世帯年収別・カップ麺やインスタントラーメン、ハンバーガーへの支出金額の違い(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2024/09/22 02:25

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2024-0916日常の食生活でごく普通に食卓に並ぶインスタント系(簡単に調理ができてお安めな食事群)、あるいはファストフード系(ファミレスなど比較的安価な外食)の食品は、同時に金銭的に厳しい時に多く食べられるイメージが強い。例えば誰もが一度や二度ならず「金銭的に厳しいのでカップ麺ばかりだ」「これから給料日まで毎日ハンバーガーとお付き合い」との表現を見聞きしたことがあるはず。それでは実際に、収入とそれら食品との購入性向との間には、何らかの関係が見受けられるのだろうか。今回は総務省統計局が2024年2月6日にデータ更新(2023年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】を基に、その関係について検証をしていくことにする。

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今回対象とする食品項目は、冒頭にもある通りインスタント系の代表食品ともいえるカップ麺、即席麺、そして最近何かと話題の外食としてハンバーガー、さらにはハンバーガー以外の他の外食を意味する「他の主食的外食」、加えて食事そのものの動向を把握するため食費(家計調査の項目名は食料)。これらの項目が具体的にどのような食品を示しているかは、【家計調査 収支項目分類(令和2年1月改定)】で次のように解説されている。

・カップ麺……カップ状のものに麺や具材が入り、お湯を注ぐだけで飲食できるもの。主食的に食べるもの。カップラーメン以外にカップそば、カップうどんも該当する。

・即席麺……製造過程において調理味付けされ、保存可能の状態に加工されたもの(メンマ、あげ玉、わかめ程度を付加したものも含む。カップ麺は除く)。即席うどんや即席そば、即席ラーメン、インスタント焼きそばなどが該当。焼きビーフンなどは該当せず。レトルト食品、冷凍食品も該当しない。

・ハンバーガー……セットも含むが、ファストフード店提供のものに限る。

・他の主食的外食……そば、うどん、ラーメン、パスタ、寿司、和食・中華・洋食各種、ハンバーガー「以外」の外食。例えばドーナツセット、お好み焼き、ピザパイ、お子様ランチ、会社での食事代など。ファミリーレストランにおける食事も該当する。学校給食や喫茶代、飲酒代は含まない。

また2023年版の家計調査では世帯年収について「239万円未満」「239-361万円未満」「361-512万円未満」「512-753万円未満」「753万円以上」の5段階区分が行われている。この区分額は毎年変化しているが、これは「五分位データ」と呼ばれている。「所得の低い世帯から順に回答した世帯を並べ、その上で全世帯を数的に5等分にした結果」による区分となっている。なお家計調査における収入(実収入)は税込収入であり、世帯単位の場合は世帯員全員の現金収入を合計したものとなる。

さてこの年収区分毎に、まずは食費と消費支出から「エンゲル係数」を求めておく。エンゲル係数とは世帯の豊かさを示す一つの指標。具体的には、

↑ エンゲル係数の算出方法

で算出される。元々エンゲル係数はドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲル(Ernst Engel)が提唱したもので、「家計の消費支出に占める飲食費割合が高いほど生活水準は低い」との論理から構築されたもの。よほどの富裕層(そしてそれらはごく少数)でない限り、食費の額においては他の出費ほど大きな違いは出ず、一方で食費そのものはどの家庭でも必ず発生する。よって、全体の支出に占める食料費の比率は、消費支出そのものが大きくなるほど低くなる・食費以外の項目に割り当てられる額が大きくなるとする考え方。

現在では商品価格の水準や生活様式(特に食生活のスタイル)が同じもの同士でないと比較にならない、農村部の住民は自前で主食や野菜を自給できる(割合が高い)ので必然的にエンゲル係数が低くなる、さらには食事同様必然的に発生しうる住居費も合わせて考えるべきだとの意見もあり(ただしこの場合家持ちと賃貸住宅居住者の取り扱いが面倒になる)、昔ほど重要視はされなくなった。特に時系列的な比較では、生活様式や価値観の変化に影響を受けやすいため、指標としてはぶれが大きなものとなってしまう。それでも「同一時期・環境下に限定すれば」「それなりの」参考値としてはいまだに有益に違いない。

なお今記事をはじめとする家計調査にかかわる記事では、食との連動性や比較の上で整合性を取るため、計算には品目分類の値を用いている。詳しくは先行記事【中食系食品などの購入動向推移(家計調査報告(家計収支編))(最新)】の後半部分を参照のこと。

↑ エンゲル係数(総世帯、品目分類で計算、世帯年収階層別)(2023年)
↑ エンゲル係数(総世帯、品目分類で計算、世帯年収階層別)(2023年)

エンゲル係数の視点では、最高年収区分は最低年収区分と比較して、4.8%ポイントほど豊かとの計算になる。あくまでも参考値でしかないが、おおよそ世帯年収の増加とともにエンゲル係数が減少しているのを見ると、まったくの無意味と切って捨てるものでも無いようだ。

さて、本題の「簡単に調理ができてお安めな食事群」と「ファミレスなど比較的安価な外食」の利用額に関して、世帯年収区分別の支出金額をまとめたのが次のグラフ。世帯年収区分別の違いを知るのが本旨であることから、各項目で「最低年収区分世帯の支出金額を1.00」とした場合の相対値を算出、グラフに盛り込んだ。

↑ 該当項目食費の支出金額(総世帯、最低年収階層の値を1.00とした場合、世帯年収階層別)(2023年)
↑ 該当項目食費の支出金額(総世帯、最低年収階層の値を1.00とした場合、世帯年収階層別)(2023年)

世帯年収の増加とともにエンゲル係数が漸減しても、食費の出費額そのものは増加している。エンゲル係数の動きはあくまでも世帯年収の増加とともに「食費の消費支出に対する比率」が減っているに過ぎない。そしてベースとなる食費の増加と比べると、カップ麺や即席麺はほぼ同率。最高世帯年収区分では、食費そのものが2.36倍なのに対し、カップ麺は1.84倍、即席麺は1.95倍にとどまっている。

これら食品群、特に即席麺は元々単価が低く、さらに高級品との価格差もそれほど大きくはないため、食費全体の増加分と比べて上昇幅が抑えられている。また「世帯年収の増加とともに世帯購入頻度が減っている」可能性も十分に考えられる(が、世帯年収別の項目別世帯購入頻度は公開されていないため、確認はできない)。

他の主食的外食は食費以上の伸び率を示している。しかも、おおよそ世帯年収が高額になるほど伸び率も大きくなる。外食機会が増える、利用時のメニューが高額なものとなる、入る店のランクが上がるなど、色々と理由は容易に考えられる。実情を想像すれば多分に、利用頻度の増加が主要因と見てよいだろう(最上位世帯年収では最下位世帯年収の4倍を超える金額の支出が行われている)。

興味深いのはハンバーガー。一見すると低所得層の味方といったイメージが強い。しかし食費の比率をはるかに超えて増加している。特に高世帯年収層の伸びが著しい。シンプルなセットのみか、あるいはセットにプラスαのメニューを追加するか。もちろん利用頻度そのものの違いもあろう。いくらワンコインのメニューが用意されていたとしても、それしか注文しない客は多くはない。



余談になるが各世帯年収区分毎に、カップ麺、即席麺、ハンバーガーの食費に対する支出金額の比率を算出すると次のグラフの通りとなる。他の主食的外食は該当する外食の内容が雑多すぎるので省略する。

↑ 該当項目食費の世帯年収に対する比率(総世帯、世帯年収階層別)(2023年)
↑ 該当項目食費の世帯年収に対する比率(総世帯、世帯年収階層別)(2023年)

一概に「低世帯年収層ほどカップ麺や即席麺、ハンバーガーへの支出金額が多いわけではない」のは本文で示した通りだが、食費全体に占める比率でも同様のことがいえる。ハンバーガーは「735万円以上」層の比率が一番高く、低い層と比べて0.47%ポイントもの差が出ているが、即席麺では「239万円未満」「512-735万円未満」層が一番ではあるもののほぼ横並び。カップ麺は「239万円未満」がやや高め、「753万円以上」がやや低めな以外は大きな差異はない。これらはあくまでもファストフードでありロープライスフードではないことを再認識させられる次第ではある。


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