年金生活をしているお年寄り世帯のお金のやりくり(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2024/09/26 02:37

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2024-0920定年退職を果たし、これまでの蓄財と年金で生活をしている高齢者層の家計事情は、案外知る機会が少ない。節約の対象や趣味への消費、仕送り額など個々の項目の動向は分かっても、家計全体としてどのようなやりとりが行われているのか、多くの人にとっては秘密のベールの向こう側の話。就業による収益が収入のメインとなる現役就労世帯とは大きな違いがあることが予想されるだけに、興味は尽きるところを知らない。そこで今回は、総務省統計局が2024年2月7日にデータ更新(2023年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】を頼りに、高齢者世帯でありがちな構成世帯「単身無職」「夫婦のみの無職世帯」の2パターンにスポットライトをあてて、家計の収支に関する実情を探っていくことにした。

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年金+貯蓄の取り崩し


生涯現役の人(自営業や企業役員、農業従事者など)、あるいは一度定年を迎えて再就職を果たす人もいるが、多くの人は60歳から65歳で定年を迎え、その後はそれまでの貯蓄を取り崩したり、年金(今件項目では「社会保障給付」に相当)で日々の生活のやりくりをすることになる。「家計調査」では実例として、調査年における平均的な「60歳以上の単身無職世帯(元々独身、あるいは相方に先立たれたか離別して一人暮らしをしている60歳以上の無職の人)」「夫婦高齢者無職世帯(65歳以上の夫婦のみで双方とも無職。子供などは同居していない)」それぞれのパターンにおける家計収支が描かれていた。公開値などを基にそれを算出したのが次のグラフ。

↑ 高齢者世帯の家計・収入面(円)(2023年)
↑ 高齢者世帯の家計・収入面(円)(2023年)

例えば単身世帯の場合は年金が11万4111円。それに加えて毎月9006円の「その他(の収入)」(「無職」が前提なので、預貯金の利息や証券の配当など。ただし【「年金」「給料」「私的年金」…60代前半シニア層の三大主要収入】の通り、仕送りや資産収入を収入としている人は少数)。あわせて12万3117円が実質的な収入。しかし非消費支出(税金・社会保険料など)と消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)は合わせて15万7799円のため、足りない3万4682円をねん出する必要がある。基本的にはグラフの説明の通り、これまで貯めてきた貯蓄からの取り崩しで充当される。年間で41万6184円。

同様に夫婦高齢者無職世帯の場合は、年金が21万7675円、「その他」が2万6905円。貯蓄の取り崩しが3万7916円で合わせて28万2496円が、月あたりの収入合計額となる。

60歳以上の単身無職世帯の支出状況


収入面で注意すべき点は、どちらのパターンの世帯でも、収入全体に対して毎月数割の貯蓄取り崩しをしていること。支出面のグラフ化は、例えば60歳以上の単身無職世帯の場合は次のようになる。非消費支出(税金や社会保険料)がこれとは別に発生していることに注意されたい。

↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(比率)
↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(比率)

これを見ても分かるように、新たに貯蓄はしていないので(使うお金が足りないから貯金をおろしている状態で、同じ月に同じ口座へ貯金をするのは非論理的)、一方的に貯蓄額が減ることになる。

比率動向を見ると、数年では大きな変化は無いが、食料はここ数年の価格上昇や食生活の変化に伴いおおよそ増加を示している。中食関連の記事で解説している通り、単に生活が厳しくなったので食費比率が上がっていると解釈するよりは、食生活の充足のための支出が増えていると考えれば道理は通る。また時間の短縮や手間のショートカットのために、対価でそれらの手段となる惣菜を手に入れるとの考え方もできる。

貯蓄率(≒黒字率)は大きな問題ではないので、その項目に関する詳細の精査は省略する。一応計算しておくと、2023年では60歳以上の単身無職世帯はマイナス31.3%、夫婦高齢者無職世帯はマイナス17.8%となっている。

↑ 高齢者世帯の家計貯蓄率(2023年)
↑ 高齢者世帯の家計貯蓄率(2023年)

黒字は発生せず貯蓄を取り崩しているのだから当然マイナスが生じるのだが、可処分所得からの貯蓄取り崩しで生活がまかなわれている実態を改めて知ることができよう。



やや余談ではあるが、60歳以上の単身無職世帯と夫婦高齢者無職世帯の消費支出の違いを確認しておく。

↑ 60歳以上の無職世帯における消費支出の内訳(比率、世帯種類別)(2023年)
↑ 60歳以上の無職世帯における消費支出の内訳(比率、世帯種類別)(2023年)

絶対金額ではなく、消費支出の区分比率の比較であり、そのまま並べるのはやや無理があるかもしれない。しかしながら生活様式の差異を推し量るには十分な精度である。

各項目を眺めると、「二人分が必要な項目(食料、保健医療など)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が上」「二人である程度共用できる項目(住居、光熱・水道など)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が下」との結果が出ている。そのまま約2倍(一人か、二人かの違い)の比率ではないのは、総額が違うからに他ならない。

これらの違いから、少なくとも金銭面では、夫婦世帯の方が余裕のある生活ができているように見える。特に住居費の違いは大きい。高齢者関係の論説を読み説く際、そしてライフプランの構築の時に、この事実を覚えておいて損はあるまい。


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