効用を自らのボディーで表した自動販売機
2013/05/09 11:30
商品の効用、生活の中での存在感を的確に表現し、商品のプロモーションとして仕立て上げる切り口は少なくない。冷涼感をアピールするためにペンギンや白くまを登場させたり、力強さを表現するために筋肉質のスポーツ選手を抜てきするのが良い例だ。今回紹介する広告手法は、ある商品の効用をアピールするため、自動販売機の姿かたちを特殊な形状に仕立て上げた事例である。説明にいわく「このジャンルでは世界で一番の自動販売機」とのことだが……(I Believe in Advertising)。
スポンサードリンク
↑ Diet Coke Presents: The Slender Vender。
これはフランスで展開された、ダイエット・コークのプロモーション。ダイエット・コークはすでに(通常のコカ・コーラと比べて)カロリーなどへの心配は要らず、名前の通り(比較論として)ダイエット向けのコーラとして世界的に知られている。しかしさらに知名度・認知度を挙げるためには、通常の宣伝方法では物足りない。何か奇抜な、目新しい、予想もつかないような方法はないのだろうか……との考えから生み出されたのが、今回の手法。「アピールする、売りたい商品が『ダイエット』なのだから、販売する自動販売機もダイエットさせて、スレンダーなボディーにしてしまおう」というもの。
動画の説明にいわく「世界でもっとも薄い自動販売機」として生み出されたこの自動販売機「スレンダーベンダー(The Slender Vender)」、ダイエット・コークのペットボトルが1本取り出せるのがやっとというほどの細さ。他の自動販売機の「すきま」にもすっぽりと収まるほどで、はた目で見ると他の自動販売機の商品取り出し口と勘違いしてしまう位。
↑ 他の自販機にはさまる形で配された「スレンダーベンダー」
街中にも配されたスレンダーベンダーは、その異様な形状から、当然皆の注目を集める。自動販売機のようではあるが、それにしてはあまりにも細すぎる。これは一体なんだろう……とばかりに遠巻きに眺める人達で、周囲は人だかりとなる。
↑ 自動販売機っぽいけど、なんか変だ。看板のように設置されたスレンダーベンダーに違和感を覚え、次々と人々は足を留める
そして一人が手に入れると「なんだこれ、普通の自動販売機なのね」とばかりに、皆が手にしていく(元記事では「自動販売機」とあるが、動画の状況やコインの投入口が無いスレンダーベンダーの形状を見る限り、「販売」では無くボタンを押すことで無料提供される「試供品提供機」としての自動販売機のようだ)。
↑ 「ダイエットなコークの自販機なのか」とそのセンスにニヤリとしながら手にする人たち
スレンダー・ベンダーはその薄さをアピールできる、さまざまな場所に設置され、人々の注目を集める。通常のプロモーションでキャンペーンガールなりが手渡しで配るより、何倍もインパクトがあり、「ボディーを、ライフスタイルをスレンダーにしていく」という期待効用を深く印象付けさせる。
↑ その薄さを強調するように、ボーリング場や自転車専用道路のど真ん中に配されるスレンダーベンダー。もちろん人々の注目を大いに集めることになる
「名は体を表す」ではなく「体は効用を表す」的なこの自販機によるプロモーションは、その奇抜さから注目を集め、多くの人達が目撃証言や使った感想を写真付きでソーシャルメディアに掲載。それがネット上の口コミとなり、スレンダーベンダーとダイエット・コークを今まで以上に認知させていく。
↑ ソーシャルメディア上に紹介されていくスレンダーベンダー
ダイエット系商品のパッケージ自身をスリムにする切り口は結構ありがちな手法だが、販売機をスリム化し、そのものを広告塔のように仕立て上げるのはコロンブスの卵的な発想。純粋に人々の目を留め、注目させ、しかも商品効用をアピールするという点で、まさに「この発想は無かった」「一本取られた」的なアイディア。文句なく、惜しみない賛美を贈りたい。
スポンサードリンク