若年層で携帯音楽離れの動き…CDや着うたフルなどの世代別シェア動向(2013年発表)
2013/03/18 07:55
日本レコード協会は2013年2月12日、音楽ソフトや有料音楽配信など音楽メディアの需要を総合的に把握することを目的とした「音楽メディアユーザー実態調査」の2012年度版につき、結果概要を報告書として公表した。今回はその公開データの中から、特に着うたフルや新作CDの販売動向で昨年2011度分から小さからぬ動きが確認できる、「主要メディアの世代別・推定マーケットシェア」などに関して見ていくことにする(【発表リリース:2012年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表】)。
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今調査は12-69歳の男女(中学生は親の代理回答)に対して2012年8月に実施されたもので、有効回答数は4948人。インターネットアンケート調査方式で行われたもので、性別・世代別・地域別にほぼ均等に回答を集めた後、2010年国勢調査を元にウェイトバックを行い、各種統計では修正後の値を用いている。
今回取り上げるのは音楽市場の中でも注目を集めている、あるいは金額ベースでの動向が気になる「CDアルバム・シングル」「インターネット配信(有料音楽配信。インターネット・モバイルの双方)」「着うたフル(有料音楽配信のモバイルカテゴリーにおける「シングルトラック」)」の3項目。調査母体を「中学生-20代」「30-40代」「50-60代」の3世代に大きく分け、それぞれの金額面でのマーケットシェアを試算している(実市場では今区分に該当しない小学生以下、70代以降も市場の一部を形成しているが、考慮はしていない)。
↑ 各メディアの世代別推定マーケットシェア(金額)(2011-2012年)
「CDアルバム・シングル」市場は物理メディアであり、デジタル機器の操作の上での難儀性(高齢者は得てして若年層と比べるとデジタル系機器の取り扱いが苦手)も少ないことから、50-60代の売上も大きい。2012年は前年からさらにシェアを拡大している。また中堅層が大きくシェアを拡大しているのも注目に値する。
一方「インターネット音楽配信」全体では「CDアルバム・シングル」以上に高齢化が進んでいる。50-60代のシェアは10%ポイント以上の増加、30-40代も4%ポイント以上増え、その分中学生-20代が大きく減らしている。中堅層のシェアが大きいのは、デジタル方面への好奇心が旺盛で利用も活発であり、パソコンやデジタル携帯音楽端末などのデジタル機器を購入する金銭的余力も十分に持っていることなどが原因。若年層の減少は、多分にスマートフォンや動画共有サイトの活用による、無料楽曲の利用増加に伴う変化と考えれば道理が通る。
興味深いのは「着うたフル」。モバイル、つまり一般携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン)で提供されるシングルトラックを意味するが、「CDアルバム・シングル」「インターネット音楽配信」とは逆に、若年層のシェアが増加している。この層の利用枚数そのものが増加しているように見えてしまうが、実際には全体の平均購入枚数は減少している(平均で0.40枚/半年から0.25枚/半年)。相対的に減少枚数が少なめだったため、相対的なシェア比が上昇してしまっているだけの話(もっとも中学生は実際に購入枚数も増えている)。
↑ 各世代別・一人当たり着うたフル購入数(2011-2012年、半年間)
中学生以外では男性は30-50代、女性は20代で減少率が大人しめだが、それ以外では大きく平均購入枚数が減っている。この値は各属性全体に占める平均枚数なので、「購入者そのものが減った」「購入者の購入枚数が減った」双方の要因が考えられるが、多分にその双方によるところだろう。詳しくは機会を別にするが、全体における購入性向(買ったか、買わないかの二択)では全メディアで前年比マイナスの値を示している。
減少率が大きいのは男性若年層、女性は「中学生と20代」以外。女性の高齢層は別となるが、それ以外の層では多分にスマートフォンの利用増加層とかぶっている。やはり一般携帯電話からスマートフォンへの乗り換えが、着うたフルの利用を減少させる主要因と見て良い。
ちなみに新作のCD(シングル・アルバム)について、同じように属性別の平均購入枚数推移を示したのが次のグラフ。
↑ 各世代別・一人当たり新作CDシングル購入数(2011-2012年、半年間)
↑ 各世代別・一人当たり新作CDアルバム購入数(2011-2012年、半年間)
シングルでは高校生と20代、アルバムではやはり高校生と男性30代の伸びが目に留まる。また数量の変化そのものは小さいものの、シングル・アルバム共に男性高齢層で伸びている点に注目したい。繰り返しになるが全体としての購入性向は減少傾向にあるので、ファン行動的な購入が、一部層の平均枚数を底上げしているのかもしれない。
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