「消費よりも貯蓄」…米消費性向の移り変わりを探る

2013/05/19 14:00

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消費アメリカの調査機関【ギャラップ社】は2013年5月9日、アメリカにおける消費・貯蓄性向に関する調査報告書を発表した。それによれば調査対象母集団では直近の調査結果で、60%の人が消費よりも貯蓄の方が好きと答えていることが分かった。消費をより好む人は37%に留まっている。属性別では低年収ほど貯蓄性向が強く表れている(【発表リリース:Americans Still Enjoy Saving Rather Than Spending】)。



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今調査は2013年4月4日-14日にかけてアメリカ国内に住む18歳以上の成人に対し、乱数で選ばれた電話番号に対する電話インタビュー形式(英語とスペイン語)で行われたもので、有効回答数は2017人。2012年3月時点の国勢調査などの統計データに基づいたウェイトバックが行われている。

カードローン周りの話をはじめ、我々日本人には乱費・浪費イメージの強いアメリカの人達だが、実際には消費と貯蓄、どちらをより好んでいるのだろうか。回答者自身の普段の考えの中で、消費と貯蓄のどちらが好きかと聞いたところ、直近の2013年4月では60%の人が貯蓄と答えた。消費は半分強の37%に留まり、イメージとは違う結果となった。

↑ お金について考えてみると、自分は消費するのが好きか、それとも貯蓄するのが好きか(択一、米、ギャラップ社調査)
↑ お金について考えてみると、自分は消費するのが好きか、それとも貯蓄するのが好きか(択一、米、ギャラップ社調査)

公開されている範囲でもっとも古い2001年4月時点では消費45%・貯蓄48%とほぼ同等。この傾向は2006年4月まで続く。ところが2007年秋に始まる金融危機、そして2008年秋のリーマンショックの2段階の経済事象を受け、それぞれのステップで消費回答者が減り、貯蓄回答者が増えていく。実態経済の弱体化を目の前にし、各人が金銭的な防衛心理を強めた結果といえる。

興味深いのはアメリカで景気が一部上向きの基調を示し始めた2012年以降でも、貯蓄性向が相変わらず高い水準を維持していること。詳しくは機会を改めての解説になるが、回答者における「国の経済状況」「自分自身の財務状態」への判定内容で多少の違いは生じるが、たとえ「景気は良くなっている」と考えている人でも貯蓄性向が高めなのには違いない。このような傾向について報告書では「喫煙者がなかなか煙草を止められないのと同じように、節約をしている人はなかなか節約を止められないものだ」とし、貯蓄が習慣化しつつあることを示唆している。

実入りが少ないとやはり貯蓄しがち


次のグラフは直近2013年4月における、主要属性別の消費・貯蓄性向の違いを示したものである。

↑ お金について考えてみると、自分は消費するのが好きか、それとも貯蓄するのが好きか(属性別)(択一、米、ギャラップ社調査)
↑ お金について考えてみると、自分は消費するのが好きか、それとも貯蓄するのが好きか(属性別)(択一、米、ギャラップ社調査)

男女別ではほとんど差は出ないが、年収別では明らかに違いが見られる。すなわち低年収ほど消費よりも貯蓄を好むというものだ。鑑みるに「好き」というよりは「せざるを得ない」の領域だろうが、ともあれ低年収と高年収との間には2倍近い「消費好き」の回答率の差が出ている。当然低年収の方が消費好きの値は低い。

世代別では64歳まではほぼ横ばいなものの、65歳になると明らかに消費性向が減る。自前で稼ぐ機会が減り、あとは貯蓄を取り崩していく状況の人も多い中、浪費は出来ないということか。

今調査はあくまでもアメリカでのものだが、日本で行うとどのような結果が出るのだろうか。貯蓄好き、しかも現金・預貯金好きで知られる日本がどのような値を示すのか。今回のアメリカの値と比較する意味でも、大変興味深い結果が出ると思うのだが。


■関連記事:
【日米の家計資産推移(2012年4Q分)】



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