アメリカの新聞販売部数動向(SNM2013版)
2013/05/21 15:45
アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2013年3月18日に、デジタルと非デジタル双方における、アメリカでのニュースを伝えるメディアの動向と展望を示した報告書【State of the News Media 2013】を発表した。現状の解説と将来の展望をPew Research社の調査結果、そして公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた「米デジタルニュース白書」の類のもので、アメリカにおけるニュース業界を推し量るのに有益なデータが数多く盛り込まれている。そこで先日の【米主要メディアにおける視聴者数の動きなど(SNM2013版)】からいくつかの記事に渡り、注目すべき要項に関して抽出やグラフの再構築などを行い、現状の大まかな把握、さらには今後の記事展開の資料構築も兼ねるようにしている。今回は「日刊紙と日曜版それぞれにおける、新聞の発行部数動向」を見ていくことにする。
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アメリカの新聞発行部数の動向に関しては、以前【アメリカにおける日曜版の新聞の発行部数など(2011年分まで対応版)】でも記した通り、同国の新聞協会「Newspaper Association of America(NAA)」掲載によるデータを基に毎年確認をしている。ところが同協会のサイトのリニューアルやデータの開示姿勢に変更があり、2013年4月の時点でも2012年分の実売値が公開されていない(それどころか最終更新日はいまだに2012年9月のまま)。
今件は「State of the News Media 2013」で掲載されてる、半年単位での前年同期比による部数推移であり、具体的な部数は記されていない。また一次データの公開方針に変更があり、2010年以降は年ベースでの前年比となっている。
↑ 日刊紙・日曜版の部数推移(半年前比、2010年以降は前年比)
日刊紙、日曜版共に2009年後半を底値とし、以降は状況が回復する傾向にある……とはいえ、マイナス圏にある限り部数が減少していることに違いは無く、状況を表す言い回しとしては「悪化スピードが遅くなりつつある」の方が正しい。直近の2012年9月ではようやく日曜版が前年比でプラスとなり、これでようやく真の意味での「部数が持ち直してきた」と評することができる。
ただし「アメリカにおける日曜版の新聞の発行部数など(2011年分まで対応版)」でも解説している通り、新聞発行部数の持ち直しの裏には、デジタル版の浸透が大きく関与している。今件データには紙媒体版だけでなく、デジタル版(有料登録会員版のみで、不特定多数がアクセスできるウェブ版の読者は該当しない)もカウントされるため、この登録者数増加が寄与していると報告書でも記している。
同報告書ではこのデジタル版浸透において、興味深い傾向があることを記している。
↑ 新聞の発行部数別・平均発行部数変移とそのうちデジタル媒体比率(日曜版)(2012年9月を中心とする6か月・前半期比、米)
発行部数が少ない新聞は部数をさらに減らし、多い新聞は逆に部数をかさ上げしている。しかしそれらの新聞は同時にデジタル媒体比率が高く、部数アップが多分にデジタル会員によるものであることを示唆する内容となっている。アメリカの日曜版の新聞は多分にクーポン取得のツールとして認識されていること、そして現在のデジタルツールの普及状況を頭に思い浮かべれば、容易に納得できる結果といえる。
紙媒体が完全にデジタル・インターネットに挿し代わることはない。紙媒体には紙なりの、紙にしかない長所がある。しかしこのままの状況が進めば、将来的に新聞を意味する「NewsPaper」は、「NewsText」なり「NewsDigital」なりの造語にとって代わられる日が来る、のかもしれない。
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