世帯単位での外食などの利用性向推移(家計調査報告(家計収支編))(最新)
2024/09/20 02:38


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全体的に大きく伸びる外食
次以降のグラフは家計調査報告(家計収支編)の総世帯から各種データを抽出の上、必要なものについては独自に算出した値を用いている。今回は世帯種類毎の消費性向の違いはさほど問題ではなく、市場全体の消費の動きを確認することが目的なため、単身世帯・二人以上世帯それぞれの値は考察しない。またグラフ中や文中に登場する購入世帯率・世帯購入頻度などの言葉の意味は、先行記事【雑誌や書籍の支出金額(家計調査報告(家計収支編)・総世帯版)(最新)】などですでに解説済みなので、そちらを参照のこと。
取り上げる項目は一般外食、さらにはその中に含まれるハンバーガー、他の主食的外食。その中身は【収支項目分類およびその内容例示(令和2年1月改定)】で次のように解説されている(今定義が最新)。

まずは世帯購入頻度と支出金額。直近値の2023年分について、主要項目の世帯購入頻度と支出金額、さらには一人あたりの金額をグラフ化したのが次の図。なおハンバーガーや他の主食的外食は一般外食の内部区分(厳密には一般外食の一区分に食事代があり、その食事代の一区分としてハンバーガーや他の主食的外食がある)でしかないことに注意する必要がある。

↑ 外食全般と主要品の支出金額・世帯購入頻度(総世帯、月あたり、種類別、円)(2023年)

↑ 外食全般と主要品の一人あたり支出金額(総世帯、月あたり、種類別、円)(2023年)
一般外食の利用頻度は月あたり8.108回。実質的には宅配ピザのような中食も含まれるので、この程度は普通だろうか。ドーナツ、お好み焼き、ファミレスなどでの食事は月に1.905回。金額で一人あたり月に1845円は、1回あたり969円ほどとなるため、ファミレスのランチメニューとコーヒーで大体金額が合う形になる。一方、ハンバーガーは2か月に1回足らずと少なめ。これは総世帯には利用者が少ない高齢者世帯層も含まれるため。
頻度について前年分の2022年の値と比較すると、すべての種類で増加している。

↑ 外食全般の世帯購入頻度(総世帯、前年比、種類別)(2023年)
2022年は新型コロナウイルスの流行による外食の落ち込みからの反発が確認できたものの、その勢いはまだ弱かった。2023年は流行こそ継続しているものの、2022年と比べれば持ち直しを見せていることになる。各種規制が解除され、人の動きが戻った時期もあったからだろう。
飲酒代の大幅な増加が目立つ形となっているが、新型コロナウイルスの流行時にもっとも大きな影響を受けたのは飲酒関連の店舗。その規制が解除・緩和され、客足が戻ってきているからと思われる。
経年推移で動向を探る
この世帯購入頻度や支出金額の経年推移を、総務省統計局の公開データベースe-statでデータが取得可能な2002年以降のものにつき、時系列で再整理してグラフ化したのが次の図。

↑ 外食全般と主要品の世帯購入頻度(総世帯、月あたり、種類別)

↑ 外食全般と主要品の支出金額(総世帯、月あたり、種類別、円)
まず外食全般に相当する一般外食は、中期的には世帯購入頻度も支出金額も減少していた。世帯構成人数の減少も一因ではあるが、それをはるかに上回る減少率。この動きは外食産業で平均単価が下がったことに加え、外で食べる(=中食を含まない)外食を避ける流れが進んでいたことが見えてくる。一方ハンバーガーは少しずつではあるが、世帯購入頻度・支出金額ともに、確実に増加中「だった」。
ところが2012年以降は多様な変化が確認されている。一般外食全体では世帯購入頻度・支出金額の下落が止まり、横ばい、さらには上昇へとトレンドの転換が見受けられる。他の主食的外食は横ばいを示し、下落トレンドから転じた雰囲気。その一方、ハンバーガーは支出金額・世帯購入頻度ともに大きく下落を示す形となった。
いわば震災以降に生じたこれらの動きのうち、一般外食は上昇から横ばいに(ここ数年では世帯購入頻度で増加)、他の主食的外食は再び減少(ここ数年では世帯購入頻度でやや増加)に。食生活の中食化傾向の強まりで外食全般に軟調化の気配が見られるが、その実情が端々から見えてくる。
他方ハンバーガーは支出金額、世帯購入頻度ともに増加に転じている。これは携帯事業会社とのコラボや、外食としてハンバーガーを提供する業界の主軸企業であるマクドナルドの復調によるところが大きい(事業会社とのコラボの影響が大きければ頻度は増えても支出金額は横ばいか減るはずだが、双方とも増えていることからマクドナルドの堅調さによる影響が大きいのだろう)。
そして2020年以降に限れば新型コロナウイルス流行による社会環境の変化で、2020年ではイートインタイプの外食が世帯購入頻度・支出金額ともに大幅な落ち込みを見せる一方、ハンバーガーに限れば上記の通りテイクアウトへの注力で引き続き値を積み増ししている実情が確認できる。2021年では一般外食の頻度は前年からいくぶん持ち直しているものの、支出金額がさらに落ち込んでいるのは、上単価が高いであろう飲酒代の落ち込みが大きいからだと思われる。2022年以降は世帯購入頻度・支払金額ともにもどしを見せ、ほぼ新型コロナウイルス流行前までの水準に戻る形となった。
冒頭で触れている通り、家計内の経費削減対象として、しばしば上位項目に挙げられるのが外食。今回のデータでは、中期的には利用性向・利用金額ともに減少していたこと、そして2012年以降は復調の兆しが見られたこと、そしてここ数年では中食への大きなシフトの中で足を引っ張られている感は否めないことなどが分かる。中食へのシフトが2012年から2013年に始まっている動きと併せ、外食が2012年以降復調に見えたのは、食全体の回復と中食へのシフトの過程で起きた一時的な現象だったのかもしれない。一方で新型コロナウイルスの流行によって大きな落ち込みを見せ、現在はそこからの回復過程にあることも忘れてはならない。
今後外食への出費、利用頻度はいかなる動きを示すのか。新型コロナウイルス流行で生じた大きな流れも併せ、中食との関係とともに、大いに注目したいところではある。
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