記事は減り広告も減る…新聞の広告掲載「量」と「率」動向(最新)
2024/11/13 02:45
当サイトでは複数のルートで従来型4マスのうち、テレビとともに信頼度が高いとの結果が複数調査で出ている「新聞」の動向を精査しているが、そのルートの一つに新聞社や通信社、放送局などで構成される日本新聞協会がある。その協会が毎年一回定期的に、業界全体の状況を示すものとして公開している調査・集計値を基に、今回は日本国内の新聞全体における記事量や広告量について、現状と過去からの動向を確認していくことにする。
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データ取得元は【調査データ>新聞広告>新聞広告費、新聞広告量の推移】。このページから「新聞広告量」と「新聞総段数」を取得。一応念のために過去の分も再確認し、間違いがないかを精査したが、修正箇所は見当たらなかった。
その上で、「総段数」から「総広告量」を差し引いて「記事総段数」を算出する。厳密には広告以外すべてが記事とは限らない。しかし分量としてはごくわずかで誤差の範囲に収まるレベルであり、「記事」とカウントしても問題はない。
なお「段」とは言葉通り、新聞の文字列を構成する横線の段組みを指す。左端から右端までの1ライン分で「1段」として構成単位をカウントする。また2017年分からは一部の値が非公開となったため、公開分の値を用いて概算していることから、実情とはわずかながらずれが生じている可能性がある。
↑ 新聞総広告量・新聞記事総段数(2017年以降は概算、万段)
かつて「総段数」は増加の一途をたどる一方で、「総広告量」は横ばい、あるいは漸減の方向にあった。明らかなトレンドの転換が見られたのは2007年以降。「記事総段数」も多少は減っているが、それ以上に大きく「総広告量」が減っているのが分かる。
2007年以降は景況感の悪化に伴う新聞発行数≒購入部数の減少に歯止めをかけるため、掲載文字サイズの大型化・段数の減少化、いわゆる「視力が気になる人でも見やすくするためのリニューアル」(≒多分に高齢層を意識したようだ)が各紙で行われている。新聞のサイズに変更は無いのだから、文字が大きくなれば当然掲載可能な文字数は減り、段数も減る。それが原因の一つと思われる。
もっとも「総広告量」の減少に関しては新聞のリニューアル関連による影響はごくわずかで、単純に「クライアント離れ」「広告出稿先としての魅力減退」が多分に影響しているものと考えられる。
最近の動向を確認すると、2011年を底値として新聞の「総広告量」は漸増、「記事総段数」はゆらぎを見せながらも漸増、そして「総段数」も増加の動きに転じていた。金融危機からリーマンショック、さらには震災や円高不況を経て、ゆるやかな景気回復基調が生じている中で、新聞にもプラスの影響が生じていたようだ。
ところが2014年を天井として、それ以降においては、「記事総段数」はほぼ同数を維持しているものの、「総広告量」は減少の動きにある。結果として「総段数」は減少の動きに。金額面ではまた別だが、直近の2023年では「記事総段数」は前年比でマイナス2.3%、「総広告量」はマイナス5.5%。ビジネスの面での不安を覚えさせる動きを示している。
総段数に占める総広告量の割合、つまり新聞における広告の入り具合・広告掲載率は直近2023年では前年から続く形で減少、その幅もマイナス0.7%ポイントに。
↑ 新聞広告掲載率(段計算)
総段数グラフでは大きな変化がないように見えていた広告掲載率。だが比率を算出して折れ線グラフ化すると、少しずつ、しかし確実に減少していることが分かる。
2000年前後の数字を確認すると、前回の不景気(俗に言うITバブル崩壊、インターネットバブル崩壊時)にも1年で1%ポイント強の下落率(例えば2001年から2002年にかけては1.5%ポイント下げている)が見られる。ここからは「不況のたびに広告掲載率は減少」「景気が回復しても広告は回復しない」とする新聞広告事情が把握できる。
2012年以降は復調の兆しもあったが、2014年以降は再び減少。過去の動きが示している通り、景気後退期から回復期に移行しても、広告掲載率は旧に復するのではなく、下がった水準で横ばいを維持する動きに転じていると見ると、道理は通る。陳腐な表現ではあるが、「広告の新聞離れ」が起きている。
今回の公開値を眺めると、新聞の広告掲載「量」と「率」だけでなく、概算ではあるが単位分量あたりの広告「料」も導き出すことができる。これについては後ほど別途記事で解説・分析するが、やや複雑な新聞広告の現状を推し量れる結果が出ている。
経済産業省が公開している日本全体としての広告費推移(直近では【4マスはラジオのみマイナス、ネットはプラス7.0%(経産省広告売上推移:2024年10月発表分)(最新)】や【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移(最新)】)を見ると、「新聞」項目はイレギュラーな状況下以外では低迷感は否めない。「雑誌」とともに紙媒体の低迷ぶりを認識できる。今回の各値もそれを裏付けるものとなる。
無論、「新聞」が紙媒体そのものではなく紙媒体の上に掲載される情報を指す場合、デジタル形式で配信される電子版に関しても考察する必要はある。コンテンツの価値、意義としての観点ならば、まさにその考えがより妥当性はある。しかし今件はあくまでも紙媒体のみでの話となるため、そのような検証は不可能。また、一部新聞社を除けば、電子版がビジネス様式として成り立つほどの盛況ぶりとは見受け難いのが現状。
メディアとしての「新聞」そのものが、多種多様な要素から構成されるメディア全体の中で、これまでとは違う立ち位置へ移動を求められている。その仕組みだけでなく、「新聞」を構成するコンテンツと、それを創る「中の人達」への精査、あるいは自己改革を求める声が、日に日に大きくなっているのも事実である。中長期的な広告の減退は、その移動の催促を意味しているのかもしれない。この声、世の中の動きに耳をふさがず目を閉じずに受け入れ、身を切る覚悟で改新(改善)を進めていかねば、社会的意義、自称する「文化を支える柱」としての足元もさらに揺らいでいくに違いない。
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