北方領土問題認知度99.1%、テレビ・ラジオ、新聞が主な情報源(最新)
2024/01/26 02:52
内閣府は2024年1月12日、北方領土問題に関する世論調査の結果を発表した。それによると北方領土問題の現状を知っている人は99.1%に達していることが分かった。ただし現状をよく知っている人は1割にとどまっている。また今問題を何で知ったかの問いには9割近くの人が「テレビ・ラジオ」、5割ほどが「新聞」と答えており、4マスによる認知が圧倒的であることをうかがわせる結果が出ている(【内閣府 世論調査一覧ページ】)。
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今調査は2023年10月5日から11月12日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、郵送法によって行われたもので、有効回答数は1624人。男女比は785対839、年齢階層別構成比は18-29歳149人・30代165人・40代264人・50代295人・60代289人・70歳以上462人。
「北方領土問題」とは北海道本島の東側に位置する、日本固有の領土である北方四島(歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島)が、ソ連/ロシアによる法的根拠を有さない状態での占拠が続いている状況に対し、日本への返還を求めている問題。「法的根拠」無くとは第二次世界大戦の末期1945年に、当時のソ連がその時点で有効であった日ソ中立条約を無視して対日参戦し、北方四島を占領、ソ連がロシアになった現時点でも占拠し続けていることを指す。またこの問題が存在するため、日ロ間では現在もなお平和条約は締結されていない。
↑ 北方領土とその周辺の地図(【外務省:北方領土問題ページから】)
今調査結果によれば、北方領土問題における認知度は高く、調査対象母集団全体の99.1%が現状について知っていると答えた。聞いたことが無い人は「分からない・無回答」も含め0.9%にとどまっている。
なお2013年調査までは単純に北方領土問題を知っているか否かを尋ねており、「現状」という但し書きは設問には無かった。そのため回答傾向も異なったものとなっており、連続性は無いため、前回調査までの結果は別グラフとして参考までに挙げておく。
↑ 北方領土問題を知っているか(-2013年)
↑ 北方領土問題の現状を知っているか(2018年-)
設問の変更で回答結果に大きな差が生じている。恐らく2013年までの「内容をよく知っている」と回答した人も少なからずは、回答時の現状を問われたら「よく知っている」ではなく「ある程度知っている」と判断したことだろう。
比較可能な5年前と比べれば、直近年では北方領土問題に関する話が露出する機会は少なくなっているのも否定できず、認知度合いが薄れている可能性は多々ある。2023年時点では北方領土問題が存在することを知っていても、現状を知らない人が35.0%いるのが実情である。
それでは「聞いたことが無い」「分からない」以外の人、つまり「北方領土問題」を何らかの形で見聞きした人(現状を知らなくてもよい)は、どのようなルートで知ったのか。それを複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。これは見方を変えると、どのルートでの広報活動が「現時点では」有効なのか、積極的に行われているのかを知ることができる。
↑ 北方領土問題を何で知ったか(聞いたことがある人限定、複数回答)(2023年)
4マスのうち「テレビ・ラジオ」が88.0%、「新聞」が50.5%と他のルートから群を抜いて高い値を示しており、北方領土問題は主にこの2経由で認知されていることが分かる。年齢階層別の詳細データを見ると中年層以上で特にこれらのメディアの値が高いことが確認できる。
↑ 北方領土問題を何で知ったか(聞いたことがある人限定、複数回答、一部、年齢階層別)(2023年)
また、類似問題の尖閣諸島(【尖閣諸島を知った経由「テレビ・ラジオ」が93.0%、求める取り組みも「テレビ」が最多回答(最新)】)や竹島(【竹島を知った経由「テレビ・ラジオ」が89.7%、求める取り組みも「テレビ」が最多回答(最新)】)の調査結果と比べると、「学校の授業」により知った人の割合が高い。北方領土は古くから問題視されており、歴史や地理などでも折に触れて語られてきた結果といえよう。
一方、4マスのうち「本や雑誌などの印刷物」は値が低め。これも尖閣諸島や竹島の問題同様、普段閲覧されている紙媒体では取り上げられる場面がほとんどないのが主要因。「テレビ・ラジオ」や「新聞」のように、他の普段から目にしている情報に織り交ぜて情報を提供するのが難しいため、このような結果が出ている。
「ホームページやインターネットのニュース」は16.4%だが、年齢階層別では中年層の値が高め。普段からのインターネットの利用頻度、活用度合いがそのまま反映されているものと考えられる。啓発物の利用やイベントは1割足らず。現時点では行政サイドからのアプローチは、認知度を高める手法としては成功とはとても言えない結果となっている。
詳しくは別の機会で解説するが、広報啓発活動への参加促進に向けた取り組みとしては、官公庁においては従来型のイベントや啓発物もさることながら、インターネット関連の促進需要が高いことが確認されている。運動を主導するサイドとしても、時代の流れに合った対応が求められよう。
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