米新聞社の本業売上推移(SNM2015版)

2015/05/04 09:57

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アメリカの民間調査機関【Pew Research Center】は2015年4月29日、デジタル・非デジタル双方におけるアメリカでのニュースメディアの動向と展望に関するレポート【State of the News Media 2015】を発表した。現状と将来展望をPew Research社の調査結果と公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた「米デジタルニュース白書」のようなもので、役立つデータが数多く盛り込まれている。そこで今回はアメリカの新聞社における本業(新聞そのものの売上や広告売上)の推移をグラフ化し、その状況を確認していくことにする。



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今件レポートでアメリカの新聞社における「広告費」と「新聞そのものの売上」の動向は、以前別記事で伝えた通り。新聞そのものの売上は漸減しているがさほど大きな下げ幅では無く、むしろ広告費の減少が大きなカーブを描いている。

↑ 新聞売上推移(米、億ドル)(2003年以降の広告費にはオンラインも含む)(-2013年)
↑ 新聞売上推移(米、億ドル)(2003年以降の広告費にはオンラインも含む)(-2013年)


2003年以降はオンラインによる広告費も別途計上されているが、これは一次ソースが同じため、【オンラインのみプラスだが成長鈍化続く…米新聞社広告費動向(2014年)(最新)】で記したグラフと同じものとなる。

↑ 米新聞の広告収入推移(単位:100万ドル)(-2013年)(再録)
↑ 米新聞の広告収入推移(単位:100万ドル)(-2013年)(再録)

これらの値を合わせることで、冒頭で解説した通り「新聞そのものの本紙売上」「紙上広告費(リテール、ナショナル、クラシファイド)」「オンライン」それぞれの新聞社本業における売上が算出できる。それを積上げ型のグラフにしたのが次の図。各項目の新聞社売上における重要度が分かりやすいよう、各年売上総計に対する比率も算出した。

↑ 米新聞社本業売上推移(億ドル)(-2013年)
↑ 米新聞社本業売上推移(億ドル)(-2013年)

↑ 米新聞社本業売上推移(シェア)(-2013年)
↑ 米新聞社本業売上推移(シェア)(-2013年)

今世紀に入るまではほぼ右肩上がりだった売上総額も、21世紀初頭の不景気でやや落ち込みを見せるが、すぐに回復。しかしその上昇ぶりも2005-2006年がピークで、インターネットやモバイルの普及が加速し、金融不況が到来した2007年以降は急速に減速していく。単なる不景気によるものだけでは無く、世の中の仕組みが大きく変わる「メディア構造変化」を伴っていたこともあり、売上の落ち込み方は劇的。オンラインの上昇分も額面ではごく少数のため、全体に与える影響はわずかでしかないのが確認できる。

皮肉なことに、「部数」≒「新聞そのものの売上」の減少ぶりがゆっくりとしたペースのため、売上全体に占める本紙売上の比率が急上昇してしまっている。2007年の18%から、2013年は34%。金額が伴わないシェア増加であるだけに、嬉しさも中ぐらい。

2013年時点では概算すると、米新聞社の売上は「新聞本紙の売上1/3」「インターネット広告1割」「新聞内広告5割強」となる。収益構造は随分と変化しているが、それが売り上げの増加を伴うものでない以上、業界全体で頭の痛い話には違いない。

なお今件データは「State of the News Media 2015」からのもの。他の値の多くは直近2014年分のものが開示されているが、新聞社の売上などは現時点で2013年分までしかない。説明によると一次ソース側の事情で、2014年分の反映は今年6月以降になるとのこと。大きな差異が生じるとは思えないが、更新が確認され次第、今件記事のグラフなども差し換えることにしよう。


■関連記事:
【アメリカの新聞広告の売上推移(年ベース・2012年分まで)】
【年収、世代を超えて漸減する米新聞購読者(SNM2014版)】

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