アメリカの雑誌販売動向・予想(SNM2013版)

2013/05/06 20:00

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雑誌アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2013年3月18日、デジタル・非デジタル双方における、同国の「ニュースを伝えるメディア」の動向と展望を示した報告書【State of the News Media 2013】を発表した。現状の解説だけでなく将来の展望をPew Research社の調査結果、そして公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた「米デジタルニュース白書」のようなもので、アメリカにおけるニュース業界を推し量るのに有益なデータが数多く盛り込まれている。そこで先日の【米主要メディアにおける視聴者数の動きなど(SNM2013版)】から複数の記事において、注目すべき要項に関して抽出やグラフの再構築などを行い、現状の大まかな把握、さらには今後の記事展開の資料構築も兼ねるようにしている。今回は「雑誌の売上動向とデジタル版の影響度」を見ていくことにする。



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Pew Research Centerでは過去何度となく直接、あるいは他の調査の過程でアメリカ成人におけるスマートフォンやタブレット機の普及率を計測している。例えば【米スマートフォン・タブレット機所有者の利用スタイルの違い】では2012年6月-8月時点の値としてスマートフォン所有者は41.5%、タブレット保有者は21.2%との記述がある。「State of the News Media 2013」では2012年12月末調査の値として、タブレット機保有率31%、スマートフォン45%と提示している。

これだけモバイル端末が普及している昨今では、当然電子書籍・電子雑誌の類も大いに売り上げを伸ばすことになる。そしてそれは同時に、既存の紙媒体雑誌の売上を落とす主要因にもなる。次のグラフは雑誌業界における本体そのものの売上と広告費、そしてデジタル系の売上合計(デジタル雑誌そのものの販売結果に加え、広告の売上、さらには雑誌アプリの売上も含む。媒体はデジタル全般で、モバイルに限らない)だが、雑誌が本誌売上・広告共に低迷し、デジタルが確実に売り上げを伸ばしているのが分かる。

↑ 雑誌の売上推移(億ドル)(米、2013年以降は推定)
↑ 雑誌の売上推移(億ドル)(米、2013年以降は推定)

雑誌広告の売上が2009年に大きく落ちているが、これはいわゆるリーマンショックによるもの。元々2007年の金融危機以来、デジタルの浸透も合わせ雑誌広告は「紙媒体としての」雑誌そのもののメディア力の減退から広告売上を落としていたが、リーマンショックはそれを加速させたことになる。

デジタル部門の売り上げは年々増加し、推測範囲だが2013年以降はその勢いを加速化する。紙媒体そのものの売上及び広告売上の減退分をほぼ補完する形となり、「紙媒体」と「デジタル」を足した総合売上は今グラフ範囲内では2013年を底値とし、それ以降はごくわずかずつだが上昇の動きすら予想されている。

ただし今グラフ該当期間のもっとも未来分である2016年でも、デジタルは雑誌業界を支える主幹部門には成りえない。

↑ 雑誌の収益推移(シェア)(米、2016年は推定)
↑ 雑誌の収益推移(シェア)(米、2016年は推定)

デジタルは売上増加が加速する2016年でも、全売上の14.5%でしかない。依然として8割以上は紙媒体そのものの販売と広告費が支えることになる。



雑誌によってデジタル化の比率は異なり、デジタルと紙媒体との位置づけや編集方針、方向性も違うため、すべての雑誌が同じような動きを示すとは限らない。また、紙媒体と相性の良い商品部門は多く、さらに昨今では紙とデジタルを巧みに組み合わせた広告も増えており、紙媒体そのものや広告が無くなるとは思えない。しかしながら上記のグラフを形成する予想値は、やや紙媒体の広告売上において、判断が甘い感はある。

予想通りデジタル部門の売上増加分が、紙部門の売上減を補完しきれれば、雑誌業界の衰退は防げる計算になる(少なくとも売り上げ面では)。遅ればせながら、欧米の後を追う形でデジタル化が進む日本の雑誌業界の行く末を占う意味でも、今後の動向に注視したい。



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