「役不足」正しい意味を知ってる人は4割どまり
2013/10/04 09:45
文化庁は2013年9月24日付で、同庁が毎年定期的に発表している「国語に関する世論調査」の最新版、2012年度版の概要を発表した。その内容によれば、「役不足」という言い回しの意味を正しく知っていた人は4割に留まり、間違った意味で覚えていた人は5割を超えていたことが分かった。「噴飯もの」は2割足らず、「流れに掉(さお)さす」は2割強しか正しい意味を知られおらず、間違った用法が多分に認識されていた。世代別では若年層ほど正解率が高いものと高齢者ほど高いものがあり、ばらつきが見受けられる(【発表リリース(PDF):平成24年度「国語に関する世論調査」について】)。
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今調査は2013年3月に個別面接調査方式で16歳以上の男女に対して行われたもので、有効回答数は2153人。
「役不足」「気が置けない」など日常の生活でよく使われる慣用句でありながら、その意味を誤認・誤用されている言葉も少なくない。中には誤用されている方が世の中に浸透してしまい、間違った解釈で相手が受け止めてしまうかもしれないとし、安易に使えない事例も生じてくる。
例えば「役不足」はビジネスの場で用いられることが多く、相手に大きな誤解を招きかねない。部下と上司の間で「(部下)私をこのチームから外した理由を教えてください」「(上司)それは役不足だからだよ」というやり取りが交わされた場合、部下が「役不足」の意味を正確にとらえていれば問題は無いが、間違った意味「役目が重すぎる」で誤認していると、「上司は自分の力量が足りないと思っている、能力を認めてもらえない」と解釈してしまう。また、仮に部下が正しく意味を知っていたとしても「上司はちゃんと正しい意味で言ったのだろうか」と疑心暗鬼に陥るかもしれない。
今発表資料では「役不足」「流れに掉さす」「気が置けない」「潮時」「噴飯(ふんぱん)もの」の5つの言い回しについて、選択肢を提示して意味を選んでもらい、正しい意味を認識しているか否かを確認している。
↑ 言葉の意味(正しい意味と思うもの)
グラフでは正しい意味の選択肢を赤で着色している。これを見ると正しい意味で覚えている人が一番多いのは「潮時」のみで、残りの「役不足」「流れに掉さす」「気が置けない」「噴飯もの」は間違った意味で覚えている人の方が多いことになる。先の「役不足」でも、間違った、正反対の意味で覚えている人の方が多い。
使う事例はあまり無いかもしれないが、「流れに掉さす」「噴飯もの」は特に正解率が低く、誤用の意味でとらえている人が多い。これでは発言する側が正しい意味を知った上で発言しても、聞く側が間違った解釈で話を理解してしまうリスクが生じてくる。
このような慣用句は概して歳を経るほど正しい意味を知っている……というイメージがあるが、実際にはそうとも言い切れない。
↑ 言葉の意味(正解率)(世代別)
「気が置けない」は歳を経るにつれて正解率が上がるが、「噴飯もの」「役不足」は若年層の方が高い正解率を示している。「流れに掉さす」は中堅層が高く、「潮時」は若年層・高齢層が飛びぬけた値を記しており、規則性に欠ける結果が出ている。
これら世代間の慣用句に関する認識の差が、あるいは上で例に挙げた「役不足」のような、世代間における会話のギャップの一因となっているのかもしれない。また慣用句は上手く使えれば綺麗な言い回しとなり、文面そのものも引き締まるが、使う側の誤解釈、相手の誤認により、意図したものとは異なる内容が伝わってしまう可能性がある。使う際にはくれぐれも注意したいものだ。
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