートの開拓が挙げられるが、いずれもまだ業績全体を動かすほどの規模にまでは成長していない。もっとも、商用エリアの拡大のところでも言及しているが、今後需要の増加は確実であることを考えると、いかに採算の取れるビジネスとして形作るか、その試行錯誤が続けられることだろう。
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