新型コロナウイルスの流行で悪化の動き…大学生の就職状況(最新)

2024/03/17 02:37

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2024-0310文部科学省の定点観測的調査の一つ【学校基本調査】を基にした大学進学率に関する精査記事【大学57.7%・短大3.4%、前世紀末から漸増中…大学進学率(最新)】の中で、直近の不況時期において、大学進学率が低下の動きを示していたこと、その低下の原因のひとつに「就職活動で『大学卒業』ブランドの効力が落ちてきた」実情があるとの解説をした。そこで今回は、その大学生における就職状況を確認していくことにする。

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直近となる2023年においては、同年3月の大学卒業者のうち、正規・非正規雇用を問わず就職した人は75.9%。大学院や専修学校、海外の学校への入学など進学をした人は12.5%。一時的な仕事に就いた人は1.6%、進学も就職もしていない人(就職浪人や資格取得のための勉強、花嫁修業や結婚による専業主婦化など)は8.2%となっている。

そのうち「就職した人」の中で「非正規就業(フルタイムの契約社員、派遣社員)」に該当する人、一時的な仕事に就いた人(パート、アルバイト)、進学も就職もしていない人(進学準備中、就職準備中、家事手伝い、ボランティアなど)を合わせて、「安定的な雇用に就いていない人」の率を算出すると、2023年では全卒業者のうち12.6%となる。この値は「学校基本調査」で2012年分から新たに算出されたものだが(それ以前は「非正規就業(フルタイムの契約社員、派遣社員)」の値が算出されていない)、試算当初の22.9%から直近の12.6%へと大いに低減している。非正規就業に就く理由は人それぞれだが、その立場が正規就業と比べて低評価のものと仮定した場合、大学卒業生の雇用状況は改善されていることになる。

ただし2021年では前年比でプラス3.4%ポイントと大幅に悪化した。新型コロナウイルスの流行による景況感の後退が原因だろう。また就職した人の割合も2021年では前年比で悪化しており、やはり同様の原因によるものと考えられる。直近2023年ではいずれも2022年と比べて数字の上では改善している。

これらの値のうち主要なものを抽出し、前世紀末からの推移を見たのが次の折れ線グラフ。「安定的な雇用に就いていない人」の動向も別途グラフ化する。

↑ 大学(学部)卒業者の就職率など
↑ 大学(学部)卒業者の就職率など

↑ 大学(学部)卒業者のうち安定的な雇用についていない人の割合
↑ 大学(学部)卒業者のうち安定的な雇用についていない人の割合

今世紀に入ってからは金融危機直前にピークを迎えた就職率だが、その後急落(むしろ2008年9月のリーマンショックがタイミング的には近い)。これは雇用市場の冷え込みから、大学卒ですら就労先が決まらない、見つからない人が増えたことを意味する。次のグラフでも示すが、「進学も就職もしていない人」の比率がその分増加しているのが分かる。また、就職率の上下とほぼ反する動きとして「一時的な仕事に就いた人」と「進学も就職もしていない人」の合計率は増加する動きを示している。就活(就職活動)をしている、あるいは就活しながら短期的なアルバイトをしている人が増えていると考えれば、この動きは納得がいく。

もっとも2011年あたりから、雇用市場は回復を迎えている気配が見られる。就職率は少しずつ増加。それとともに「一時的な仕事に就いた人」と「進学も就職もしていない人」の合計も減少している。この動きは【大学生の就職率動向推移】など、厚生労働省発表の就職(内定)率推移からも確認できる。もっとも2021年から2022年は新型コロナウイルスの流行による景況感の大幅な悪化で前年比で減の結果が出てしまっているが。

気になるのは「進学率」も低迷の動きを示していたこと。これは大学からさらに大学院に進学しても、就職の上では必ずしも有利とは限らない現状が、大学院などへの進学の魅力を押し下げているものと考えられる。あるいは大学院でさらに深く勉学に励むことと、就職先で生き甲斐などを見つけることへの優先順位・価値観に変化がでてきたのだろうか。実際、就職率の値にこだわって実情を確認すると、大学院の修士課程はともかく、博士課程や専門職学位課程の卒業者における就職率は、単なる大学卒業者よりも低い結果が出ている。

一方で2021年以降、進学率は少しずつ増加の動きが見られる。新型コロナウイルスの流行で悪化した雇用市場をかんがみ、進学することであえて就職を先延ばしにする人が増えているのかもしれない。

同じ期間の動向について、他の区分も含め詳細な比率の推移を見たのが次のグラフ。

↑ 大学(学部)卒業者動向(詳細内訳、各年卒業者別)
↑ 大学(学部)卒業者動向(詳細内訳、各年卒業者別)

前世紀末から今世紀初頭においては、大学卒に占める「進学・就職をしない人」の割合がかなり高かったこと、進学率や就職率も低めだったことが分かる。また2005年あたりから就職か進学のいずれかを選ぶ人の比率が増加し、進学・就職をしない(できない)人の比率が減少傾向にあったこと、直近の金融危機でやや「就職派」が減ったもののここ数年は再び増加、しかし「進学派」は継続して減少していることなどの動きが分かる。

また2021年において、就職率の減少や進学・就職していない人率の増加など、大学(学部)卒業者の就職状況に大きな変化が生じていることが、改めて確認できる。直近の2023年ではいくぶん2020年の値へと戻しの動きが生じているが、まだそこまでには至っていないのも先で触れた通り。

少なくとも今世紀に限れば、現状では大学生(学部)の就職率は最高水準にある。それとともに進学や就職をしていない人は漸減を続けており、こちらも今世紀では最低水準に違いない。ただし2020年からの数年間では新型コロナウイルスの流行による影響で就職率などが悪化している。注意が必要である。



金融危機で就職率は10%ポイント近く下落している。これがこの数年における「大卒でも就職できるとは限らない」との印象を強く与えた主要因と考えられる。しかしその下落した値ですら、前世紀末期から今世紀初頭と比べれば高値を示しており、世間一般に語られている話について、やや首をかしげたくなるのも事実ではある(無論、就職先の内情まではこのグラフからは判断できないので、その点まで考査すればこの疑問も解消されるのかもしれないが)。


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