推計約54万人、理由は職場になじめない・不登校・就活失敗・人間関係…ひきこもりの現状(最新)

2020/09/16 05:26

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2020-0901内閣府では2020年7月31日付で、「子供・若者白書」の最新版となる2020年版を、専用サイト上にて公表した。その白書においては、若年層を中心に各種公的調査の結果を取りまとめ、多方面から若年層の現状を分析・報告し、行政の各種施策なども紹介している。今回はその中から、いわゆる「ひきこもり」について、その実態の確認をしていくことにする(【子供・若者白書について】)。


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次以降のグラフは内閣府が2015年に実施した「若者の生活に関する調査」を一次データとするもの。白書で言及されていない部分は、その調査の最新データを反映させてまとめることにする。

「若者の生活に関する調査」によれば15歳から39歳を対象とした調査対象母集団において、狭義でのひきこもり認定者率は0.51%、広義では1.57%との結果となった。

↑ ひきこもり該当定義内容と推計人数(15-39歳対象、該当状況において半年以上継続している人のみカウント、万人)(2015年)
↑ ひきこもり該当定義内容と推計人数(15-39歳対象、該当状況において半年以上継続している人のみカウント、万人)(2015年)

↑ ひきこもり該当定義内容と該当年齢階層全体比(15-39歳対象、該当状況において半年以上継続している人のみカウント)(2015年)
↑ ひきこもり該当定義内容と該当年齢階層全体比(15-39歳対象、該当状況において半年以上継続している人のみカウント)(2015年)

単純に人口推計と合わせて換算すると、狭義ひきこもり数は17.6万人・広義は54.1万人となる。ただし「ひきこもり」の定義にはグラフにある通り「普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からもほとんど出ない」「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する(広義ひきこもり対象者)」などいくつかの段階区分があり、注意が必要となる。

さらに調査における非回答者(調査は調査員による訪問留置・訪問回収。5000人中調査不能数は1783人・35.7%。うち転居や住所不明など明らかに回答拒否以外の理由による人は368人)には多分に該当者がいるものと思われるため、実態としてはもう少し上回ると考えた方がよい。

一方、グラフ中の注意書きにもあるが、心身的な病気によるもの、自宅就労者、家事手伝いなどをしている人などは今回の「ひきこもり」には該当しない。例えば花嫁修業中の人、SOHOスタイルで働いている人、妊娠している人は対象外となるので注意が必要。

ひきこもり状態に陥るのには何らかの原因があるはずだが、それを尋ねた結果が次のグラフ。3大理由は「職場になじめない」「病気」「就活失敗」である。なお今項目では現在「ひきこもり」状態にある人に加え、かつてその経験があった人にも尋ねた結果を併記する。

↑ 現在の状況(ひきこもり)になったきっかけ(複数回答、広義のひきこもりに該当する人限定)(2015年)
↑ 現在の状況(ひきこもり)になったきっかけ(複数回答、広義のひきこもりに該当する人限定)(2015年)

↑ 過去の状況(ひきこもり)になったきっかけ(複数回答、過去において広義のひきこもりに該当する経験がある人限定)(2015年)
↑ 過去の状況(ひきこもり)になったきっかけ(複数回答、過去において広義のひきこもりに該当する経験がある人限定)(2015年)

学校関連でのつまづきは不登校によるところが多く、受験の失敗は相対的ではあるが少なめ。過去の経験では不登校が最多なのは、現在では状況を脱しており、昔の経験を尋ねていることによるものだろう。一方で就業における問題や病気によるものの多さも目に留まる。

「その他」の事例が3割台を占めているのは、「ひきこもり」化するトリガーが一様では無く、人により多様なものであることがうかがえる。あるいは匿名による調査であっても他人には語ることが難しい理由や、具体的な言語化には難儀する「もやもやとした心境」によるものもあるのだろう。

今調査の詳細は【若者の生活に関する調査報告書】に記されているが、それを確認する限り、個々の資質の積み重ねと、何らかの大きなきっかけが相互作用した結果、ひきこもり化したパターンが多いように見受けられる(例えば「ひきこもり」対象者はそれ以外の人と比べ、自分の感情を表に出すのが苦手な人が多い)。見方を変えれば、たとえ資質があったとしても、きっかけを乗り越えることができれば、ひきこもり化は避けられる可能性が多分にある。

無論それには個々の対象者自身だけで無く、保護者をはじめとした周囲のサポートが必要なのは言うまでもない。



余談ではあるが。2019年版の白書では【高齢ひきこもりが61万人いるとの報道】でも伝えている通り、2018年に実施された中高年を対象とした引きこもりに関する調査についても言及していた(直近となる2020年版の白書ではわずかに推計数が2015年時点で54.1万人であることのみ書かれている)。今白書はあくまでも「子供・若者白書」であることから今記事の本文では言及していないが、調査結果の概要としては次の通りとなる。

↑ ひきこもり推計人数と有効回収数に占める割合
↑ ひきこもり推計人数と有効回収数に占める割合

一部報道で「40-64歳の中高年ひきこもり数が61.3万人で、15-39歳の若年ひきこもりより多い」と騒がれたが、該当年齢階層全体に対する割合では少ないのが実情。さらに15-39歳対象の調査では「専業主婦・主夫、家事手伝いと回答した人」は広義のひきこもりから除外していたが、40-64歳対象の調査では含めてしまっている。同じ基準で再計算をすると、40-64歳のひきこもり推計人数は46.9万人、1.11%となる次第である。


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