オンラインのみプラスだが成長鈍化続く…米新聞社広告費動向(2014年)(最新)
2014/05/07 15:30

当サイトではアメリカの新聞協会「Newspaper Association of America(NAA)」の公式発表データを基に同国新聞業界における広告費動向の精査を逐次行っているが、2012年第4四半期分を最後に同協会では公式サイト上におけるデータ公開を不定期化し、記事の更新がままならない状態が続いていた。そこで【新聞はそれでも一番…米ニュースメディアの売上規模を比較してみる(SNM2014版)】などいくつかの記事で取り上げた、アメリカの調査機関Pew Resarch Centerが今年の3月に発表した【State of the News Media 2014】を再確認したところ、NAAをソースとするアメリカの新聞広告費に関する年次データにおいて、最新値となる2013年分までのものが確認できた。2012年分以前のものに関して過去データと突き合わせ、各値において整合性が取れたことから、今回はこの値を基に、各種値を最新値である2013年分にまで更新し、アメリカの新聞における広告動向の精査を行うことにする。
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データの取得場所や広告の種類に関する説明はまとめ記事【定期更新記事:米新聞社広告費動向(Q単位)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。とはいえ2013年分は冒頭にある通り、「State of the News Media 2014」から取得している。
次に示すのはアメリカの新聞の広告収入における前年比推移。オンライン広告の前年比が算出可能となった2004年以降に限定した折れ線グラフと、直近となる2013年の前年比の一覧のグラフを生成する。

↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率)(-2013年)

↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率)(2013年)
「リーマンショック」を受けて大きく落ち込んだ2009年と、その後のリバウンド(反動)が見られた日本の経済指標と同じように、アメリカの新聞業界の広告収入でも、滝のように下落した2009年と比べ、2010年はリバウンドが確認できる。ただし「オンライン広告」がプラスに転じた以外は「前年と比べて減少幅が縮小した」でしかなく、金額面では落ち込んでいる(前年比でマイナス)ことに注意しなければならない。さらに2011年以降はそのリバウンド効果も無くなり、「オンライン広告」は成長率を鈍化させ、紙媒体はほぼ横ばい、つまり減少度合いに変化はない。また「ナショナル広告」は再び減少幅を拡大しつつある。
直近の2013年に限ると、ナショナル広告はやや下げ幅を縮小したものの、リテール広告・クラシファイド広告は下げ幅を拡大し、総計として紙媒体の広告費は下げ幅をやや広げ、マイナス8.6%に至っている。オンライン広告は額面上は成長を続けているものの、増加幅は縮小を継続しており、紙媒体の広告費の下げ基調を補てんするまでには至らず、紙とオンラインの合計における前年比はマイナス7.1%。前年2012年のマイナス6.8%から0.3%ポイントも下落する結果となった。
額面上は唯一成長を続け前年比プラスを維持している「オンライン広告」にわずかな期待をかけたいところだが、日本の広告業界と同じように、伸び率こそプラスではあるものの額面そのものはまだ小さい。そのため、他の広告区分の不調分を補うことはかなわない。その現状を確認できるのが、次の「具体的額面」から生成した広告収入推移。

↑ 米新聞の広告収入推移(単位:億ドル)(-2013年)
「アメリカにおけるメディア関連の変化は、日本と比べて何倍も速く、しかも加速度的な動きを示している」状況は良く見聞きする話だが、それを実感できるグラフではある。2007年、インターネット(によるニュース展開)が本格的に浸透しはじめた時期から新聞広告費は激減。手元のデータにおけるピーク時の2005年と比較して2013年ではわずか4割強でしかない。とりわけ緑の部分、「クラシファイド広告」の減少ぶりが半端でない(2005年比で1/4足らず)のも分かる。
NAAのデータページでは1950年前後からの経年データが掲載されている。そこで2013年分のデータを「State of the News Media 2014」掲載分から補完し、前年比と額面積み上げのグラフについて、長期的な領域に拡大して再構築する。

↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率)(長期データ)(-2013年)

↑ 米新聞の広告収入推移(単位:億ドル)(長期データ)(-2013年)
まず前年比増減率の折れ線グラフに関して。1980年代までは一時的にマイナス圏に落ち込む場合があっても、せいぜいマイナス5%程度で留まっていた。ところが1990年代の不況時を皮切りに、10%近くまで下落するようになる。そしてそして2000年前後のITバブル崩壊前後では、初めて「絶対防衛圏」的なラインだった前年比マイナス10%を超える下げを記録する(この時、クラシファイド広告がマイナス15.2%)。見方を変えれば1980年代までは概して新聞の広告費は増加傾向にあったという表現もできる。
2001年の大幅下落の後、やや持ち直しを見せるものの、再び経済不況が到来。さらにメディアの環境変化という新たな重圧要素が加わり、マイナス幅は底抜け状態となる。いかに2007年以降の金融危機、とりわけ2008年に発生したリーマン・ショックの影響が大きかったか、そしてメディアを取り巻く環境変化が新聞広告に大きな打撃を与え続けているかが理解できる。なにしろ経済全体としてはリーマンショックの影響をどうにか乗り越えたと思われる直近の2013年にいたっても、「オンライン広告」以外は前年比でマイナス10%内外をうろうろしているのだから。

色々な意味でアメリカは日本を先行している。そのように表現できる値の数々だと評せよう。
なお新聞における売上は広告費以外に新聞そのものの販売(Circulation。電子版の売上もここに含まれると思われる)やその他項目の売上(New/Other)があり、また広告費に限っても今件の紙媒体上の広告とオンライン広告以外にダイレクトマーケティング(Direct Marketing)やニッチ・非日刊広告(Niche/Non-Daily)が存在する。概況はNAAのレポート【Newspaper Media Revenue 2013: Dollars Grow in Several Categories】に記されているものの、アーカイブデータは冒頭で説明した通り2012年分で更新が止まったままで、詳細を知ることは出来ない。データの更新がなされれば、四半期毎の動向などについても最新値を基に検証を行うことにしよう。
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