前年から新人も再デビューも減少…デビュー歌手動向(最新)
2024/05/15 02:47


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「初音ミク」に代表される「ボーカロイド」(ヤマハが開発した音声合成による歌声生成システム)ならパソコンがあれば誰でも歌手になることが可能(無論第三者に受け入れられるかは別問題)。さらに最近ではバーチャルユーチューバーの仕組みを連動させることで、かつてはアニメなどの世界でしか存在し得なかったバーチャル歌手の登場すらあり得るのが実情。しかし現状では音楽業界・市場には、生身のプロの歌手は欠かせない存在ではある。
ところが(現状の)歌手とて生き物に違いはなく、さらには老化、時代の流れに追いつけなくなるなどの理由で、新曲を永続的に出し続けるのは不可能。毎年多くの歌手予備群にある人たちが困難に立ち向かいながらプロデビューを目指し、一方で引退を余儀無くされる人が去り、音楽マーケットは常に新陳代謝が起きている。多くは何とかデビューを果たしてもメジャーにはなれず引退したり、あるいは地方巡業などでさらなる修行と実力の積み重ねを行うことになる。
新陳代謝の活性化は、その業界のすう勢を推し量る一つのバロメーター(もちろん「粗製乱造」など相反する要素と背中合わせである。また、新陳代謝の流れに巻き込まれることなく、「ベテラン」の域に達する匠的な歌手が多数いるのも事実)。それでは音楽業界のデビュー歌手数は、一体どのような推移を見せているのか。今資料では「日本レコード協会の会員社関係限定」数だが、デビュー・再デビュー数が公開されている。それをグラフ化したのが次の図(過去の記事から抽出するなどして、対象領域を1998年以降にまで拡大している)。なおこのデータでは表記は人だが、2人でも48人でも、複数人数によるグループの場合は1人として勘定している。実際には歌手一人一人でカウントした場合、この値よりも多い数となる。

↑ デビュー歌手数(人)
データ範囲内ではもっとも少ない値をつけた2001年を境に大きな変化が起き、「デビュー数総計の増加」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の増加」との二つの傾向が確認できた。特に後者においては、全デビュー数の2割前後が再デビューとの状態が維持されており、これが一種のトレンドであるかのようにも見えた。
ところが2009年以降は「デビュー合計数の減少」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の減少」といった、ここ数年来の動きとはまったく逆の流れを見せ、特に2010年においては両傾向が著しく現れた(もっとも、デビュースタイルの変化、具体的には「ユニットデビュー率の増加」も推定される)。
直近の2023年では新人は減少、再デビューも減少、結果としてデビュー合計数も減少している。なお2023年におけるデビュー合計数に占める再デビュー数の割合は21.6%となっている。
音楽CD関係絡みの記事で繰り返し伝えているが、今世紀に入ってから「iPodに代表されるデジタル音楽端末や携帯電話・スマートフォンのようなモバイル端末など音楽配信メディアの多角化、購入実行までのハードルの低下(いわゆる「手元ですぐにお気軽購入」が可能)」「情報取得手段の進歩と情報そのものの増加による趣向の多様分散化」により、選択購入される音楽が分散化し、ミリオンセラーが生まれ難い状況が生じている。一方で、歌手数が多ければそれだけ多くの曲が世に出回ることになる。

これらの変化が、今後業界構造にどのような影響を及ぼしていくことになるのか。視聴側の購入・視聴、さらには音楽そのものへの考え方の変化、視聴メディアの変容とともに、業界は大きく変化をとげていく。新人歌手数はその変化に伴い、どのような動きを見せるのか。毎年数百人単位でデビューを果たす歌手のうち、どれだけの数がヒット曲を世に放つのかも併せ、気になるところではある。
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