CDやネット配信の「ミリオン認定」などの動向(最新)
2024/05/15 02:44
コンテンツビジネスを営む者にとって、「ミリオン」(100万)は一つの大きな目標であり、ヒットの代名詞に他ならない。今回は日本レコード協会が2024年3月29日に発表した音楽業界に関する白書「日本のレコード産業2024」の公開値を基に、日本におけるミリオンセラーの概念に近い「ミリオン認定」などについて状況を把握するため、各種データの精査を行うことにした(【発表リリース:「日本のレコード産業2024」を発行】)。
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書籍やゲームソフト市場でもよく使われている言い回しで、作家・出版元の立場からは夢、目標の一つでもある「ミリオンセラー」(100万本以上売れることを意味する)。しかし「日本のレコード産業」では数年来この言い回しは使わず、代わりに「ミリオン認定」なる言葉を用いている。これは「会員各社からの申請に基づいた出荷枚数」を定期的に確認し、「発売日からの累計正味出荷枚数が100万枚を超えた場合」に認定する称号である(【解説ページ:ゴールドディスク認定作品】)。また累計正味出荷枚数が200万枚に達した場合、その時点で改めて2ミリオンが認定されるとともに、それ以降は100万枚毎に改めて認定されることになる。
ちなみにミリオンより下には10万枚以上の「ゴールド」をはじめ、25万枚以上の「プラチナ」、50万枚以上の「ダブル・プラチナ」などがある。あくまでも出荷枚数であり、販売枚数よりはハードルが低いことに留意しなければならない(数年前までの当サイト内類似記事では、資料も含め「ミリオンセラー」が使われていたため、現在の「ミリオン認定」の値との連動性は無い)。
次に示すのは、過去の分も合わせ、経年の「日本のレコード産業」で確認できる限りにおける「ミリオン認定」の推移。「アルバム」はミリオン認定の数、「(アルバム2ミリオン以上)」はミリオン認定のうち2ミリオン以上の認定作品数を意味する。
↑ 音楽CD・ミリオン認定など(作品数)
直近分となる2023年はアルバムではミリオン認定5本、シングルはミリオン認定6本。
■ミリオン
・Mr.5(King & Prince)
・i DO ME(Snow Man)
・SEVENTEEN 10th Mini Album「FML」(SEVENTEEN)
・SEVENTEEN JAPAN 1ST EP 「DREAM」(SEVENTEEN)(2022年11月9日)
・MAP OF THE SOUL : 7 〜 THE JOURNEY 〜(BTS)(2020年7月15日)
●シングル
■ミリオン
・Life goes on / We are young(King & Prince)
・タペストリー / W(Snow Man)
・Social Path(feat. LiSA) / Super Bowl -Japanese ver.-(Stray Kids)
・Dangerholic(Snow Man)
・ここにはないもの(乃木坂46)(2022年12月7日)
・シンデレラガール(King & Prince)(2018年5月23日)
※年月表記が無いのは2023年中発売
新型コロナウイルスの流行による外出忌避感なども影響し、ミリオン認定が出にくくなったこの数年だが、2023年はその観点では回復の中にあったようで、流行前の水準に届く値が出ている。アルバムでは5本、シングルでは6本がミリオン認定に。
2014年に生じた、グラフの緑線の大きなイレギュラー的動きだが、これは2014年発表分からミリオン認定のカテゴリ区分に変更が生じたことによるもの。これまで「着うた」「着うたフル」はCDとは別途「音楽配信」として数え、さらにパソコン(PC)やスマートフォンなど向けの「PC配信(シングル)」は今件項目では対象外としていた。しかし2014年分から「着うたフル」「PC配信(シングル)」を統合して「シングルトラック」として数え、「ミリオン認定作品」に加えている(【有料音楽配信認定】)。
2014年分では2014年1月において、これまで数えていなかった過去の「パソコン配信(シングル)」分の作品が大量にミリオン認定されている。つまり2014年分が跳ね上がったのは、2014年に大量のミリオン認定作が突如出現したのではなく、これまで未認定だったものが一挙に認定されたことによるもの。
↑ (参考)有料音楽配信(シングルトラック)における2014年分で認定カウントされた作品一覧(「日本のレコード産業2015」より)
2015年以降はそのイレギュラー的な動きも収まり、2023年では全部で5タイトルがカウントされる形となった。ちなみに2023年中に「配信を開始」し、ミリオン認定されたのは皆無である(2021年開始が1タイトル、2020年開始が2タイトル、2019年開始が1タイトル、2018年開始も1タイトル)。
2012年以降は携帯電話市場におけるスマートフォンへのシフトが進み、それに併せてモバイル端末の有料音楽配信市場が大きく変動、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)による「着うた」「着うたフル」の需要が大きく減退している。その動向はシングルトラックのミリオン認定数の減少として表れていたが、2014年からカウント方式が変わり、パソコンやスマートフォン向けの有料配信もカウントされることで、動きが読みにくい状況となったのは否めない。
かつて宇多田ヒカルの初アルバム「First Love」は初回出荷280万枚、1999年だけで800万枚を超えるヒットとなった(国外も合わせると1000万枚前後ではないかとの話もある)。このような「超ヒットセラー」は、現在の市場では奇跡でも生まれえないのが現実。2014年に顔を見せたあの「アナと雪の女王」ですら、アルバムはダブルミリオンに届いていない。趣向が分散拡散し、手法が多様化する以上、同一作品が集中的に売れることが難しくなったのが一因と言える(もちろん無料の音楽配信に音楽利用客が流れているなど、複合的要因はある)。2013年以降、定額制の聴き放題サービス部門が大きく伸びたのも、その状況変化を示す数字の一つであろう。
デジタル化、スマートフォンの普及、ソーシャルネットワークの浸透、そして定額制サービスの展開など、音楽を取り巻く環境は大きく変化を遂げている。「音を楽しむ」スタイルも多様化し、既存のビジネスモデルが通用しにくい時代であることは否めない。他方、主従を逆にしかねないビジネスモデルがよいものなのかについても、賛否両論がある。関係各位は今一度、音楽とビジネス、そして業界の将来のことを見据えるために、思案する必要があるのではないだろうか。
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