全体2.6%、大学・大学院卒2.2%…日本の学歴・年齢階層別完全失業率(最新)

2024/05/17 02:45

このエントリーをはてなブックマークに追加
2024-0509世間一般には高学歴ほど就職は容易で、また失業もし難いとのイメージがある。そのイメージが確かなものかを確認するデータの一つが、総務省統計局が毎年発表している労働力調査。同局では2024年2月9日付で2023年における労働力調査(詳細集計)の年次分・速報結果を発表したが、その内容によればほとんどの年齢階層で高学歴ほど低失業であることが確認できる。今回は同発表内容を基に、学歴を絡めた完全失業率について、現状の精査を行うことにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。

スポンサードリンク


最新の学歴と年齢階層別の完全失業率動向


まず「完全失業率」の定義を確認しておく。これは「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出することができる。総務省統計局では「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」のすべてに当てはまる人を「完全失業者」として認定している。例えば仕事についておらず仕事があればすぐに働くことができるが、雇用に関するニュースを見聞きして「今就職活動をしても徒労に終わるだろう」とあきらめ、就職活動をしていなければ、完全失業者としてはカウントされない。

2012年分までは「労働力調査(詳細集計)年平均(速報)」発表の時点で学歴と年齢階層別で区分した、完全失業率が公開されていた。しかし2013年分からはこの公開値が無くなり、5月前後に公開予定の年報(詳細値をまとめたもの)でも収録の予定は無い。そこで完全失業率の定義を基に、計算方法について統計局に2012年までの公開値と同じ算出方法であることを総務省統計局に確認をした上で各値を計算、グラフを作成した。

年齢区分に関しては2014年分から「55歳以上」を「55歳-64歳」「65歳以上」に細分化している。なお学歴区分では大学と大学院を分けるべきとの意見もあるが、公開値が万人単位であるのに加え、大学院の失業者数はゼロか1万人との事例が多く、単独では異常値が計算結果として算出されてしまうため、過去の公開値の区分に習い、大学と大学院をまとめている。

↑ 完全失業率(学歴別・年齢階層別)(2023年)

↑ 完全失業率(学歴別・年齢階層別)(2023年)
完全失業率(学歴別・年齢階層別)(2023年)

完全失業率に関する全体的な構造「高学歴ほど低失業率」「若年層ほど高失業率」に変わりはない。ただし高齢層の失業率では学歴の差があまり出ていないどころか、むしろ高学歴の方が失業率が高い場合があることが確認できる。これは多分に「定年退職・早期退職後の再就職をこれまでの職場、新規職場を問わずに果たし、その際には学歴はさほど影響しない」からに他ならない。実際、この年齢階層における就業者の多くは非正規雇用となっている。

さらには「元々高学歴≒高年収であり、定年退職以外で失業・早期退職して再就職を望む場合、できる限り以前に近い待遇を望む傾向が強く、条件がかなう職に就き難い状況が生じている」こともあり、高学歴がかえって仇となっている(当人が自ら足かせをしている)ことの表れとも考えられる。再就職のハードルをあえて自ら上げ、結果としてそのハードルを飛び越えられない状態と表現できよう。

大卒・大学院卒の15-24歳における、つまり大学卒業後間もない新社会人の失業率は4.7%であるのも目にとまる。たとえ高学歴であったとしても、若年層の就職難の状況にさほど違いはないようだ。ただし上記で解説の通り、この年齢階層の高学歴、とりわけ「大学・大学院」の完全失業者は元々数が少ないのに加え、万人単位までの公開のため、値が多分にぶれやすい(統計局でもかつて公開していた時には万単位で計算をしていた)。実数としては2023年分の失業者数は大学と大学院を合わせて5万人。前年の2022年は5万人であり、失業者数に限れば前年と変わらない状態。

失業率は改善


昨年発表された2022年分の値から算出した完全失業率と、今回算出した2023年分の算出値の差異を計算した結果が次のグラフ。これは2022年から2023年の1年間における失業率の変化を表す。数がプラスに大きく振れるほど失業率が増加、つまり雇用状況が悪化していることを意味する。

↑ 完全失業率(前年比、学歴別・年齢階層別、ppt)(2023年)(立体スタイル)

↑ 完全失業率(前年比、学歴別・年齢階層別、ppt)(2023年)
↑ 完全失業率(前年比、学歴別・年齢階層別、ppt)(2023年)

↑ 完全失業率(卒業者限定、学歴別)
↑ 完全失業率(卒業者限定、学歴別)

多くの属性で前年比マイナスとなり、失業率の観点では改善が見られたと読み解ける。しかし大学・大学院では55-64歳以外すべてでプラスとなっており、大学・大学院の悪化ぶりが見て取れる。

なお今件データでは「完全失業者」の定義に従い、就職をあきらめて大学院入りした人、就職を一時留保し就職活動をしていない人などは考慮されていないことに留意する必要がある。



今回分となる2023年においては、前年比に限れば、大学・大学院の学歴で悪化の動きが確認できた。経年グラフの通り、これはここ数年の傾向で、気になる動きではある。一方で若年層の雇用状況が中高年と比べると悪い、低学歴者の雇用状況が高学歴者と比べると悪いとの状況に変わりはない。

なお定年退職後に再就職を求めない人は非労働人口として数えられ、失業率の計算からは除外される。就業者の内情や、失業者の失業理由、さらに完全失業率の計算の上では考慮されない「仕事をする意思はあるが、求職活動をしなかった」人などに関する現状は、機会を改めて確認をしていくことにしよう。


■関連記事:
【直近年度では大学生75.9%…戦後の学歴別就職状況の推移(最新)】
【3年で中卒者は5割強、高卒者は3割台後半が離職…学歴別・就職後の離職状況(最新)】
【若者労働者における正社員・非正社員率を学歴別・年齢階層別に(最新)】

スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|X(旧Twitter)|FacebookPage|Mail|RSS