無い袖は振れぬ…音楽にかけるお金が減った・無くなった理由を探る(2012年発表)

2013/03/29 07:55

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日本レコード協会は2013年2月12日、音楽ソフトや有料音楽配信など音楽メディアの需要の全体像の動向を把握することを目的として行われた調査「音楽メディアユーザー実態調査」の、2012年度分における結果の概要報告書を公表した。今回はその公開されたデータの中から「音楽に費やすお金が減った・無くなった人における、その理由」を確認する。先日掲載した【「今ので満足」「お金が無い」…音楽購入が減った人の事情を探る】は購入金額が減ったものの、現在も購入している人における事情だったが、今件はまったく買わなくなった人も含めた、より幅広い層への問いの結果である(【発表リリース:2012年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表】)。



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今調査は12-69歳の男女(中学生は親の代理回答)に対して2012年8月に実施されたもので、有効回答数は4948人。インターネットを用いたアンケート調査方式が用いられていて、性別・世代別・地域別にほぼ均等に回答を集めた上で、2010年国勢調査を元にウェイトバックが行われている。各種統計では修正後の値を用いている(ただし統計表上は参考値として、ウェイトバック前後の値が併記されている場合もある)。

上記にある通り以前掲載した「「今ので満足」「お金が無い」…音楽購入が減った人の事情を探る」は、「有料聴取層」、具体的には該当期間中に「音楽を聞くためにCDや有料音楽音源などの音楽商品を購入したり、お金を支払った経験がある」人を対象にしたもの。今件はその他も含めた全員に対し「昨年同期に比べて音楽の購入が減った・無くなった」か否かを尋ね、該当した人を対象にしている。つまり現時点で「無料聴取層」(新曲を知っている、聴いているが音楽にはお金を払っていない)や「無関心層(既知楽曲のみ)」(音楽にお金を払わず、新曲も聴かない)なども含まれており、この1年の間に「有料聴取層」から無料・無関心層に変わった人も該当する。

ちなみに全体に対して「この1年間で音楽に払うお金が減った、無くなった」人は64.1%。約2/3に達している。

↑ 昨年同期に比べて音楽の購入が減った・無くなった理由は(複数回答、2012年)(該当者限定)
↑ 昨年同期に比べて音楽の購入が減った・無くなった理由は(複数回答、2012年)(該当者限定)

最大の理由は「お小遣いや収入などの金銭的な余裕が無くなってきた」。これが4割強を占めている。いわゆる「首が回らなくなった状態」で、間接的には音楽に対する優先順位が低いことを意味する。「最大の理由」でもこれがトップの17.4%に達している。無い袖はいくら振ろうとしても振れない次第。

第2位の理由は「お金を払いたいと思う楽曲が少なくなった」。要はコストパフォーマンスを疑問視するようになった結果、音楽への支払いを減らしたということだが、二次的には色々な解釈ができる。単純に「質が下がった」「価格が上がった」以外に、他の趣味趣向への傾注が増して「相対的価値が落ちた」可能性もある。多様化が進む時代においては、双方の理由によるものと考えた方が道理は通る。それに近い回答が第3位の「音楽以外にお金をかけたい、あるいはお金をかける必要があるものが増えてきた」。音楽そのものを主体とするか、客体的立ち位置とするかの違いでしかなく、内容としてはさほど変わりない。

注目したいのはその次以降の項目。大きく2つあり、1つが「お金を支払いたいと思うアーティストが少なくなった」「音楽に対する興味が減った」という、音楽そのものとの距離を置くような理由。多分に質の低下(これもまた、趣味の多様化による競争相手が増加する中での相対的質の低下の面もあるが)によるところと考えて良い。特に「音楽に対する興味の薄れ」は「最大の理由」で第2位についており、危機感を覚える値といえる。

もう1つは「インターネットで入手・視聴できるようになったためお金をかける必要が無くなってきた」「音楽を視聴する色々な手段や形式が増えてきたため、お金をかけたいと思わなくなってきた」といった、音楽の配給の姿かたちの変化に伴う動向。新聞や映画、雑誌や漫画など多様な娯楽部門で起きている現象だが、音楽業界においても「手段の多様化に伴う市場(ただし無料配布も含む)の拡大」により、需要側の選択肢が増えた結果による、特定項目へのお金の消費額の減少が起きている。

それでは「音楽にかけるお金が減った・無くなった」人は、浮いたお金を何に費やしているのだろうか。

↑ 音楽にかけるお金が減った・無くなったことで、自分自身が自由に使えるお金の範囲で、代わりに費やすお金が増えたものはあるか(複数回答、2012年、該当者限定)
↑ 音楽にかけるお金が減った・無くなったことで、自分自身が自由に使えるお金の範囲で、代わりに費やすお金が増えたものはあるか(複数回答、2012年、該当者限定)

もっとも多く割り当てられているのは、「スポーツ・旅行・レジャー」、次いで「外食など交際費」。お気軽な趣味趣向という点では音楽視聴と同じであり、また先日掲載した【なぜ僕ら・私らは音楽に費やす時間を減らしているのだろう(音楽メディアユーザー実態調査2012年度版)】において解説した、「音楽に費やす時間を減らした人」の浮いた時間が当てられた対象と変わりない。また「ファッション」も類似の趣向といえよう。

お金注目したいのはその次、第4位の「スマートフォン・携帯電話の通信料金」。特に若年層で可処分所得を圧迫しつつある携帯電話などの通信料金だが、それをまかなうために音楽への支払いを削っている人が15.7%いることになる。関連サービスや有料ゲーム、有料動画の支払いに充てた人は少数でしかなく、それ以前の問題としての通信料金で、厳しいやりくりをしているようすが分かる。御存じの人も多いと思うが、音楽への消費性向が高いのも若年層であり、携帯電話の多用がなされている=支出金額が多いと考えられるのも若年層であることから、「携帯電話の多用」「お財布事情が厳しい」「音楽への出費を削る・足りない分は無料視聴できる曲で我慢」という流れは容易に想像できよう。

一方で「増えたものは無い(自由に使えるお金が減った)」とする意見も約1/4に達している。お小遣いにせよ収入にせよ、生活全般での厳しい財政状況がうかがいしれよう。



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