直近では国税0.96兆円・特別税0.12兆円・地方税1.05兆円で合せて2.12兆円…たばこの税収推移(最新)
2024/09/11 02:47
先に【国税・特別税・地方税あわせて1本あたり15.244円…たばこ税の推移(最新)】などでたばこの税金に関する解説記事を執筆した後に、「たばこ販売による税収全体の動向はどのような状態なのだろうか」との疑問が頭に浮かんだ。1本あたりの税率・税額が増えれば、全体としての税収は増加するが、値上げに伴い販売本数が減れば、逆に税収は減る。そのバランスはいかなる状況なのだろうか。そこで今回はたばこ税など、たばこの販売による税収の推移を確認する。たばこ税は逐次引き上げられ、たばこの販売金額も上昇しているのだから、たばこによる税収も漸増しているとのイメージは、おぼろげながらあるのだが。
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たばこ販売によるたばこ税の税収は
先の記事「たばこ税の推移」などにもある通り、たばこの販売そのもので得られる税収は、「たばこ税(国税)」「たばこ特別税(国税)」「たばこ税(地方税)(都道府県税と市町村税から構成される)」の3項目から成るたばこ税、そして消費税で構成されている。
↑ たばこ1箱あたりの定価の構成(メビウス・580円の場合、円)(2021年10月以降)(再録)
このうちまずは「たばこ税」の推移を確認したのが次のグラフ。国税および特別税は財務省の【財務省統計表一覧】から逐次会計年度の確定値を抽出。地方税は総務省の【地方財政白書】内にある決算資料の中から逐次確定値(都道府県税と市町村税を別途確認した上で合計する)などを抽出していくことになる。また、直近年度分は総務省の【地方財政制度】の公開値を用い、見込み額をグラフに適用する。
↑ たばこ販売による税収(兆円)
「たばこ税の漸次引上げにより税収は漸増」とは単なる想像上の話でしかなく、実際には前世紀末から、たばこ販売によるたばこ税の税収は2兆円強のままでほぼ横ばいとなっている。むしろたばこ消費量の減少により、2008年度あたりから税収も漸減。2010年度以降は2010年10月のたばこ税大幅引き上げにより、どうにか息を吹き返し、2兆円割れの懸念を振り払った形となっている。ただし2011年度をピークに再び税収は漸減の動きを示し、2018年度以降は2兆円割れ。2021年度でようやく持ち直した感ではある(加熱式たばこの盛況ぶりが底上げに貢献した模様)。たばこ税の一部銘柄における軽減措置が撤廃され、たばこ税そのものの引き上げが行われるのも、税収の実情を見れば納得ができる動き。
ちなみに次のグラフは日本たばこ協会のデータを基にした、同期間における紙巻たばこ販売本数の推移。前世紀末をピークに漸減、この数年は大きく下降傾向にあることがうかがえる。2013年度は前年度と比べてわずかに増加しているが、これは2014年4月の消費税率引き上げに伴い、3月までに駆け込み需要が発生しており、その影響を受けたものと考えられる。その分、2014年度は大きく減少している。2015年度の上昇分も、2016年4月からのJTによる主要銘柄の価格引き上げに伴う駆け込み需要が影響したのだろう。案の定、2016年度以降は大きな減少を示す形となっている。
なおたばこ税がかかるたばこには紙巻きたばこ以外に、加熱式たばこやリトルシガーがあり、2020年度分から日本たばこ協会で販売データなどが公開されている。今記事で勘案されているたばこの税収には、加熱式たばこやリトルシガーからのたばこ税も加わっていることに注意が必要。
↑ 紙巻たばこ販売実績(億本)
2017年度以降の本数の減少の仕方がやや大きめに見えるのは、加熱式たばこやリトルシガーなどにシェアを奪われているのが原因だと考えられる。
消費税込みで試算をしてみる
「たばこ税」としての税収に係わる話は以上だが、たばこの代金としては内税で消費税も加わっている。購入サイドとしては「自分の支払った代金のうち、税金として納められる金額の動向を知りたい。たばこ税であろうと消費税だろうと税金に変わりはない」との考えを持つ人も少なくあるまい。たばこ税と消費税とは換算方法など体系的に異なる部分があり、ひとまとめにするのにはややリスクが生じるのだが、今回は「たばこ購入で払った税金の総額」を見るため、あえて積み上げのグラフを作成する。
消費税額も試算レベルと見なして、たばこの販売金額と該当期の消費税率を基に単純計算を行う(紙巻きたばこだけでなくリトルシガーと加熱式たばこも、販売金額が公開された2020年度以降について勘案)。その結果が次のグラフ。なお消費税率の8%への引き上げは2014年4月であるため、2014年度以降において税率8%が適用された結果となっている。同様に10%への引き上げは2019年10月のため、2020年度以降で適用。
↑ たばこ販売による税収(消費税概算込み、兆円)
たばこ税と比べれば消費税による税収は大きなものではなく、全体の動向に変化を与えるものではない。消費税率が引き上げられ、引き上げ分の消費税額は増加したものの、販売本数が大きく減ったことでたばこ税は減り、税収の総額はむしろ減少する結果が出てしまっている(2020年度以降は値上げやリトルシガーと加熱式たばこの盛況ぶりで増加しているが)。
これら税収動向からは、冒頭で触れたイメージ「たばこによる税収は時代の流れとともに漸増している」が単なる憶測に過ぎず、税収そのものは横ばいで推移していることが分かる。むしろ2008年度からの動きを見る限り、たばこの消費量の減少に伴いたばこによる税収の減少を危惧して、税率を上げている感すらある。つまりたばこによる一定税収の確保のため、たばこ税率は引き上げられていると考えれば道理は通る。
無論「税率引き上げによりたばこの代金が上がることで、喫煙者の喫煙を抑えることができる」との健康面からの施策効果への期待も、たばこ税の引き上げの一因。しかし税収の実情の限りでは、大義名分に過ぎない…ような気がするのは当方だけだろうか。
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