若年の意見力は団塊の三分の一にも満たず!? 投票者ピラミッド(第47回衆議院選挙版)
2015/02/22 06:05
社会や政治に対する年齢階層による意見力の違いは多数の調査結果で示唆される話だが、選挙においてもよく論議の対象となる事案ではある。各年齢区分における人口そのものの違いに加え、投票率の差が結果として大きな差異を導いてしまう。今回は2015年2月20日付で総務省から発表された調査結果をもとに、昨年末2014年12月14日に投票・開票が行われた直近の衆議院議員選挙、つまり第47回衆議院総選挙における投票者ピラミッドなどを作成し、世代間の意見力について投票率の観点から眺めてみることにした。
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人口多く投票率も高い団塊世代、人口少なく投票率も低い若年層
取得元となったのは【総務省の衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果】から【平成26年12月14日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果】。ここから「47衆年齢別投票状況について」のデータを利用する。
これは全国の4万8620投票区の中から188投票区(47都道府県×4投票区)を抽出し、該当投票区について男女別及び年齢別に投票率を調査したもの。各都道府県から標準的な投票率を示している1市1区1町1村を抽出している。このデータを用い、男女別で有権者数、そしてその中で実際に投票した人の実数をピラミッド型のグラフとして生成したのが次の図。合わせて普段よく見かける、純粋な投票率のみのグラフも作成し併記する。
↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票状況(調査対象地域総計、万人)(性別・年齢階層別有権者数と投票数、投票状況調査地区における結果)
↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票率
元々少子化の進行により、若年層の人口は他の年齢階層と比べると少なめ。さらに投票コストは若年層の方が高い。やらねばならないこと、やりたいことが多く、投票に参加するための時間や手間が惜しい、そして直接すぐに自分自身へ成果が返ってくるようには見えないことから、選挙に対する優先順位が下がり、結果として投票率は低くなる。当然、選挙権を持つのに投票しない人(男女とも薄い部分)が増え、若年層における有効投票者数は減少してしまう。
世間一般には「若年層と団塊世代層で政治に対する意見力は2倍から3倍の差がある」と言われている。今回のデータで見る限り、人口数では無く投票者数で「20代前半」と、最も投票者数の多い年齢区分となった「男女とも60代後半」との差を試算すると、男性では3.80倍、女性では3.68倍の差が出ており、その言葉が決してオーバーなどころか過小評価であることが分かる。投票を受ける政治家の視点では、特定世代に向けた政策を立案する場合、若年層3人強と団塊世代1人は同じ重きとの計算になる。
例えば男性20代前半から支持を集めそうな施策をした場合に投票に結びつきそうな想定投票リターンを1.00とすると、同じ政治リソースを男性60代後半に向けて投入すれば、想定投票リターンは3.80が期待できる。投票されるか否かの観点では、投票しない有権者は精査に値しない。これでは政治家諸氏がシニア層の方ばかり向き、若年層を軽視しても仕方がない。
元資料では抽出対象となった地域の有権者総数・投票者総数以外に、該当選挙時における総有権者数及び投票者数も掲載されている。そこで各属性(男女別の有権者・投票者)の総数に対する乗数を試算し、概算ではあるが日本全土における総有権者数・総投票数を世代・性別に算出したのが次のグラフ。
↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票状況(概算総数、万人)(性別・年齢階層別有権者数と投票数、投票状況調査地区における結果)
シニア層と若年層の「政治意見力」(≒濃い着色をした投票者数部分)の違いが改めて理解できるというものだ。
前回衆議院総選挙と比較すると…
さらに前回の衆議院選挙、つまり第46回衆議院総選挙と世代別の投票率の差異を算出すると、若年層から中堅層の選挙離れが進んでいるのが分かる。
↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票率(前回衆議院総選挙投票率との差)
今回の総選挙は解散の公知から投票までの期間が短かかったため、各党の政策アピールが十分でなく違いが見い出しにくかったこと、解散の事由が明確でないとの解釈もあったこと、さらに北日本で寒波や大雪などが生じており気象条件の上で投票の足が引っ張られたことなどから投票率は低下、結果として全世代で大きく下げる形となった。
減少幅が大きいのは若年層から中堅層。特に30代から40代前半の減少ぶりが著しい。団塊世代に向けて減少幅は次第に縮小し、元々投票率の高かったシニア層と若年層との差がますます開く結果となっている。
政治家の立場から見た上での考え方「若年層3人強と団塊世代1人は同じ重き」。これが「ゆがんだ状態」なのは間違いない。1票の格差云々と叫ぶ方々がいるが、それと同様に重大な問題である。さらにその現実を知りながら、「あきらめてしまう若年層」「自分の既得権益を手放すのが惜しく、不公平を是正する動きを見せない団塊世代」の双方の意識にも問題がある。投票は権利ではあるが罰則付きの義務ではないからと消極的になるのではなく、さまざまな工夫を凝らし「グラフ上側の、薄い色の部分を濃い色で塗りつぶしていくか」、つまり「若年層の投票率を上げていくか」を考えねばならない。投票しない、意見を発しない限りは存在しないのと同じ扱いを受けてしまう。男性ならば20代前半と60代後半との間に開いている3.80倍という投票者数の差異も、仮に有権者全員が投票すれば大よそ1.51倍にまで差を縮める事が可能となる。
若年層では相対的な「投票コスト」が投票のハードルとなっている。そのハードルを押し下げるには他国の状況も検証し、良い施策は積極的に導入検討課題とすることが求められる。また、見方を変え、ハードルが高くとも喜んでそれを飛び越え投票に足を運ぶように、政治を執り行う側も若年層に向けたアピールが求められよう。
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