育児休業取得によるマイナス点、「家計困窮」「世話で疲労感」「復職への不安」

2013/08/20 11:30

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ライフネット生命保険が2013年8月5日に発表した、既婚有職者を対象とした「育児休業に関する意識調査」の結果内容によれば、調査対象母集団のうち育児休業を取得した経験がある人においては、取得時におけるマイナス点としてもっとも多くの人が挙げたのは「家計のやりくりが厳しくなった」だった。4割強の人が同意を示している。次いで「子供の世話で疲労感が増した」「復職に対する不安感から精神的に追い詰められた」が続いている。また少数ではあるが、人事・給与面で不利益な扱いを受けるという、明らかに違法な対応をされたとの回答も確認できる(【発表リリース:育児休業に関する意識調査】)。



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育児休業最大の問題点は「手取りの減少」


今調査に関する調査要件などは先行する記事【男性による育児休業取得の受け入れムード、2割強に留まる】で確認のこと。

保護者が乳幼児の育児に専念できるよう、法制上では最長1年半まで認められている育児休業(それ以上の期間は企業側がルール化することで延長が可能)だが、昨今では政府側の「3年までは取得選択可能なように、企業側による規定作成を行ってほしい」という施策方針により、その有り方や取得環境に注目が集まっている。今件ではその育児休業を実際に取得した人に対し、どのようなマイナス効果が取得者本人に生じたかを尋ねている。

まずは全体的な回答結果だが、もっとも多い意見として挙げられたのは「家計のやりくりが厳しくなった」で、44.4%。半数近い回答となった。


↑ 育児休業を取得したことによるマイナス効果(複数回答、実際に育児休業を取得した人限定)

法定上は育児休業期間中において給与を支払う必要性は無いものの、企業によっては有給のように、ある程度の補てんがなされる制度が用意されている場合もある。また公的な給付金(育児休業給付金。原則就労時の50%)や、社会保険料の免除(支払わずに、保険周りのの適用においては保険料を払った扱いになる)などの制度も用意されている。

とはいえ手取りの絶対額は休業前と比べて減る場合がほとんどであり、当然家計のやりくりも厳しくなる。昨今の「育児休業3年までの選択可」話でも、長期間の育児休業を望む声があまり盛り上がらない一因が、この「家計が厳しくなる」点にある。

次いで多いのは「子供の世話で疲労感が増した」。これが3割強。育児休業を取得したからには、当然生活の多分で育児を行うことになる。とりわけ子供が乳児の時期には、昼夜を問わず世話をすることになり、中には疲労を覚える人も出てくる。「育児ノイローゼ」と呼ばれる症状も発生しやすい。その域にまで達しなくとも、3割の人が疲労感を実感しているという実態は、注目に値する。

家庭内、あるいは育児そのものでは無く、就業への不安も多い。長期間休んだことで仕事の勘を忘れてしまうのではないか、復職しても自分の居場所は無くなったも同然になってしまうのではないか。そのような不安は尽きない。そして実際復職してから、その不安が実体化する事例も少なくない。上位項目では「復職に関する不安感から精神的に追い詰められた」「スキルや情報不足で仕事についていけなくなった」などがそれに該当する。

またリリースでも指摘されている通り、「復職後、人事面で不利益な扱いを受けた」「同給与面で~」がそれぞれ7.2%・6.5%確認できる。1ケタ台で少数には違いないが、明らかに違法な対応(育児・介護休業法違反。【育児・介護休業法のあらまし:厚生労働省】にある通り、同法法第10条、第16条、第16条の4に抵触する)であり、注視に値する。

概して女性の方が多いマイナス効果


この「育児休業によるマイナス効果」を、回答者の性別に区分した上で確認したのが次のグラフ。


↑ 育児休業を取得したことによるマイナス効果(複数回答、実際に育児休業を取得した人限定)(男女別、男性回答者は少数のため参考値)

概して女性の方がマイナス点が多く、男性がよりマイナスさを感じた項目は「勤務先の上司からの評価が下がった」「夫婦げんかが増えた」「夫婦関係の溝が生まれた」「勤務先でのマネジメントが困難になった」「勤務先の部下からの評価が下がった」の5項目。職場での周辺からの評価減やマネジメントの問題は、復職後時間をかけていけば回復できるものと考えられるが、男性の育児休業取得により概して自宅に夫婦共に過ごす時間が長くなるにも関わらず、夫婦仲が悪くなる傾向があるのは不思議さを覚える。……むしろそれだからこそ、そしてトラブルが起きやすい乳幼児の育児をするからこそ、あつれきが生じるのかもしれない。

その他の項目は女性の方が回答率は高い。特に上位項目では押し並べて男性を大きく上回る結果が出ている。これは往々にして、男性が取得時には女性も世帯に居て(専業主婦や兼業主婦としてパートなどに出るものの、一定時間は自宅で育児を共にする)共に育児をするパターンが多い一方、女性が育児休業を取得する時にはその多くの時間帯で男性は勤務中であるのが要因だろう。

気になるのは女性回答における「配偶者が家事を手伝わなくなった」の回答率が15.6%と高めなこと。男性にとっては「育児休業で一日中時間が取れるのだから、自分は手伝わなくてもいいよね」という心境なのだろうが、女性から見れば明らかなマイナス点となる。男性においては配偶者の女性が育児休業を取得したとしても、これまで通り、むしろそれ以上に家事のサポートを心掛けたいものだ。



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