法定以上の育児休業や育児向け時短勤務制度、導入企業は2/3前後…ただし大企業メインの場合
2013/08/07 11:30
日本経済団体連合会(経団連)は2013年7月29日、女性活躍支援・推進などに関する調査結果を発表した。それによると調査対象母集団企業においては、6割強の企業が育児休業制度について法定を上回る措置を行っていることが分かった。育児をサポートするための短時間勤務制度では7割を超える企業が実施している(【発表リリース(PDF):女性活躍支援・推進等に関する追加調査結果】)。
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育児休業制度で法定以上の措置が行われている企業は64.1%
今調査は2013年6月21日から7月5日にかけて経団連会員企業1300社に対して行われたもので、有効回答者数は348社。産業別では製造業160社・非製造業188社、規模別では従業員(正社員)300以上318社・300人未満30社。
先日解説したが、現行法では最大1年半までが取得可能な育児休業(それ以上は企業側で任意に延長可能)について、法的な縛りでは無く各企業に対して「状況に応じて3年までの延長可能」の制度を導入するようにとの要請が、政府から各経済団体に対して行われている。この動きに絡み、実態調査を行ったのが今件の調査結果と思われる。
それによれば調査対象母集団企業において、法定(子供が1歳まで。一定条件下では1歳半に達するまで育児休業が可能)を上回る措置を実施している企業は64.1%となった。
↑ 育児休業制度について法定を上回る措置を行っているか
約2/3の企業が法定以上の措置を実施していることになるが、その具体的内容を答えてもらった結果が次のグラフ。
↑ 育児休業制度に関して法定を上回る措置の具体的内容(複数回答、措置実施企業限定)
個々の世帯の事情を鑑み、子供が3歳以上でも取得可能としている企業は14.3%。多くは「1年半を超え3年までの間」の長さで育児休業が取得できるようにしている。あくまでも「取得可」なので、育児をする側の選択の幅が広げられているというところだ。今回の「3年までの取得を可能とするようにとの要請」に合致する回答は14.3%プラス22.0%で、法定以上の措置を取っている企業のうち36.3%が実施していることになる(調査対象母集団企業全体比では23%)。
短時間勤務制度の法定を上回る措置導入企業は71.3%
これも先の「育児休業期間、求められている長さは1-2年が最多」で解説したが、育児休業が長期化することで、仕事の感が鈍ったり、職場の変化に対応できなくなったり、手取りが減る(サポートはあるとはいえ)ことを懸念する声も(特に育児世帯側から)ある。そこで休業では無く、通常よりも短い時間での勤務を認める「短時間勤務」の適用を望む声も少なくない。法的には「3歳に満たない子供を養育する労働者には、希望があれば利用できる短時間勤務制度を設けねばならない」とあるが、それを超える制度を導入している企業は71.3%に達していた。
↑ 短時間勤務制度について、法定を上回る措置を行っているか
具体的には3歳を超えても時短を申請できるとする企業がほとんどで、96.8%を占めている。調査対象母集団企業全体比でも69%と7割近い。
↑ 短時間勤務制度に関して法定を上回る措置の具体的内容(複数回答、措置実施企業限定)
その他にはフレキシブルな設定を可能とするものが39.9%と4割近く。「その他」11.7%には「勤務時間の繰り上げ・繰り下げ」や「2時間短縮までは本給の100%を支給」などがあったとのこと。いずれにせよ、時短が必要となる状況に応じて、配慮した措置が行われているようである。
今件調査結果で注意しなければならないのは、回答企業のほとんどがいわゆる大企業の類で(中小企業基本法第2条の定義では、資本金額が3億円以下、あるいは従業員数が300人以下(製造業等)の企業を中小企業と呼んでいる)、従業員全体数では2/3、企業数では99%以上を占める中小企業の意見があまり反映されていない点にある。企業への負担を考えれば、育児休業や短時間勤務制度は、中小企業の実態の方が知りたい情報ではあるのだが、今回の調査では大企業の状況がメインとなっているのが実情。
今後他の調査などで中小企業の導入実態を知れるような結果があれば、逐次紹介していくことにしよう。
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