この4年間の電子書籍利用者推移を探る
2013/11/01 15:45
ライフメディアのリサーチバンクは2013年10月30日付で同公式サイトにて、読書に関する調査結果を公開した。今調査は2010年以降毎年ほぼ同じ時期・条件下で同様のものが行われており、いくつかの項目では経年変化を確認することができる。そこで今回は電子書籍の利用者動向について精査をしていくことにする(【直近分の発表リリース:読書に関する調査】)。
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漸増する電子書籍利用者…だが
今調査のうち直近のものは2013年10月18日から23日に渡りインターネット経由で、10代から60代の男女を対象に実施されたもの。有効回答数は1200件。男女比や世代構成比(10歳区切り)で均等割り当て。なお今件における「電子書籍」ではネット経由で配信される雑誌や漫画も含まれる。
2010年以降毎年、都合4回分の「電子書籍を利用したか」の設問に対する回答をグラフ化したのが次の図。
↑ 電子書籍を利用したか(2013年のみ「過去一年間」の条件付き)
最初の調査2010年時点では利用者は23.7%だったのが2012年には24.6%。有料読者に限れば5.9%から8.4%と確実に増加している。ところが2013年には利用者全体は20.8%、有料読者も7.9%に減っている。
これは質問の設定で2012年までが単に「経験があるか無しか」を尋ねていたのに対し、2013年では「過去一年間」と直近1年のみの経験に限定したのが原因。つまり2013年では「これまで電子書籍を読んだ経験はあるが、最後に読んだのは1年以上前で、この1年には無い」人がカウントされないことになる。来年以降再び2013年の水準から増加すれば、「電子書籍利用者は確実に増加している」と受け止めることが出来るが、現時点では(今調査に限れば)認識は難しい。
増えるスマホやタブレット、減る一般携帯
電子書籍購読者に、購読時に利用した端末種類を尋ねた結果が次のグラフ。面白いように利用機種のシフトが確認できる。
↑ 電子書籍の利用端末(電子書籍を利用した人限定、複数回答)(2010年のスマートフォンはiPhone限定)
2008年から2011年頃までに流行した、一般携帯(フィーチャーフォン)向けの散文的・叙事詩的な小説「ケータイ小説」(【10代男性4割・女性7割近くは「ケータイ小説読んだことアリ」-広まりを見せる携帯小説(2009年)】)が貢献する形で、一般携帯電話による電子書籍利用者は相当なものだった。しかし端末自身がスマートフォンに移行し、電子書籍も高機能なリーダーが多数展開され、作品も多種多様に及ぶようになると、スマートフォンの利用者は増え、それと引き換えの形で一般携帯電話は漸減していく。また、電子書籍リーダーやタブレット端末も漸次増加の動きを見せる。
興味深いのはこの電子書籍利用端末の世代交代に伴い、パソコンも漸減していること。パソコン向けリーダーの機能が劣化していることは無く、むしろ改善され、単に読む点では問題が無いように見える。となるとやはりスマートフォンや電子書籍リーダー、タブレット端末の利用普及に伴い、相対的に機動力の点で「パソコン自身が」劣るため、次第に使われなくなりつつあるものと考えられる。
なお「ケータイ小説」は多分に女性が愛読する事例が多かったこともあり、電子書籍の利用端末における、一般携帯電話からスマートフォンへの移行は、女性の方が劇的な動きを示している。
↑ 電子書籍の利用端末(電子書籍を利用した人限定、複数回答)(男女別、一般携帯とスマートフォン)
元々電子書籍の一般携帯電話での利用は女性の方が多かった。ひとえに「ケータイ小説」が貢献していたといえる。しかしその分、スマートフォンへの移行は2011-2012年にかけては男性に後れを見せる形となった。ただし2013年になると男女差はほとんど無くなり、「ケータイ小説」の影響はほぼ消えた形となっている。
今後は一般携帯の利用減はもちろんだが、パソコンも漸減し、機動力に長けた、それこそ紙の書籍同様に気軽な持ち運びが出来るスマートフォンがさらに利用の度合いを高め、電子書籍向け利用端末として浸透していくに違いない。一方、「併せ持つ」という点では不利ではあるが、読み心地の点ではスマートフォンより優れた電子書籍リーダーやタブレット端末が、どこまで利用端末として普及していくのか、気になるところだ。
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