世界規模でもパッケージからデジタルへの流れ…世界の音楽売り上げ動向(2015年)(最新)
2015/04/30 08:25
先日まで複数の切り口から日本の音楽市場に関する動向を確認した資料となった「日本のレコード産業2015」だが、昨年同様今年分においても、日本を含めた世界全体の音楽市場に関する各種データが盛り込まれている。そこで今回はそのデータを基に、世界の音楽に関する売上動向を確認していくことにする(【発表リリース:「日本のレコード産業2015」を発行】)。
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まずは音楽売上金額そのものの推移。卸売価格ベースで、最終消費者の手元に届いた上での売上とは幾分異なるが、業界動向を知る上ではまったく問題の無い値に違いない。なお2010年以降登場している「シンクロ」だが、これは「シンクロ権、Synchronization( rights)」で、例えば映画やゲームのような、音楽作品そのもの「以外」で楽曲を使う際の権利料などを意味する。
↑ 世界音楽売上金額推移(卸売価格ベース、米億ドル)
音楽市場においてはデジタル化が「売上の面での」規模縮小につながったとする意見がある。しかし今グラフを見る限り、売り上げの減退は2000年からすでに始まっており、インターネットの普及が始まりモバイル端末の浸透が加速した時期と比べると随分と早い。「有料音楽配信」が独自項目化された2002年時点ではまだ年間3億ドルでしか無かったことも合わせで考えれば、デジタル化は後押しをした一因に違いないが、主要因としては考えにくいことが分かる。
またその「有料音楽配信」だが、2005年以降は毎年大きく額面を積み上げ、直近2014年では69億ドルにまで達している。パッケージ額が69億ドルなのに対し、少なくとも今件資料の公開値では同額となる。このままの傾向が続けば、来年にも両者の価格は逆転するに違いない。
一方、時に盛り返しを見せることがあるものの、概して売上総額は減少傾向にある。パッケージの売上減退額が大きすぎ、有料音楽配信の増加が間に合わずに補完しきれない状態である。2014年はかろうじて「有料音楽配信」の増加分が「パッケージ」を補完しえたが、安穏と出来る状態ではない。
これを各年の売上総額に対する比率の推移で見たのが次のグラフ。
↑ 世界音楽売上・金額によるシェア推移(卸売価格ベース)
「有料音楽配信」の数値化は2002年以降だが、シェアを拡大し始めたのは2005年に入ってから。この動きはiTunes Storeの収録曲・対象国の増加とほぼ連動しており、同サービスが多大な貢献をしていることが分かる。2009年には売上が1/4に達し、直近2014年には4割を超えて5割に手が届くポジションにある。「パッケージ」は売上そのものだけでなくシェアも落としている様子が一目瞭然。
「有料音楽配信」の受け先の主軸となるスマートフォンやタブレット型端末は、今なお普及率の上昇過程にある。そこから察するに、この10年来の金額シェアの移り変わりはさらに進行する可能性が高い。恐らくはこの2-3年のうちに「パッケージ」と「有料音楽配信」の金額・シェアが逆転することも十分あり得よう。
なお今件各データはIFPI(国際レコード連盟)の資料を基にしていると説明にあるが、その該当資料の発表リリース【IFPI publishes Digital Music Report 2015】では一部データが公開されている。それによると今件の卸売価格ベースでは無く、市場販売ベースだが、2014年は総額149.7億ドルで前年の150.3億ドルから微減、そして「パッケージ」が74.2億ドルから68.2億ドルへと減少したのに対し、「有料音楽配信」は64.1億ドルから68.5億ドルに増加し、はじめて両者の立場が金額面で逆転する形となっている。
↑ 世界音楽売上金額推移(市場販売価格ベース、米億ドル)(IFPIの資料から直接の値)
来年の「日本のレコード産業」発表分では同じような状況が確認できるに違いない。
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