大学・短大進学率は58.7%(「教育指標の国際比較」2013年反映版)

2013/05/07 20:45

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入試センター試験文部科学省は2013年3月、毎年発表している「教育指標の国際比較」の最新版となる「教育指標の国際比較(平成25(2013)年版」を発表した。それによると日本における大学・短大・通信制・放送大学までを合わせた大学進学率は58.7%であることが分かった。一方在学率は60.5%と6割台に留まっている(【発表リリース】)。



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今資料「教育指標の国際比較」は日本の教育を考察する上で、その状況を諸外国との比較において確認することを目的として作られた資料。国内の各官公庁の資料やOECDのデータを用いて毎年定期的に編さんされている。今回スポットライトを当てたのは、日本国内資料による部分。

各年における高等教育への「進学者数」を、やはり同資料内に収録されている「該当年齢人口」で割った、いわゆる「進学率」の推移を示したのが次の図。なお算出の際に用いた進学者数には、該当年齢である18歳以外の進学者(いわゆる浪人生の合格・進学者)も含まれている一方、母数は18歳人口のみであるため、厳密な進学率よりはやや高めの値が出てしまっている。

元データでは2009年以降のものが記述されているが、当方の過去記事を元に2005年分以降からに編集し直している。

↑ 高等教育への進学率(-2012年)
↑ 高等教育への進学率(-2012年)

グラフを見ると、大学・短大などへの進学者が増加し、高等教育への進学率を押し上げているのが分かる。一方、2005年以降2010年までやや起伏を見せながらも上昇を続けていた進学率だが、今回の2012年分を含めこの2年間は減少傾向に転じている。もっとも資料を見る限り、2010年以降は進学率だけでなく、進学者数・当該年齢人口も減少している。よって純粋に「進学率の低下」と見るよりは、人口減少過程で起きた「ぶれ」と考えた方が正しそうだ。

他方、進学率ではなく「在学率」(「在学者数」を「該当年齢人口」で割ったもの。在学者数には該当年齢以外の在学者も含まれるため、厳密にはもう少し値は下がる)をグラフ化したのが次の図。

↑ 高等教育の在学率(-2012年)
↑ 高等教育の在学率(-2012年)

進学率のグラフがやや横ばい、あるいは上昇カーブがゆるやか(2011年以降はさらに下降)だったのに対し、こちらはほぼ等ペースでの右肩上がりの様子を見せていた。また、数字そのものは「大学・短大などの進学者」「大学・短大などの進学者+放送大学進学者」で数ポイント、「-+専修学校進学者」で10ポイント近く進学率より低い。さらに2011年以降は「大学・短大・通信制・放送大学進学者」では在学率の方が高くなる逆転現象を起こしている。

これは「進学時と卒業までの時間差」「途中退学者の存在」「すべての高等教育が同じ年数で卒業するわけではない(留年など)」などの事情による。また2012年に限れば進学率同様、これまでの上昇傾向の歩みが鈍くなり、前年比上昇率が1%ポイントを切ってしまっているのが気になるところ。

高等教育の進学・在学率は【25歳未満の非正規雇用率は72%に急増中、ただし……】【10代-20代前半の失業率は9%台…若年層の労働・就職状況(2011年版 子供・若者白書)】でも解説したように、その年齢層における雇用関連の数字とも密接に関わってくる。高等教育課程で勉学に勤しんでいる人は正規社員になれるはずはなく(ごく稀に「学生起業」の人もいるが、その場合も「社員」では無い)、職を持つにしてもアルバイトやパートでの非正規雇用という雇用形態に限定されてしまう。単純に「10代・20代の非正規雇用率が高い」との結果が出ても、それがそのまま「若年層は卒業しても正社員として雇用されない」とは言い切れない。この実情に注意する必要がある。

ともあれ、2012年においてはほぼ5人に4人が高等教育課程へ進学し、在学者は10人に7人に至っている。少子化・人口の漸減の中で進学率・在学率がどのように変容していくのか、注意深く見守っていきたい。特に今回分計測データでは、該当人口の減少を起因とする可能性もあるが、進学率の減退・在学率の横ばい化への流れが見えてきており、今まで以上に留意を払う必要がある。


※「-+専修学校進学者」の「在学率」が元資料では2009年65.3%と、3年前に公開された資料と比べて大幅に引き下げられています(以前資料から継続中)。資料掲載の「高等教育への進学者数」「該当年齢人口」元に再計算したところ、この部分のみ計算結果から数ポイントのマイナスが行われているのが確認できました。2010年分以降、及び他の項目で同様の処理が成されているものは(今回グラフ化した部分では)無く、注意書きも見つからないため、今回も前回同様、当方で再計算した値をグラフに適用しています。

※追記:
「教育指標の国際比較」は2013年分をもって更新発表を停止しております。よってこの記事の更新も2012年分で終了となります。最新の大学進学率に関しては学校基本調査の結果を基にした【大学進学率】でご確認下さい。



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