米主要メディアにおける視聴者数の動きなど(SNM2013版)
2013/04/17 08:45
アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2013年3月18日、デジタル・非デジタル双方におけるアメリカでのニュースメディアの動向と展望に関するレポート【State of the News Media 2013(SNM2013)】を発表した。現状の把握と将来動向の推測をPew Research社の調査結果と公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた、いわば「米デジタルニュース白書」のようなレポートで、貴重なデータが数多く盛り込まれている。そこで【米主要メディアにおける視聴者数の動きなど】のように、昨年記事展開を行ったSNM2012版から更新できるものがあれば更新し、新たにチェックしておくべき項目を逐次まとめていくことにする。今回は主なニュース配信媒体の「勢い」を概要的に知ることができるデータのうち、「視聴者数率」「広告売上」の変移を見て行くことにする。
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まずは2012年における、前年比での主要ニュース媒体の視聴者数の伸び率。幸いにも前年記事と同じ要件のため、前年分の値も併記する。
↑ 媒体別ニュース部門での視聴者数変移率(米、2011-2012年、前年比)
単純な「視聴者」では多種多様な質、企業にとってプラスの度合いの違いを考慮しない計上値となるため、一概に数の大小がすべてを物語るわけではない。無料視聴者100人よりも有料会員1人の方が企業・メディアにとってプラスになる、と判断されるニュース媒体もある。
2012年は金融危機の口火が開いた2007年以降、そしてリーマンショック後の大きな下落の動きからはいくぶん復調を見せ、前年比では多くの項目がプラスを示した2011年から転じて、マイナス値を示す媒体が多い。プラスは「オンライン」「ケーブルテレビ」のみで、後はすべてマイナス。特に今年は非ケーブル系テレビの視聴率低下が著しい。後述する広告売上ではプラスを示しているが、大統領選挙があった年にも関わらず、視聴者数が減っている点は、留意する価値のある動きといえる。
「オンライン」は7.2%プラスと、前回から比べれば上げ幅を縮小したものの、増加が続いていることには違いない。「ケーブルテレビ」は0.8%のプラスだが、レポートでは「大統領選挙の有った年にしては、上昇幅が大人しすぎる」「CNNは不調。プライムタイムの平均視聴者数を4%失った」「MSNBCは夜半視聴者数を6%増やした」などとあり、「ケーブルテレビ」ですら、一様に堅調なわけではないことがうかがえる。
続いて「広告売上」。経費云々を差し引いた「利益」とはまた別物だが、経済活動の主体たる企業としては、「視聴者」以上に大切なもの。昨年は単なる「売上」の前年比で、今回公開された「広告売上」の前年比とは異なるため比較はできない。そこで今回分のみの単独グラフとなる。
↑ 媒体別ニュース部門での広告売上変移率(米、2012年、前年比)
「オンライン」や「ケーブルテレビ」が堅調なのは視聴者数変移率と同じだが、地方局や全国局がプラスを維持するなどやや動きが異なるのは、収益構造の違いによるところが大きい。「新聞」「雑誌」共にマイナス圏なのは相変わらずだが、「ラジオ」そして「テレビ(地方・全国双方)」がプラスなのは注目に値する。無論テレビでも局によって勢いはまちまちで、例えばABCは売り上げを4%落としているが、CBSのエンタメ部門は3%の成長、NBCは4.5%の成長をしており、すべてのテレビ局がハッピーなわけではない(ABCですら早朝番組は堅調で、今後に期待がかかるとしている)。また「地方局テレビ」は多分に大統領選挙に救われたとも説明されており、選挙がメディア、特に旧来メディアにとっては「稼ぎ時」となる事実を再確認させられる。
一方「雑誌」や「新聞」の軟調さは相変わらずだが、これもまた個体差が大きい。例えば雑誌の「The Week」は24.5%も下落したとのこと。また「Newsweek」は2006年以来はじめて前年比プラスを示している。「The Atlantic」では2012年ははじめてデジタル広告の収入が紙媒体の収入を超えたとし、デジタルへの期待が寄せられていることにも触れられている。
「新聞」の状況も「雑誌」と同じようなもので、デジタル広告への期待がふくらむばかりだが、2012年は「紙媒体の広告費が16ドル失われる毎に、デジタル媒体の広告費が1ドル得られる」とし、収益構造の根本的な改善にはまだほど遠い現状が語られている(2011年は10ドル損失につき1ドル獲得だったので、状況は悪化中)。
以上はあくまでもアメリカにおけるニュース周りのメディア動向。日本でもそう大きな違いは無い。相違といえば(比較論だが)新聞で日本の方がやや財務的な健全さを保っているくらいだろうか。しかし遅かれ早かれ日本のメディアもまた、似たような道を歩んでいくに違いない。
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