ボーカロイド曲のどこに魅力を感じるか、トップは「色々なジャンルの曲がある」
2013/03/08 14:45
東京工芸大学は2013年2月26日、音楽の視聴性向やいわゆる「ボーカロイド」に関する調査結果を発表した。それによると音楽を聴くことが好きな若年層のうち、「ボーカロイド曲」(ボカロ曲)の視聴経験がある人において、ぞのような点に魅力を覚えるかを尋ねたところ、最上位回答項目として挙げられたのは「色々なジャンルの曲がある」だった。次いで「動画共有サイトなどで無料で曲を聴ける」「生身の人間では歌えないような曲の表現がされる」などが続いている。作編曲の経験好き嫌い別では、全般的に「好き」な人ほど多くの点で魅力を感じていることがうかがえる(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2013年1月28日から30日にかけて、「音楽を聴くことが好き」とした12-39歳の男女に対し、携帯電話を用いたインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。男女比は1対1、世代構成比は10代・20代前半・同後半・30代前半・同後半で100人ずつ均等割り当て。調査実施機関はネットエイジア。「音楽試聴が好き」との条件付けのため、世間一般の調査対象母集団と比べ、回答には多少の音楽性向における偏りが生じていることを留意する必要がある。
「VOCALOID(ボーカロイド)」とは、ヤマハが開発した音符と歌詞を入力するだけで歌声を作成することができる歌声合成技術、および、その技術を応用したソフトウェアの総称。さらにはその技術が用いられている商品に設定されているキャラクター(例えば初音ミク)を指す場合もある。
以前【音楽好きで「ボカロ曲」を知ってる人7割近く、そのうち購入経験者は1割】で伝えたように、ボーカロイド曲の認知者は調査対象母集団の7割近く。その人達の中で実際にボカロ曲を聴いた経験がある人は6割強に達している。
↑ 次の経験・意向はあるか(「ボーカロイド曲」という言葉の認知者)(再録)
この「ボカロ曲視聴経験者(全体比で43.1%)」の人に、どのような点でボカロ曲に魅力を覚えるかを尋ねたところ、最上位の回答項目となったのは「色々なジャンルの曲がある」だった。該当者のうち43.2%がこの項目に同意を示している。
↑ ボーカロイド曲のどんなところに魅力を感じるか(複数回答、聴いたことがある人限定)
実際の歌手はよほどの技量がある人でなければ、異なるジャンルの曲を歌うことは滅多にない。ロックとポップスと演歌を同時に、しかも上手にこなす歌手はどれだけいるだろうか。一方でボカロ曲はボカロP(その曲関連のコンテンツ製作者(Pはプロデューサーの略))の作編曲技能が一定以上あれば、好きなジャンルの曲を作ることが出来る。ポップスでもロックでもクラシックでも演歌でも何でもアリ。出来栄え、質はまた別問題だが、事実上オールラウンドな点に魅力を覚える人は多い。
次いで多いのは41.8%とトップとほぼ同数で「動画共有サイトなどで無料で曲を聴ける」がついている。そもそもボカロ曲が浸透する理由の一つが、動画共有サイトに対し比較的低いハードルで自前の作品を披露することができる点にある。新譜を一人でも多くの人に聴いて欲しい制作サイドにとっては、視聴側の「無料で曲を聴ける」という点が自らにとってもメリットとなる次第。第5位の「動画共有などで質の高い曲・動画が視聴できる」もまた、機会創生の場として動画共有サイトが使われることのメリットを挙げており、聴き手・作り手双方にとっての長所となっているのが分かる。
実在の歌手同様、ボーカロイドのキャラクターに魅力を覚える人が多いのもポイント。比較的自由にキャラクタを使い、プロモーション動画を創ったり二次創作的な作品を展開できることも、作編曲と合わせ世界観の構築に一役も二役も買っており、これが魅力としても蓄積されていく。
この回答のうち上位について、作編曲をした経験があるか無いか、あるのなら好きかそうでないか別に再集計した結果が次のグラフ。
↑ ボーカロイド曲のどんなところに魅力を感じるか(複数回答、聴いたことがある人限定)(作編曲の嗜好別)
概して作編曲が好きな人の方が、嫌いな人よりも多くの魅力を感じている。音楽創作が好きな人ほどボーカロイド曲の創作可能性を通し、多様な方面に魅力を覚えているのだろう。一方で「質の高い作品の視聴ができる」点では「作編曲が好きでない」人の方がわずかに高い値だが、これは「自分では上手くできないからこそ」の結果なのかもしれない。
今件回答項目には見当たらないものの、そして個々の要素が該当する部分もあるが、ボーカロイドとその曲には音楽創生の垣根を低くし、音楽業界にさまざまな可能性を見出してくれた点で、魅力を感じる人も多いはず。今回取り上げられた個々の魅力は今後もさらに盛り上げを見せ、相乗効果が発揮され、技術の発展と共に多種多様な、そして個々の項目でもさらに奥深い進歩を遂げるに違いない。
(c) Crypton Future Media,Inc.ALL RIGHTS RESERVED
VOCALOIDはヤマハ(株)の登録商標です。
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