漸増する高齢者比率…年齢層別の交通事故死者数(最新)
2024/03/19 02:27


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全体では漸減する事故死者数、増える高齢層比率
まずは積み上げ式と個々の年齢階層の動きを折れ線グラフにした、年齢階層別事故死者数の推移。これは「事故発生から24時間以内に死亡した人」に限定している。また、直近年に関しては実数値のグラフも作成した。
なお今グラフも含め、今記事で作成したグラフについては、過去の値も後日発表された修正値を確認した上で反映している。また、積み上げグラフでは原典の区分のままで作成しているが、折れ線グラフでは煩雑すぎる形となるため、いくつかの年齢階層を集約した形で作成している。

↑ 交通事故死者数(積み上げグラフ、年齢階層別、人)

↑ 交通事故死者数(年齢階層別、人)(2023年)

↑ 交通事故死者数(年齢階層別、人)
全体数が減少の傾向を見せているのはすでに【戦後の交通事故・負傷者・死者数(最新)】などでお伝えした通り。一方、紫系統色の階層にあたる高齢者(65歳以上)の部分が他の年齢階層と比べると縮み方が緩やか(=人数があまり減っていない)なように見える。
詳しくは後述、そして別記事で解説していくが、高齢者人口そのものが増加しているのに加え、高齢者の対人口比交通事故死者数が高い値を示しているのが、この高齢者の減少率が緩やか、さらには増加している原因。
そこで今度はこれらの動向について、各年の交通事故死者数全体に占める割合でグラフにしたのが次の図。一つが棒グラフで、各年に占める割合が分かりやすいように、もう一つは折れ線グラフで、年齢層毎の割合の変化を見易くしたもの。後者のグラフでは全階層を掲載すると見難くなるため、対象年齢階層を限定して表記している。

↑ 交通事故死者数(各年合計に占める年齢階層別比率)

↑ 交通事故死者数(各年合計に対する年齢階層別比率、年齢階層別、一部)
ここ数年の傾向として、死者「数」は(最初のグラフにある通り)各年齢層で減少しているが(直近年は前年比で増加してしまったが)、高齢層では減り方がおだやか、時として増加の動きすら見せるため、全体に対する比率では逆に増えてしまっている。特に85歳以上では増加の一途をたどっている。
2023年における全交通事故死者のうち65歳以上の比率は54.7%。これまでの公開データの中では最高値だった2021年における57.7%にはおよばないものの、高い値に違いない。

↑ 交通事故死者数(各年合計に対する65歳以上の比率)
一方で、直近2年では前年比で減少しており、注意すべき動きとなっている。
65歳以上の交通事故死者数を精査する
それでは65歳以上の交通事故死者数の状況は、どのような傾向を見せているのか。それが分かれば、これからさらに深刻な問題となるであろう高齢者の交通事故死者数や対全体数比率を、減少傾向に至らせるヒントがつかめるかもしれない。そこで該当者の交通事故死亡状態別の人数推移を調べた結果が次の折れ線グラフ。例えば自転車運転中なら、当事者(高齢者)が自転車を運転している際に事故に遭遇し、亡くなった事例である。

↑ 高齢者(65歳以上)の状態別交通事故死者数(人)
世間一般におけるイメージとしては交通事故なら、当事者が自動車、あるいは自転車運転中の状態が最上位のように思える。しかし実際には歩行中による事故を起因とするものがもっとも多い。次いで自動車乗車中、そして自転車乗車中が上位についている。
グラフ作成は略するものの、高齢者に限って交通事故死者数が多い、そして全体における交通事故死者数の比率増加の要因の一つとされる歩行中の死亡事故や自転車乗車中の死亡事故に関して高齢者(65歳以上)の法令違反別区分(該当年齢階層人口10万人あたり)を見ると、
ハンドル操作(安全運転義務)…0.08人
交差点安全進行…0.08人
安全不確認(安全運転義務)…0.07人
信号無視…0.04人
一時不停止…0.04人
(他に違反無し…0.12人)
●歩行中死者
走行車両の直前後(横断違反)…0.29人
横断歩道以外(横断違反)…0.24人
信号無視…0.13人
酩酊など…0.12人
(他に違反無し…0.79人)
が上位を占めている。高齢者以外の割合とも傾向は大きく異なり(例えば高齢者以外の歩行中による法令違反別区分の最上位は酩酊(酔っ払い状態)などによるものである)、「自分自身の身体能力への過信、思い違い」が死亡事故の引き金の主要因であることが分かる。

しかし「飛び出すな 車は急に止まれない」の標語の通り、横断中の人間を視界にとらえたドライバーが瞬時にブレーキを踏み込んでも、自動車はすぐに停止できない。例えば時速60キロで走る自動車がブレーキを踏んだとしても、止まるまでには20メートルもの距離を必要とする(さらにそこに、対象物を視界におさめてからブレーキを踏むまでの判断時間による走行距離(空走距離)が加わる)。結果として上記グラフに「カウント」されるような事態に陥った場合、本人はもちろん家族も、そして半ば巻き添えとなった自動車運転手にも大きな不幸、負担が襲い掛かることになる。
高齢化により高齢者の人口が増加するにつれ、事故対象者の絶対数、そして全体に占める割合でも高齢者が増えてしまうのは、統計学上仕方が無い(例:同じ1%でも100人ならば1人でしか無いが、1万人の場合は100人となる)。高齢者の死者「数」の減少が緩やかな、そして一部階層では増加する動きが生じている理由は、高齢者人口の増加と高齢者の交通事故死者率の高さにある。
次に示すのは「それぞれの」年齢階層における交通事故死者率。たとえば80-84歳は5.22と出ているので(全人口ではなく)80-84歳以上の10万人のうち、2023年では5.22人が交通事故で亡くなったことを意味する。

↑ 人口10万人あたりの交通事故死者数(年齢階層別、人)(2023年)
しかし一方で「絶対数」の増加を「統計学上、仕方がない」で諦めてよいのか、との考え方もある。
高齢者の場合、「カウントされるような事故」の発生起因は上記のようにある程度特定されている。今後はこれらの対策への「これまで以上の」注力も必要となる。まずは徹底した啓蒙活動と、その成果が望める工夫、そして周囲の注意が求められよう。
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