かつてデパートの売れ筋商品、今は…スーパー・デパートの衣料品の移り変わり(最新)
2024/11/18 02:47


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データの取得元は先行記事と同じく【経済産業省の商業動態統計調査】の【統計表一覧】。また「百貨店」と「デパート」の違いも先の記事にある通りで、実質的には同じ中味。呼称母体が異なるだけの話。
その先行記事で解説した通り、百貨店とスーパーの主要品目別売上を見ると、1990年代前半をピークに、衣料品の売上は減少。直近2023年では金額にしてピーク時の約4割にまで減少、店舗売上全体に占めるシェアは26%ポイント以上減っている。

↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額構成比(再録)
ちなみに主要品目の区分構成は【利用上の注意】に記載されているが、今回精査を行う衣料品においては次の通りとなる。
●婦人・子供服・洋品…婦人服、子供服、下着類、ブラウス、靴下など
●その他の衣料品…呉服、反物、寝装具類、和装小物、タオルなど
●身の回り品…靴、履物、和・洋傘類、かばん、トランク、ハンドバッグ、裁縫用品、装身具(宝石、貴金属製を除く)など
それでは早速「衣料品」項目における、各種細部項目の構成比をグラフ化し、その動向を確認していく。元々「婦人・子供服・洋品」の比率が高かったものの、近年においては1980年比で数%ポイントの増加が見られる。それとともに「身の回り品」の比率もじわじわと、そして確実に上昇を見せている。ここ10年ばかりは「身の回り品」の比率の伸びが著しく、「婦人・子供服・洋品」ですら圧迫され減少する状態にある。

↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額構成比(衣料品項目内)
紳士服・洋品(男性向けの衣料品)の割合が継続して減っていたのは、紳士服チェーン店などの進出が大きな要因と考えられる。2005年以降は「比率の上では」やや戻しを見せていたが、全体額が減っている以上、男性向けの売上が伸びているわけではない。むしろ他の項目の減少度合いがより大きく、相対的なシェアが伸びているに過ぎない。
注視すべき動きとして挙げられるのが、「身の回り品」。シェアだけでなく金額面でも増加傾向にあった。該当する商品は他店舗ではまとまった形での実商品の確認や購入が難しく、あるいは専門店が身近にあるとは限らない。そしてインターネット通販では実物を精査できないが、直に手に取ってその内容を確認したいものが多く、必然的にデパートが選択されているものと考えられる。さらには景況感の回復も一因だろう。ただしここ数年ではシェアこそ増加しているものの、金額は減少の傾向に転じてしまっていた。2020年における大幅な減少は、新型コロナウイルス流行による来店客数の減少によるところが大きい。その後、その2020年を底として、急激に戻しを見せ、コロナ禍直前を超える数字を出している。

↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額(衣料品項目内、兆円)

↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額(衣料品項目内、兆円)(直近10年間)

そしてまた、先の「デパート全体としての売上構成の変化」と同様、1990年代前半が一つのターニングポイントだったことが、このグラフからつかみ取れる。衣料品部門における売上総計はもちろんだが、「紳士服・洋服」の項目で特にその流れが強く出ている。上記にあるように紳士服チェーン店の展開など競合の登場・躍進はもちろん、そしていわゆる「バブル崩壊」が大きな構造変化の引き金となったことは容易に想像できる。無論金額面では「リーマンショック」が、さらなる構造変化における第二の引き金となった感は否めない。
衣料品における売買動向の流れとしては、男性関係用品全般、そしてその他衣料品関連が先行して大きな客の減少があり、現在は女性や子供関係、「身の回り品」が続いているとまとめることができよう。
一方で2020年における新型コロナウイルス流行によって生じた大幅な減少は、リーマンショック時のそれと同レベル、むしろそれ以上のものであり、各品目の減少傾向を加速化したことになるのだろう。2021年以降は回復の動きにあるが、まだ2019年の水準にまでは戻していない。それどころか「その他の衣料品」に限れば、回復の気配すらない。ただし「身の回り品」に限れば、直近2023年において2019年の水準どころか2009年ぐらいにまで戻しており、コロナ禍での減少を奇貨として大きく飛躍しているように見える。
少々古い話になるが、【若者は専門ビル・中堅層はネット通販…秋冬ファッションアイテム、どこで買う?】の調査結果からも分かるように、比較的減少比率の低かった装飾品関連でも、デパートなどは購入先として後回しにされる傾向がある。そしてリーマンショック、さらには震災を経て、人々の消費性向は大きな変化を遂げている。百貨店やスーパーの衣料品部門が断続的な、そして厳しい環境変化を認識した上で、どのような手を打って状況に対応していかねばならないか。考える時間は少なく、正しい答えは簡単に見出せそうにない。それでもなお、早急な模索が求められよう。
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