日本における学歴・男女別と完全失業率との関係(最新)
2024/05/19 02:44
先行する記事【日本の学歴・年齢階層別失業率】で日本における学歴と失業率の関係・現状について分析をしたが、そこでは男女の区分はせずに男女を合わせた値での検証だった。実際には男女においても大きな差異が見受けられる。そこで今回は総務省統計局が2024年2月9日に発表した、2023年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、学歴や男女別と完全失業率の関係・推移を確認していくことにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。
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男女それぞれの学歴別・完全失業率動向
「完全失業率」とは「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出される値。そして総務省統計局では「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」の3条件すべてに当てはまる人を「完全失業者」と認定している。現在失職中で仕事があればすぐに従事することが可能だが、仕事を探そうとはしていない人は完全失業者には該当しない。
先行記事でも解説したが、2012年分までは「労働力調査」の発表リリースにおいて、学歴や年齢階層別で区分した上での完全失業率が掲載されていた。しかし2013年分の発表からは数字の算出、公開が無くなってしまっている。そこで統計局に確認の上、2013年分以降は2012年分までの値と同じ算出方法で、各値を公開されている元の値(今件の場合は完全失業者、労働力人口)から計算し、過去のデータに追加する形で一連の動向をまとめ、各種グラフを作成している。
まずは全体の変移。
↑ 完全失業率(学歴別)
非労働力人口(求職活動をしていない人など)が除外されている問題もあるが、それは今回の考察とは別の話であり、考慮の必要はない。グラフを見る限りでは2009-2010年以降わずかずつだが、完全失業率は改善の方向に向かっている(減少している)。他方今回発表された2023年分では、新型コロナウイルス流行による景況感の後退で生じた2020年・2021年以降の悪化から、2022年同様に一部の学歴ではあるが改善の動きが生じている。上げたのは大学・大学院のみ。小学・中学・高校・旧中と短大・高専は新型コロナウイルス流行前の2019年の水準にほぼ戻ったが、大学・大学院は当然のことながら戻していない。
続いて男女別にそれぞれ、学歴別のグラフを作成する。
↑ 完全失業率(男性、学歴別)
↑ 完全失業率(女性、学歴別)
↑ 完全失業率(男女別・学歴別)(2023年)
大まかに分けて完全失業率が(高)「小学・中学・高校・旧中」「全体値」「短大・高専」「大学・大学院」(低)の順となるのは、男女合わせた全体値と変わらず。一方で、
・学歴間における完全失業率の差は男性の方が大きい。
・他の階層が2007年以降完全失業率を上げる中、男性の「大学・大学院」のみが失業率を下げてい”た”。しかし2009年にはその例外も失われた。
などの傾向が見られる。
特定学歴における男女の差を確認
「完全失業率は全体的に男性の方が高い」に関して、「全体」「大学・大学院のみ」を男女それぞれで抽出してグラフを作り直したのが次の図。
↑ 完全失業率(男女別)
↑ 完全失業率(大学・大学院卒、男女別)
男女でシンプルなグラフを作成して比べると、男性の方が失業率は全般的に高いことが改めて確認できる。これは「完全失業率」の計算方法(完全失業者÷労働力人口×100で求められ、労働力人口は従業者、休業者、完全失業者を合わせたもの。非労働力人口(求職活動をしていない人など)は含まれていない)や、女性の雇用形態として(より雇用されやすい)パートタイマーが増加しているのが大きく影響している。さらに同じ雇用形態でも男性と比べて女性の方が賃金が安い傾向にあるのも一因と考えてよい。
また、「大学・大学院卒のみ」のグラフで2006年から一時的な逆転現象が起きているが、この年に該当する関連事項といえば「改正・男女雇用機会均等法」の成立(施行は2007年)しかなく、これが影響しているものと考えるのが妥当である。そしてそれ以降、何度かのクロスを繰り返しながら、全体的には男女差がほとんど出ない状態が続いている。全体値のように一定幅を保ったままの推移ではないため、実質的には大学・大学院卒における完全失業率では、男女差が無くなりつつあると見た方がよいだろう。
また2021年でも男女で前年比の動きが正反対となり、男女の値の序列が入れ替わっているが、こちらは統計上のぶれというよりは新型コロナウイルスの流行で雇用市場が大きく縮小したことの影響によるものだろう。
繰り返しになるが、これらのデータはあくまでも数字的に「学歴が高い方が完全失業率が低い傾向にある」との完全失業率の一側面を示したのみの話。多分に相関関係だけでなく因果関係も類推できたとしても、「高学歴万能主義」の肯定・否定とは別次元の問題であることに留意してほしい。
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