話題の年金、世代間格差、生活保護問題への考え
2013/12/03 14:30
日本生協連では2013年11月28日付で、多様な切り口から社会保障に対する考え方をうかがい知れる「日本の社会保障制度への意識や考え方に関する調査」の結果を発表した。今回はその内容から、年金問題や世代間格差、生活保護問題などに対する人々の考え方の傾向を属性別に見ていくことにする(【発表リリース:社会保障に関する調査を行いました】)。
スポンサードリンク
社会保障への世代間不公平感、若年層ほど高い傾向…だが?
今調査は2013年9月にインターネット経由で20歳から79歳を対象に実施されている。男女比・世代構成比は日本の年齢・性別比でウェイトバックを実施済み(60-70代はまとめて算出。そのうち70代は出現に任せる形。そのためインターネット利用率の低い70代の回答者数が実人口配分よりも少なめとなっている)。
今件項目では社会保障に関する各種設問に、同意ならば10点・まあ同意ならば5点、やや不同意ならマイナス5点、不同意ならマイナス10点、分からないはゼロ点で割り振りを行い、その平均点を属性別に集計している。まず社会保障全体に世代間の不公平感を感じるかについてだが、全体では5.2点。つまり不公平感を覚える人が多いことになる。
↑ 「世代間で不公平を感じる」(社会保障に対する考え方)(10点:そう思う、5点:まあそう思う、0点:分からない、−5点:あまりそう思わない、−10点:そう思わないで平均点算出)
世間一般的には「世代間格差は若年層ほど強く感じている」という印象が強いが、少なくとも今調査では女性陣は、世代を超えて不公平感を覚えていることになる。むしろ男性・高齢層の低い不公平感の方が少数派。ただしこれは多分に「自分が不利な立場にある」という意味での不公平感では無く、「社会保障システム全般における世代間格差」という全体に対する感想だと考えれば、納得も行く。
他方、その社会保障政策を執り行う政府に対する、政策上の信用感は薄い。
↑ 「政府の社会保障政策は信用できる」(社会保障に対する考え方)(10点:そう思う、5点:まあそう思う、0点:分からない、−5点:あまりそう思わない、−10点:そう思わないで平均点算出)
多くの利益を給されている高齢層はやや低めだが、それでもマイナス、つまり「信用できない」層。全属性から不信感を持たれていることに違いは無い。
「年金保険料支払いたくない」30代までは同意意見多数
続いて年金周り。高齢化社会が進行するに連れ、年金保険料を払い続けていても、自分が老齢年金をもらえる歳になった際、給付そのものが受けられなくなるのではないかとする心配を抱く人も少なくない(あおるメディアが多いのも要因の一つだが)。ならば今支払っている年金保険料は無駄ではないか、払いたくないという意見もある。その意見についてどう思うか尋ねた結果が次のグラフ。
↑ 「年金はもらえないかもしれないので年金保険料は納付したくない」(社会保障に対する考え方)(10点:そう思う、5点:まあそう思う、0点:分からない、−5点:あまりそう思わない、−10点:そう思わないで平均点算出)
当然の話ではあるが、若年層ほど払いたくない人の割合が多く、受給世代に近づくに連れ、「支払わないなんてとんでもない」とする意見が増加する。そして注目すべきは、これほど意見が世代間で二分している状況下で、「全体として」は男女とも「支払わないのは良くない」という形で集約されていること。各世代の人数配分にウェイトバックがかけられていることと合わせて考えると、今の「若年層の意見は世間全般の声として採用されにくい」実情が透けて見えてくる。
最後は不正受給が問題視される一方、本来給付されるべき対象に給付が行き届いてないとする意見も多い生活保護について。
↑ 「生活保護はもっと減額した方がいい」(社会保障に対する考え方)(10点:そう思う、5点:まあそう思う、0点:分からない、−5点:あまりそう思わない、−10点:そう思わないで平均点算出)
男性70代でややイレギュラーな動きを示しているが、全般的にはやや「減額すべきである」との意見に肯定的な流れが見えている。報道で頻繁に不正受給の話や、受給者数の増加が語られているのが一因と考えられる。
社会保障に充てられるリソースは有限で、「あちらを立てればこちらが立たず」の言葉にある通り、何か特定の分野に注力すれば、他の分野のリソースを削る必要が生じてくる。受益対象者の間で激しい綱引きが行われるのは当然の話。また、社会保障は概して、十分そうに見えるサービスを呈しても、さらなる便益を求められるのが常というもの。システム構築・運営をする側としては、厳しい判断と実行が求められる。
今件項目は多分に一般的な世情を反映しているようにも思えるが、その指し示す事柄が正しい方向性、中長期的に見て多数の人に便益を示すものであるという保証はない。むしろ逆の方向を向いている可能性もある。その点にはくれぐれも注意してほしい。
■関連記事:
【社会保障、「現状維持は難しい」7割超え】
【既婚、子持ちほど厳しさを増す…サラリーマンのゆとり感をおこづかい面から眺めてみる(2013年)】
【「今重要なのは年金と介護問題」「失業対策は若年層のみ問題視」…世代別の「重要と考える社会保障制度」】
【5割強は「負担増でも社会保障維持拡大」、「負担維持で保証引き下げ容認」は2割】
【政府への要望、社会保障に景気対策】
【若年の意見力は団塊の三分の一にも満たず!? 投票者ピラミッド(第46回衆議院選挙版)】
スポンサードリンク