ドコモのiPhone販売開始とMNPとフェルミ推定と…今後の契約者数動向を予想してみる
2013/09/12 07:55
先日【NTTドコモからもiPhone販売へ、正式発表】にもある通り、日本の携帯キャリア大手3社のうち、iPhone未取扱だったNTTドコモも、2013年9月20日発売のiPhone 5c・5sから販売を開始することとなった。そこで今回は毎月定点観測をしている【携帯電話契約数】などのデータを元に、ちょっとしたフェルミ推定的な数字遊びをしてみることにする。
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半ばNTTドコモのiPhone取扱開始の噂に合わせる形で用意した記事【日本の携帯電話契約者数動向をまとめてみる(2013年8月末まで)】でも解説したように、SBM(ソフトバンクモバイル)がiPhoneを取り扱って以来、MNP(Mobile Number Portability。ナンバーポータビリティ。電話番号を継続しつつ契約会社=キャリアを変更できる仕組み)の転入者数と転出者数の差異で算出される「MNPの増減」は、ほぼiPhoneの動向で決定づけられていると見て良い。要は「一般携帯電話からスマートフォンに更新する際に、自キャリアでiPhoneを取り扱っていない人が、取り扱いのあるキャリアに転出するためにMNPを使う」というものだ。
↑ MNP件数推移(-2013年8月)(再録)
無論全部が全部というわけではないが、2011年10月にauがiPhone 4Sを取扱いし始めてからの挙動は、iPhoneとMNPの関係の深さを裏付けている(相関関係だが、因果関係も多分にあることは容易に想像できる。他に主だった理由が見当たらないからだ)。
単純化すると次の図のようになる。
↑ ドコモがiPhoneを取り扱う前の、MNP周りの動向(概念図)
これが、今回ドコモによるiPhone取り扱いの決定で、既存のドコモユーザーがスマートフォンに切り替える際に、「iPhoneが欲しいのでauかSBMに転出する」という選択肢は、原則無くなる。
↑ ドコモによるiPhone取り扱い開始後の、MNP周りの動向(概念図)
つまりドコモの転出分と、ドコモからauとSBMへの転入分がほぼ無くなる次第である(今件は「ドコモからのMNP利用による転出はiPhone利用のためのみ」という仮説の上での話であることに注意)。
この仮説を元に、auがiPhone販売を始めた2011年10月以降、「もしドコモからのMNPによる転出が無かったら」という試算で、各キャリアの月次契約数純増減をグラフ化したのが次の図。
↑ 携帯電話契約件数(増減)(2011年10月-2013年8月) ※ドコモのMNP減少が無く、au・SBMのMNP増加が無いと仮定した場合
auは第三位に留まる月が多く、SBMとドコモが競る状態となる。またこのような形で契約数純増が推移すれば、現行のようにドコモのシェアが漸減する事態も沈静化しうる。契約数全体から見れば、月当たりの純増はほんのわずかの割合でしかないが、各社のプレッシャーは現状とはかなり違ったものになるのは言うまでもない。
そしてこの試算グラフは、今後の三社の動向を推し量る図にもなりうる。ドコモのiPhone取扱開始で、これまでの「auとSBMが勝ち組、ドコモが負け組」的なMNP、契約数純増の動向は終焉を迎える可能性は少なからずある。
もちろん実際にはMNPの利用者すべてがiPhone絡みというわけではない。これまでもauやSBMからドコモにMNPを使って転入してきた人もいれば、auとSBMの間を行き来した人もいる。また、ドコモがiPhoneの販売を始めても、「SBMの方が経験豊富で、『お父さん』も好きだから」とSBMを選ぶ、「3M戦略に基づいた通信環境の整備に期待が持てる」とauを選ぶiPhone買い替え希望者もいるだろう。上記の仮説はあくまでも物事を単純化するためのものでしかない。
さらにドコモのiPhone販売参入で、アドバンテージを失ったauとSBMが、さらなる販促を行い、優位性を維持する可能性も高い。また、ドコモがiPhoneの取り扱いをはじめても、しばらくは導入直後の混乱も予想され、すぐに先行2社のようなスムーズな展開がなされるとは考えにくい。三国鼎立状態に移行するには、しばらく時間がかかる。
一方、上記のような状況は容易に想像が付く。ドコモにはいまだに一般携帯利用者が多数おり、買い替えの際にはiPhoneの選択を考えている人も多い。少なくとも今後は、MNPによってドコモ離れが起きる可能性は桁違いに小さくなる(さらにいえば、中堅層以降における「ドコモブランド」の影響力の大きささも忘れてはならない)。
2013年9月分からすぐに変化が現れるとは考えにくいが、MNP、そして契約者数増減の動向において、これまでとは違う風が吹き始めることだろう。
…少なくとも、iPhone保有予定者にとっては、選択肢が増えただけでも吉報には違いない。
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