育児休業期間、求められている長さは1-2年が最多

2013/08/06 08:45

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住友生命・三井生命グループのメディケア生命保険は2013年7月29日付で、「育児休業3年化」と待機児童問題に係わる意識調査の結果を発表した。その内容によれば未就学児(初等教育機関の就学する年齢に満たない子供)を持つ女性から成る調査対象母集団では、「育児休業3年化」に賛成する人は7割を超えていることが分かった。一方、実際に取得したいと思う育児休業の期間としては「1年から1年半」「1年半から2年」の回答率がもっとも多く、合わせて4割を超えていた。3年前後の回答率は2割程度に留まっている(【メディケア生命:発表リリース一覧ページ】)。



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再回答は1年半前後、ただし3年前後も一定数


今調査の調査対象母集団の詳細をはじめとした調査要項については、先行する記事【未就学児を持つ母親の8割は「働きたい」と考えている】を参照のこと。

現行政権の施策の一つとして「育児休業3年」が掲げられている(法令の改正では無く、企業の独自施策の促進)。この施策・方針そのものについて今調査対象母集団に尋ねたところ、賛成派は71.2%、反対派は28.8%という結果が出た。


↑ 「育児休業3年化」について

今件については賛否両論があるものの、少なくとも直接影響がある未就学児を持つ女性保護者の立ち位置からは、好意的に見られている。

一方、実際に育児休業を取得するとしたら、どの程度の期間を希望するのか。政策目標の「3年」を望むような回答者は比較的少数で、「1年半」を中心とした回答者が一番多いことが分かった。


↑ 実際に取得したいと思う育児休業の期間(単一回答)

この「1年半」を中心とした回答率の高さは、現行法(育児・介護休業法)で、子供が生まれてから最大1年半まで休業することが認められ、これを理由に事業者側は不利な扱いをしてはならないことがベースとなっている。つまり現行法の適用範囲内+αで十分とする意見が多数に及ぶというわけだ。

他方、施策目標とされている「3年」を中心とする回答区分にも一定の山が出来ており、合わせて22.1%が答えている。最多回答区分ではないが、「3年」にも一定以上の需要があることが分かる。見方を変えれば(リリースでも言及しているが)、「3年」までに幅を広げることで、育児をする側の需要により広範囲に応えられることができることになる。

「3年化」によるメリットとデメリット


この「育児休業3年化」だが、直接影響が生じる今調査対象母集団でも、さまざまな期待や懸念がある。次のグラフは今調査で該当する複数の項目を簡略化した上で一つにまとめたものだが、一つの事象の変化・政策の変更が、多方面に影響を及ぼすことを実感させられる結果となっている。


↑ 「育児休業3年化」で起きうる期待、懸念

これらの値はあくまでも今調査対象母集団における回答によるもので、実際に試算したり専門家による検証が行われたものでは無い。とはいえ「現場の声」であることから、それなりに信ぴょう性・確証性の高いものともいえる。

これによると主に人同士のつながりや女性の立ち位置向上が期待できる一方(「待機児童問題が改善する」という発想にはなるほど感が強い)、企業と女性の関係が悪化する懸念が強いものとなっている。大手企業の中には先行して育児休業期間を延長する、できる仕組みを導入しているところもあるが、中小企業にはその負担が大きすぎるという懸念がある。

また、現実問題として3年間休業した後に現場に復帰しても、3年前と同じようなモチベーション・効率を維持できるのかという問題も考慮しなければならない。これについては3年目を休業ではなく時短勤務とする対応もあるとのこと。

現状は法制レベルでは「原則1年」「状況に応じて半年延長可能」。今件の「育児休業3年化」もまた、「原則3年」ではなく「状況に応じて3年までの延長可能」であることから、実際には労使間での臨機応変な対応が行われることになる(さらにいえばこれは「法制度の改正」ではなく「企業の独自制度の拡充による実質的な選択肢の拡大」である)。選択肢が増えること自体は、大いに評価すべき話ではあるが、実際問題としてどの程度の年数が適用されるのか。気になるところだ。



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