長引く下方トレンドというよりは…震災後のラジオ聴取動向(2020年2月度版)(最新)

2020/03/21 05:14

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2020-0320従来型4大メディア(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)の中で、この数年においてもっとも大きな状況変化にさらされているのがラジオ。インターネットや携帯電話の普及でメディア力(りょく)の減退著しく、広告費は減るばかりの中、先の震災をきっかけにその存在意義を認められ、新たな立ち位置を確保しつつあるとも言われている。今回はビデオリサーチが定期的にプレスリリースとして公開を実施しているラジオ聴取動向の最新発表値(【発表リリース:ビデオリサーチ2020年2月度首都圏ラジオ調査結果まとまる】)をはじめとした各種経年データを基に、震災前後のラジオ聴取動向について探りを入れていく。


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震災前後からの聴取率推移


今調査の調査様式などは先行記事【首都圏のラジオ平均聴取率4.9%、高齢者は平日で9.0%(2020年2月度版)(最新)】を参照のこと。

今件項目における「週平均の聴取率」とは「週全体(平日、土日を合わせた)における、1日単位での平均聴取率」を意味する。例えば「1週間全体において、1度でもラジオを聴いた人の割合」では無い(こちらは直近では54.0%)。

まずは全体的な聴取率の時系列推移。リリースなどから取得・利用可能なデータは2011年2月以降。そこでそれらの値を用いてグラフ化する。東日本大地震・震災の発生は2011年3月11日だが、その期間以降に聴取率が上昇しているのがはっきりと見て取れる。

↑ 首都圏ラジオ・全局個人聴取率(6-24時、週平均)
↑ 首都圏ラジオ・全局個人聴取率(6-24時、週平均)

以前【地震情報で見直される「ラジオ」、評価を受ける「ソーシャルメディア」、そして……】などで解説したように、震災をきっかけとしてラジオはその価値を見直され、再評価(もちろんプラス)を受けることになった。また本震以降はしばらく大きめな余震が相次いだこともあり、ラジオを新たに備え、機会あるたびにスイッチを入れる人も少なくない(各通販サイトでも軒並みポータブルラジオの類が品切れとなった)。すでにラジオを持っている人も、聴取頻度は高まる。その結果、聴取率は7%台を示す(2011年後半)。

しかし本震から時間が経過し、大きな余震の発生頻度も低下。それに連動する形で聴取率も減少しはじめる。季節変動を考慮しなければ、減少は2012年春先から。2012年半ばには底を打ち、それ以降は多少ながらも回復したが、2013年には震災前の水準に戻ってしまった。その後やや起伏感を覚える中で、6%強の状態で横ばいのまま続いているように見えたが、2014年に入ると下落基調を示し、そして半年ほどは横ばい。底打ち感の雰囲気から、2015年6月では大きな跳ねを見せ、回復基調へのトレンド転換を期待させる動きを見せたものの、8月から10月では失速による下落。6月の上昇はリバウンドとしての動きかと思われた。

2015年12月では、ここ1年半ばかりの低迷感を一気に吹き飛ばすかのような上昇ぶりを示した。前回比でプラス0.7%ポイントの6.5%。2014年半ばまでの6.6%前後の水準へ一気に戻しを見せた。その後も状態を維持する動きは継続しており、2014年後半から生じた軟調期は脱していた。しかし2016年の後半から下落基調を思わせる動きがあり、8月にやや戻したのもつかの間、10月以降は下落。

今回月となる2020年1月では前回月からは変わらずの4.9%。最低値を記録した2019年12月と同じ値となった。やはり2019年10月の5.2%はイレギュラーだったようだ。

一連の動きを年齢階層別に見たのが次のグラフ。

↑ 首都圏ラジオ・全局個人聴取率(6-24時、週平均、年齢階層別)
↑ 首都圏ラジオ・全局個人聴取率(6-24時、週平均、年齢階層別)

グラフ領域内の動きを見ると、高齢層における緩やかな減少が確認できる。震災後に半ば必要に迫られてラジオを整備・聴取を始めたシニア層が、余震頻度の低下とともに必要性への認識も薄れ、再びラジオ離れを起こしているものと考えられる。

全体値では大きな動きが生じた2015年12月においては、中年層以降、35歳以上の層における大規模な上昇が生じており、トレンド転換の原動力がこの年齢階層によるものであることが分かる。特に35-49歳層の増加は、その動きにより震災後のピーク値となる2012年2月につけた6.7%に接近するほど。

高齢層はほぼ底を打ったかのような動きにも見えるが、その後の上昇ぶりは芳しくない。他方、35-49歳層は下落の真っただ中にあり、今後4%割れを示す可能性すら否定できない。また、12-19歳と20-34歳は2016年あたりからゆるやかな下落を示しており、どこまで落ちるのか気になるところではある。

前年同月との差で見ると


この動きを分かりやすくするため、そして季節変動を無視できるように、年齢階層別に前年同月との差を計算したのが次のグラフ。2012年2月より前の値が無いのは、元々の絶対値データが2011年2月以降しか取得できなかったため。

↑ 首都圏ラジオ・全局個人聴取率(6-24時、週平均、前年同月差、%ポイント、時系列比較)
↑ 首都圏ラジオ・全局個人聴取率(6-24時、週平均、前年同月差、%ポイント、時系列比較)

おおよそ上昇トレンド期を青で、下降トレンド期を赤で囲ったが、一定期間ごとに両者が繰り返されていたのが分かる。他方、直近の上昇トレンド期は振れ幅が大きいものの短め、現在進行形の下降トレンド期は振れ幅がこれまでで最大で、かつ長期化しているのが特徴。

直近の下げトレンド期は2017年10月から12月がピークだったようで、それ以降の下げ幅はごくわずか。そろそろこの下げトレンド期も終わりではと思われたが、意外に長く継続している。2018年12月以降は50-60歳で大きなプラスが、そして2019年8月からは12-19歳でもかろうじてのレベルだがプラスが生じているが、多分にイレギュラーのようで目立つ形となっている。あるいは突出したプラスの年齢階層の縮小ぶりを見るに、下降トレンド期が打ち消されるだけの上昇の勢いそのものが無くなり、下降トレンド期が継続し、その中で下げ幅の縮小・拡大が起きている可能性は高い(直近でも全体の前年同月比はマイナス0.2%ポイント)。緩慢な下方トレンドの常時化という表現すべきか。

なお「単に1年単位で上げ下げを繰り返しているだけ。前年同月がマイナスならば反動のためにプラスを示すのは当然」と読めるかもしれないが、それならば増加トレンドと減少トレンドの期間は1年きっかりにならねばいけない。しかし実際にはずれが多分に生じている。さらに下げトレンドの時の下げ幅と上昇トレンドの時の上げ幅では、明らかに前者の方が大きいため、単なる反動では説明がつかない。

このうねりの中で、長期的には聴取率は減少のさなかにあると見るべきかもしれない。下降トレンド期が継続するのであれば、その見方は正しいということなのだろう。


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