日本の順位変わらず・数字はやや改善(国債デフォルト確率動向:2013年Q3)

2013/10/29 08:45

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当サイトでは毎月定点観測的に、債権リスクを示す指針の一つ「CPD」において、CMD Visionのリスクレポートのウェブ上で日々更新公開される上位国(=ハイリスク国)の動向を基に精査を行っている(【定期更新記事:CPD(国公債デフォルト確率)動向】)。一方同リスクレポートでは日々の上位国更新データだけでなく、四半期ごとに一般公開される詳細レポートも存在し、そこには上位国だけでなく同社が随時動向を確認している各国の主要値(CPDなど)が公開されている。先日2013年の10月28日、その最新版である2013年Q3(第3四半期)分が公開された(【CMA Release Global Sovereign Credit Risk Report 一覧ページ】)。今回はこの公開情報の中から、普段月次ベースで報告している項目を中心に、四半期単位の動向をチェックしていくことにする。



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多くの上位国でリスク低下、だがアメリカは…


データの取得場所、各種用語に関しては、月次更新版記事のまとめ【定期更新記事:CPD(国公債デフォルト確率)動向】で解説している。そちらを参考にしてほしい。

まず最初に生成するのは、最新の2013年Q3におけるCPD上位国15位、そして日本を追加したグラフ。値が低い方が低リスク(=安全性が高いと判断されている)なので、このグラフでは左の国ほどCPDが低い=低リスクとなる。

↑ 四半期CPD低リスク上位国(2013年Q3、上位15位+日本、低値=低リスク)
↑ 四半期CPD低リスク上位国(2013年Q3、上位15位+日本、低値=低リスク)

低リスク国の顔触れ自体に大きな変化はないが、サウジアラビアが抜けアブダビが加わっている。また順位にもやや大きな変動がみられる。特にアメリカ合衆国が前四半期の第四位から第九位に後退しているが、これは先日まで世界市場に大きな影響を与えた、財政上の与野党協議の動向とそれに伴う同国内の混乱が反映されているものとみて良いだろう。とはいえ、上位陣に収まる国は財政上の低リスク国の常連ばかりで、納得できる顔触れ。

気になる日本は、5.2%で19位。前四半期Q2では6.2%・19位だったので、状況自体はやや改善、相対順位は変わらずとの判断ができる。CPDの算出上では、日本の財務状況回復はやや改善しているが、他国との比較では足踏み状態との認識のようだ。

続いて2013年Q3時点の上位10国、そして日本を対象とした、過去1年間の四半期単位でのCPD動向を記したのが次のグラフ。

↑ 四半期CPD低リスク上位国推移(2013年Q3時点の低リスク10国+日本)
↑ 四半期CPD低リスク上位国推移(2013年Q3時点の低リスク10国+日本)

ここ数年に渡り世界全体の問題として注目を集めていた、ヨーロッパ地域の財務問題だが、今なお懸念はダース単位で存在するものの、最大の山場は超えた感はある。これを受けて同地域に所属する国々をはじめ、関係が深い国でもCPDの値は軒並み減少傾向を示している。今四半期ではこれまで例外的に値を高めていた(=リスクが上昇していた)イギリスも減少に転じており、状況の好転化が見て取れる。日本もその恩恵を受けてか、大きく値を減じている。

他方上記でも触れているが、CPD低リスク国上位陣では唯一、アメリカ合衆国が値を伸ばし、リスクの上昇との判断を受けている。理由も上にある通りだが、常にトップ5の常連だった同国が第九位に甘んじるあたり、同国への不安があらためて認識される。

為替レートの確認


昨年末の日本国内における政治情勢の変化を皮きりに、日銀の姿勢も大きく施策ベクトルを変え、対円の為替動向にも大きな影響を与えている。今年4月4日に発表された『「量的・質的金融緩和」の導入について』をトリガーとして大きな円安化(適正レートへの流れの中の一局面に過ぎない)は周知の通りだが、最近ではアメリカの「出口戦略」(金融緩和政策の縮小への動き)が先送りされたことでドル安への思惑が広がり、円ドルレートは小刻みな動きを見せながらもやや円高ドル安への方向に集束しつつある。一方ユーロは状況の漸次改善化を受けてか、昨年末と比べれば歩みは遅いものの、しっかりとした足取りでユーロ高の動きを示している。

↑ ユーロ変移(対円、終値、2012年1月2日-2013年10月25日)
↑ ユーロ変移(対円、終値、2012年1月2日-2013年10月25日)

↑ ドル変移(対円、終値、2012年1月2日-2013年10月25日)
↑ ドル変移(対円、終値、2012年1月2日-2013年10月25日)

ひるがえって日本の動向を見ると、ヨーロッパやアメリカの財務状況に敏感に反応する形で市場の変動は起きているが、国内財務状況は国内情勢、中でも先の震災に絡んだ影響が大きい。経済復興のための施策への期待は国内外共に大きいが(今後はそれにオリンピックへの施策期待も加わる)、その反映は経済施策の常の通り早急に姿を見せるものではなく、それ故にCPDも5.2%と、上位国と比べればやや高い(=リスク高)と見なされている。

今回、1%ポイントの改善が見られたのは、消費税周りの話が影響している面も多分にあろう。また一部識者による「国債発行額のGDP比」への懸念もあるが、これは引受先の国内外比率の問題も多分に影響を受ける事柄であることから、一概に「破たんリスク」という観点で他国と比べることは難しい。

次回の2013年Q4分では、今回もっとも注目の動きを示したアメリカ合衆国での「とりあえずの」混乱収拾、日本の消費税引き上げ本決定、そしてヨーロッパ以上に世界の注目を集めるようになった中国の財政・経済懸念など(ちなみに中国の現四半期のCPDは7.75%、26位)、CPDが変動しうる状況が目白押しとなっている。日本は「低リスク15位+日本」と特別枠を設けること無くグラフを生成できるのかも合わせ、気になるところではある。


■関連記事:
【プエルトリコが急上昇、ギリシャ・キプロスは減少…(国債デフォルト確率動向:2013年10月)】



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