半世紀で首都圏では高齢者数が8割増・地域別高齢者人口推移

2013/08/21 11:30

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国土交通省では2010年9月27日付で国土審議会・政策部会の第一回長期展望委員会を開催、以降定期的に同会を開催し、日本の中長期的な動向推測やその推測に対する施策検討を、同省の政策視点を中心に行っている(現時点で第三回までの開催が確認できる)。今回はその各会で提示された資料を基に、今後の日本における高齢者(65歳以上)の人口推移推計を確認していく(【国土交通省:長期展望委員会】)。



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高齢者人口は半世紀で2600万人から3800万人に増加


同会内で配布された資料においては、2005年までは確定値(国勢調査によるもの)、それ以降は同省推計値による、2050年までの日本の人口推移の他に、高齢者の人口推移が掲載されている。まずはそれを元に、確定最新値の2005年分、そして推測値のもっとも未来の値を示した2050年分を併記した、全国及び各地域圏の人口を併記したグラフを創生する。約半世紀でどの程度の増加が生じるのかが分かる。


↑ 各地域別高齢者人口変移予想(2005年は確定値、万人)

2050年における日本全土の高齢者人口は3764万人。先行記事で記した通り、同年の人口推計は9515万人だから、約4割が高齢者という試算になる。半世紀の経過でも高齢者数の順位に変化は無く、首都圏1348万人、近畿圏607万人、中部圏502万人と続く。このグラフでも特に首都圏の増加ぶりが目に留まるが、他地域も合わせ増加「率」はやや把握しづらい。

そこで増加率を算出したのが次のグラフ。全体では46.6%。つまり45年で高齢者人口は1.5倍ほどに増加するという試算になる。近所のおじいちゃん・おばあちゃんが2人だったのが3人に増える、と表現すれば分かりやすいだろうか。


↑ 2050年における高齢者人口増加率(推計、2005年確定値との比較)

沖縄県がずば抜けて増加率が高く、ほぼ倍になっている。先の人口そのものの記事でも唯一増加を示した地域(圏)だが、その増加分の多くは高齢者であったことがあらためて確認できる。

また沖縄県以外でも首都圏や中部圏、近畿圏など、人口減少率が緩やかな地域における高齢者人口増加率が大きく、「大都市圏は高齢者人口増加率が大きい」「地方圏では小さい(減少しているわけではない)」傾向があるのが分かる。地方では「高齢化」の進行と共に「人口そのものの減少」も並行して起きている一方、都市部では「人口そのものの減少よりも高齢者の増加の動きが著しい」傾向があり、単に「人口に関する都市部と地方の二極化」と表現するのは難しい、多ベクトルの動きが生じているのが分かる。

この増加推移を折れ線グラフで記述したのが次のグラフ。対象エリアが多く、煩雑なものとなったので、合わせて全国・東京圏・名古屋圏・大阪圏に限定したものも併記する。


↑ 各地域別高齢者人口変移予想(2010年以降は推計、2005年確定値を1.0とした場合)


↑ 各地域別高齢者人口変移予想(主要圏)(2010年以降は推計、2005年確定値を1.0とした場合)

上記の棒グラフからも推測できるように、沖縄県は一様に急上昇のカーブを継続し、増加を続けている。一方でその他地域は首都圏の大きな上昇ぶりが目立つが、いずれも2040年前後をピークとして、それ以降は横ばい、ゆるやかな低下を示すようになる。地方圏では2020年あたりから横ばい・さらに一部地域では減少に転じるのに対し、首都圏と近畿圏・中部圏(両圏はほぼ同率で推移している)では2040年まで増加を続ける動きを示すのが興味深い。

ざっくばらんにまとめると「日本の高齢者人口は増加傾向にある」という事象は、その内訳として「主要圏の急激かつ継続的な増加」と「地方圏の増加と、2020年前後からの横ばい、漸減」という、二極化の中で起きていることになる。

なお主要圏では東京圏の伸び方が著しく、大阪圏では全国平均に近い値に留まっている。大阪圏の人口減少推移が他の主要圏と比べて大きかったのも、これが一因である。

増加の中でさらに特定地域に集中する高齢者人口


全体人口は増加するが、その過程で増加傾向も一様では無く、二極化する。当然、時間の経過と共に増加率が高い主要圏の高齢者人口が占める、高齢者全体の比率は高くなる。2005年時点では45.3%だった「東京圏」「名古屋圏」「大阪圏」合わせての高齢者人口比率は、2050年には52.9%にまで増加する。高齢者の過半数が、この3主要圏に集まっているという計算になる。


↑ 全高齢者人口に対する主要圏高齢者人口比率(2010年以降は推計)

特に東京圏に限れば、23.3%から29.8%と、6.5%ポイントもの増加となる。

高齢者が都市圏に集中するのにはいくつかの理由がある。元々都市圏に住む人が多かったのに加え、地方圏に住む若者が少なくなり、そのまま歳を経ることで高齢者が死去し、若年層が高齢者にスライドするのが一点。さらに人口減少に伴い、地方では生活サービスの供給をはじめとした居住環境が悪化し、人口密集地帯に引っ越す人が増えるのが一点(昨今問題視されている「買物困難者」「過疎化」「無人地域問題」もその一端)。

今後日本では(というよりは先進諸国共通の傾向だが)、高齢者人口の増加に加え、地域的な高齢者の集中化がさらに進むことになる。高齢者に配慮したインフラの整備が必要になるが、特に地方では財源や費用対効果の面で課題は大きい。そしてこれらの問題の多くは、解決策を立案できたとしても、その実施には大きな予算や長い年月が必要不可欠になる。多方面の状況を突き合わせた上で、可及的速やかな手立てを講じる必要があろう。


■関連記事:
【国連予想による日本の2100年までの人口推移(2012年子供・子育て白書版、番外編)】



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