シニア層ですら減少中…米新聞購読率推移(SNM2013版)
2013/05/04 10:00
アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2013年3月18日、デジタルと非デジタル双方における、同国の「ニュースを伝えるメディア」の動向と展望を示した報告書【State of the News Media 2013】を発表した。現状解説と将来の展望をPew Research社の調査結果、そして公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた「米デジタルニュース白書」の類のもので、アメリカにおけるニュース業界を推し量るのに有益なデータが数多く盛り込まれている。そこで先日の【米主要メディアにおける視聴者数の動きなど(SNM2013版)】からいくつかの記事において、注目すべき要項に関して抽出やグラフの再構築などを行い、現状の大まかな把握、さらには今後の記事展開の資料構築も兼ねるようにしている。今回は「日刊紙の属性別購読性向推移」を見ていくことにする。
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以前【進む米若者の新聞離れ…米新聞読者の世代構成比推移(2011年分まで対応版)】でも記した通り、若年層を中心に進むデジタル化により、さらにはインターネットそのものの普及に従い、新聞の購読者数は若年層を中心に減少を続けている。結果、購読者全体に占める高齢層率が増加している。
↑ 新聞購読者全体に占める世代構成比(2008年-)(週一以上購読者、紙・電子・無料ウェブ版を問わず)(再録)
今件項目では「昨日日刊紙を読んだか否か」を尋ねており、日常的に日刊紙を読んでいる人の割合を推し量る値が呈されている。直近の2012年では65歳以上が58%なのに対し18-24歳では23%でしかない。若者の新聞離れは世界共通のようだ。
↑ 昨日新聞(日刊紙)を読んだ人の割合(世代別)(2012年)
しかし経年変化を見ると、新聞離れは何も若年層に限った話ではないことが分かる。
↑ 昨日新聞(日刊紙)を読んだ人の割合(世代別)
前世紀末は若年層でも4割を超えていたが、2012年には約半分にまで低下している。しかしこの数年は横ばい、一部ではむしろ上昇している動きすら見えてくる(もっともこれは底値からのリバウンド的なもの、そしてデジタル版の有料登録会員による底上げによるものと考えられる)。
同一年では歳上になるほど新聞購読率が高くなる傾向は、いつの時代でも変わらない。しかし相対的な順位に変化はないものの、すべての世代で新聞離れが起きている。さらには中堅層の新聞離れ率が次第に加速化し、シニア層との間に差が開いている。
世帯年収別に購読率を見ると、「高年収ほど読まれている」「現在に近づくにつれて読まれなくなる」という傾向が見られる。
↑ 昨日新聞(日刊紙)を読んだ人の割合(世帯年収別)
世代別の若年層のように、低所得層では底値に近付いたようで、2011年以降は減少を止め、あるいはほとんど変化がない。一方で高所得層はまだ下げる余地が十分にあり、2011年以降も減少を続けている。広告主の立場から考えれば、高所得層の読書の減少は広告掲載のメディアとしての魅力減退につながる場合が多く、新聞社サイドには単なる購読率の減少以上に切実な問題となる。
ソーシャルメディアやポータルサイトに転送される記事、個人や任意グループによって配信される記事などを読むことで、新聞社によるニュースを読まなくても不都合を覚えない人が増えている。新聞を支えているシニア層ですら「新聞離れ」が進んでいる状況を鑑みるに、今後新聞社はデジタル化をさらに推し進める中で、ビジネスモデルそのものの再構築を考えなければならないのかもしれない。
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