単身51.6%、二人以上80.6%…乗用車の普及率現状(最新)

2024/10/11 02:30

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2024-1003公共交通機関の発達やライフスタイルの変化、お財布事情などを受け、都心部の若年層における乗用車離れが世間ではたびたび話題に上っているものの、多くの人にとって相変わらず乗用車が必要不可欠な移動ツールであることに変わりはない。そこで今回は内閣府が定期的に調査、結果内容を公開している調査結果【消費動向調査】を基に、乗用車の普及状況についてその現状を確認していくことにする。

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単身と二人以上世帯それぞれ、さらには世帯主の男女別、世帯乗用車普及率


「消費動向調査」そのもののに関する解説や「世帯」の区分、「普及率」の定義についてはまとめ記事【定期更新記事:主要耐久消費財・普及率(内閣府・消費動向調査)】で説明されている。必要な場合はそちらで確認をしてほしい。

まずは全般的な世帯普及率。単身世帯は51.6%、二人以上世帯は80.6%。単身世帯、つまり一人身世帯では2人に1人ぐらい、二人以上世帯では5世帯に4世帯ほどが乗用車持ちとの計算になる。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別)(2024年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別)(2024年)

必要度合い、さらには初期購入費用だけでなく、運用コストの負担(ガソリン代、駐車場代、そして車検代)を考えると、単身世帯の普及率が低いのは当然。特に女性の単身世帯は46.8%でしかない。

続いて「保有世帯単位」における平均保有台数。「保有の有無を問わず全世帯における」平均台数ではないので注意が必要。保有世帯における保有状況を把握するには、この値の方が理解しやすい。

↑ 乗用車保有世帯あたり平均保有台数(世帯種類別・世帯主男女別、台)(2024年)
↑ 乗用車保有世帯あたり平均保有台数(世帯種類別・世帯主男女別、台)(2024年)

単身世帯はほぼ1台。世帯を構成するのは回答者=世帯主だけなのだから、当然の話。趣味などで、あるいは仕事の都合上、複数台保有している単身者もいることから、実際には1台をわずかに上回る値が出ている。

一方二人以上世帯では大体1.6台前後。世帯主以外に配偶者、あるいは子供が別途保有している事例が多々あるものと考えられる。【「子供の送迎」「家族旅行」そして何よりも……ママドライバーの自動車利用方法とは?】でも解説しているが、妻が子供の送迎、そして買い物やパートなどへの通勤で使われるパターン。女性が世帯主の場合は、相方が自動車を必要としていない、あるいはそもそも相方がいない母子世帯の場合が少なからずあるため、やや少なめになっているのだろう。

年齢階層で大きく異なる乗用車保有率


続いて世帯主の年齢階層別保有率。男女別とクロスした大別年齢階層区分と、より細かい年齢階層区分のデータが確認できるので、それぞれを基に別途グラフを作成する。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別・年齢階層別)(2024年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別・年齢階層別)(2024年)

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主年齢階層別)(2024年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主年齢階層別)(2024年)

どの年齢階層でも単身世帯よりも二人以上世帯の方が普及率は高い。また、概して中年層(30-50代)の普及率が高めとなる。金銭的余裕や行動力の高さ、そして二人以上世帯では必要性の増加(子供の送迎、仕事への出勤)など、多様な要因がこの年齢階層での普及率を押し上げていると考えられる。

若年層、そして高齢層の動向では男性が単身世帯でもそれなりの普及率だが、女性が低い値に落ち着いている。「自分自身のための(単身世帯だから)移動手段」としての自動車への考え方の違いが表れているのだろうか。

乗用車は金食い虫…世帯年収別普及率


次に世帯年収別普及率。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300-400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯年収別)(2024年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯年収別)(2024年)

二人以上世帯では「550-750万円未満」までは世帯年収とともに増加し、それ以降はほぼ横ばい。8割台で実質的に飽和状態なのだろう。

気になるのは単身世帯。「300万円未満」で普及率が5割を切り、47.5%にまで下がる。必要性が薄く、さらに金銭的に維持できないのが理由と考えて間違いないが、厳しい現実でもある。とはいえ、必要のないものをコストを抱えながら保有するのは、無駄には違いないのだが。また高齢単身世帯の構成比率の高さが値を押し下げている可能性も多分にある。

地方の必要性、都市部の低さを再確認


最後に世帯主=該当世帯全体の居住地域別の普及率。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主居住地都市規模別)(2024年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主居住地都市規模別)(2024年)

グラフ中項目にある「別掲大都市」とは大規模な都市を意味する。具体的には「札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京23区、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市」。「県庁所在地市」や「県庁所在地市以外」では、「別掲大都市」に含まれる市は除かれている。

乗用車が敬遠されている、若年層は乗用車に乗らないとの話に対し、地方では乗用車が生活必需品の場所も多いのでそのような話は都市部のみだ、とする反論もよく見聞きする。このデータの限りでは、それがある程度裏付けられる結果が出ている。人口5万人未満の市町村では、人口5万人以上の市よりも乗用車普及率が高い。

立体駐車場また人口5万人以上の市に限ると、上記にリストアップした「別掲大都市」の低さが目にとまる。とりわけ単身世帯が低い。

もちろんこれは「大都市圏ほど公共交通網(バス、電車など)が整備されている」「乗用車を必要としない距離内に多様な施設がある」などの理由により、乗用車を保有する必然性が低くなるのが原因。またそれと同時にそのような大都市圏では、駐車場の確保には相当なコストがかかり、ランニングコストが底上げされてしまう。これもまた普及率の下落の一因ともいえる。



昨今では乗用車の小型化志向、軽自動車の人気ぶりが目にとまる。さらには小型の電気自動車にも注目が集まりつつある。カーシェアリングの仕組みもじわりと浸透し始めた。乗用車を必要としない、費用対効果で所有価値を見いだせない人が増えているのは否定できないが、欲しいもののさまざまな制約で手を出せない人が多いのもまた事実である。

少子化、地方の過疎化と都心部への生活機構の集中化、ライフスタイルそのものの変化など、乗用車所有意向に関与しうる要素は次々積み増しされ、予想がつきにくい状況なのは否定できない。数年の単位で大きな変化が生じることはないが、少しずつ、確実に社会の変化に対応する形で、各属性別の値が変わっていくことは間違いあるまい。


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