年齢階層別・自動車乗車中の交通事故死者数推移(最新)
2024/03/20 02:39
高齢化社会の到来とともに、高齢者の自動車運転で無謀な、あるいは常識では考えられない行為・判断による結果がもたらした死亡事故の話を見聞きする機会が増えている。高齢者比率の増加が続く人口構成比の変化を考慮すれば死亡事故でも高齢者の「数」が増えるのは避けようがないのだが、実態として高齢者の死者数は交通事故全体のうちどれほどの割合を示しているのか。今回は2024年3月7日付で警察庁が公式サイト上で公開した、2023年中の交通事故の状況をまとめた報告書「令和5年における交通事故の発生状況などについて」の掲載データを基に、年齢階層別の自動車乗車中における交通事故死者数の動向を精査していくことにする(【警察庁リリース発表ページ】)。
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最初に確認するのは、自動車乗車中の年齢階層別、死者数推移の積み上げグラフ。公開されている元データから年齢階層区分を区分し直し、未成年(19歳以下)、成年(20歳から64歳)、高齢層(65歳以上)の3区分に再構築を行ったものも併記する。今件はあくまでも自動車乗車中の事故により死亡した人の数を示したもので、該当者が運転手であるとは限らない。一方、日本の法令上普通車の免許取得は18歳以上、普通二輪は16歳以上でないと不可能なため、15歳以下は原則的に「自ら運転している」状況はありえないことに注意。
↑ 自動車乗車中の交通事故死者数(人)
↑ 自動車乗車中の交通事故死者数(年齢階層別、人)(2022年)
↑ 自動車乗車中の交通事故死者数(積み上げグラフ、主要年齢階層別、人)
自動車乗車中の死者数はおおよそ漸減の動き。ただし2011年以降は減少の動きが穏やかになり、下げ幅も限定的。さらに2016年では前年比でプラスを示すまでとなった。統計上のぶれも一因だが、高齢層の該当者数が増加しているのが大きな要因。直近4年では減少度合いが随分と大人しいものになっているのも注目に値する。新型コロナウイルス流行の影響で2020年に大きく減少したものの、それ以降は減少傾向に歯止めがかかってしまったのだろうか。
年齢階層別の人数では、未成年者や成年が減少傾向にある中で、高齢層は漸減から横ばい、さらには増加の動きすら見せる。これは高齢層の人口そのものの増加による上乗せと、安全対策の強化や医療技術の発達による減少作用が均衡していた、そして前者の影響力が強まり数を底上げしたものと考えられる。
他方2020年では前年比では全年齢層で大きく減少しており、全体としても大きく減少の動きを示す形となった。これは新型コロナウイルスの流行で外出機会が減り、自動車の乗用そのものが減ったことによるものと考えられる。
続いてこれを主要年齢階層別に区分し、全体数に占める比率を算出したのが次のグラフ。高齢層の比率が漸増し、他の層が少しずつ減っているようすが見て取れる。
↑ 自動車乗車中の交通事故死者数(主要年齢階層別、全体比)
人数の上では高齢層も2008年までは減少、2008年以降は横ばいに推移、その後は増加の動きを見せる年もある(2020年には新型コロナウイルス流行の影響と思われる大きな減少も生じたが)。他方それより下の層は(人口そのものの漸減も一因だが)おおよそ数を減らしており、結果として全体に占める高齢層の比率は少しずつ上乗せされる形となる。今や「交通事故死者の半数以上は高齢層」である。
高齢者数そのものの増加や、自動車保有率の変化(ライフスタイルや可処分所得の多い少ない、居住地域の利便性の問題から、若年層は自動車の利用が減り、高齢者が増える)を鑑みると、高齢者の自動車乗車中による死者「数」は現時点のようなもみ合い状態が継続、そして増加トレンドに転じる可能性は多分にある。要は該当層人口の増加率が、取り締まりや技術進化による減少率を上回ってしまうリスクがある。【高齢者運転の「もみじマーク」、今日から「四つ葉マーク」が仲間入り】の話でも触れているが、片意地を張らずに現状を認識した上で運転する・しないの判断をしてほしいものである。無論それに併せて地域社会における居住環境の整備問題、特にインフラ関連については、さらなる検証と対策が求められる。
余談ではあるが、自動車だけでなくバイクなども含めた「原付以上の運転者」における死亡事件数を、「各年齢階層の免許保有者数」を考慮して指標化すると次の通りとなる。直近年と取得可能なもっとも古い値となる2005年の分を併記した。これなら「年齢階層によって人口数に対する免許取得者比率が異なる」状況を考慮しなくても済む。
↑ 原付以上運転者(第1当事者)の免許保有者10万人あたり交通死亡事故件数(年齢階層別)(2005年と2023年)
すべての年齢階層で18年の経過により件数は大幅に減っており、少なくとも交通死亡事故の減少は年齢を問わずに生じているのが分かる。比率では高齢層の方が大きな減り方を見せているが、これは元々の値が大きかったため。絶対数では今なお高齢層の方が高い交通死亡事故リスクが存在していることに違いはない(16歳未満も交通死亡事故件数そのものはカウントされているが、免許取得者は存在しないので、今件グラフでは値は無い)。
免許取得者あたりの交通死亡事故件数では未成年者同様、さらにはそれ以上を示している高齢者の該当事案は、今後絶対数でもさらに増加することが予想される。今後は今まで以上の対応が求められよう。
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