「夫婦別姓選択」意向の年齢階層別ギャップをもう少し詳しく調べてみる(最新)
2024/06/11 02:35
先行記事【「夫婦別姓選択」賛成派は反対派を上回るが、それ以上に同姓・通称使用の法改正派が多数に(最新)】で内閣府の「家族の法制に関する世論調査」を元に、現行制度における「夫婦同姓義務」に関する世間一般の意向を確認した。大まかにまとめると「「旧姓選択可能に法律変更派」は「現行法維持派」よりも多いが過半数に届かず。それらより「通称選択可能に法律変更派」が多く、全体では4割強」だった。かつては「若年層は「旧姓選択可能に法律変更派」が多数」だったため、「時間が経てば世論全体としても「旧姓選択可能に法律変更派」が多数」がさらに増え、全体で多数になるのでは」との意見が多々あり、直近年の結果に驚く人も少なくないはずだ。この件に関し、過去の調査結果がどのような動きを示していたかを見ていくことにする(【発表リリース:家族の法制に関する世論調査】)。
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今調査の調査要綱は先行記事「「夫婦別姓選択」賛成派は反対派を上回るが、それ以上に同姓・通称使用の法改正派が多数に(最新)」を参照のこと。
以前解説した通り、選択的な夫婦別氏制度(「旧姓選択可能に法律変更派」)に関し、おおよそ若年層ほど賛成派が多く、高齢者ほど反対派、つまり「現行制度の通り、夫婦は必ず同じ姓を名乗るべき」(「現行法維持派」)とする人が多い。また「同じ姓を名乗るべきだが、元の姓を通称として使えるようにすべき」(「通称選択可能に法律変更派」)とする意見は、高齢層以外では押しなべて多く、ほとんどの属性で最大意見となっている。
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2021年12月)(男女、年齢階層別)(再録)
今調査はほぼ5年おきに実施されており、調査方法や選択肢の内容などに多少の変化はあるものの、おおよそ経年推移をみることができる。そこでほぼ10年前の2012年12月実施分と、20年ほど前の2001年5月実施分について、同項目の結果を確認したのが次のグラフ。
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2001年5月)(男女・年齢階層別)
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2012年12月)(男女・年齢階層別)
少なくとも10年単位でさかのぼった限りにおいては「個々の世代に属する人が、夫婦の別氏制度に関して同じ意見を維持したまま、年を取った形跡は見られない」。直近年の結果において、社会的現象として「現行法維持派」「旧姓選択可能に法律変更派」いずれでもなく、「通称選択可能に法律変更派」の意見が急激に浸透したことがあらためて認識できる。
別姓反対、つまり「現行法維持派」の意見を持つ人の動きをまとめたのが次のグラフ。なお調査対象の下限年齢は2012年までは20歳、2017年以降は18歳となっている。
↑ 「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」回答値推移(男女・年齢階層別)
回答世代が年を重ねてもそのまま同じ意見を踏襲するのではなく、各年齢である程度固定化された意見があり、その一方で時代の流れとともに少しずつ個々の年齢に変化が生じると見たほうが自然ではある。また、「現行法維持派」は元々漸減する傾向にあることも確認できる。
もう10年・20年とさかのぼり、年齢階層別の動向を確認できるとよいのだが、残念ながら2001年より前の結果は全体値しか収録されていない。さらに1994年以前は設問の選択肢が大きく異なり(例えば「別姓は許可されるべきではないが、通称を使えるように」との選択肢が無い)、厳密には連続性はない。それでもあえてグラフ化を行ったのが次の図。
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(全体、経年推移)
「通称利用」の選択肢が与えられたこともあり、1996年の調査以降「現行法維持派」が減る動きを示している。2006年から2012年にかけていくぶん値を戻したものの、2017年で再び2001年の水準に戻った雰囲気。そして直近2021年では「現行法維持派」「旧姓選択可能に法律変更派」の双方、特に「旧姓選択可能に法律変更派」が減り、その分「通称選択可能に法律変更派」が大きく増えたことが分かる。
これだけ大きな変化が生じた原因を見出すことは難しいが、別設問の「夫婦の名字・姓が違うことによる、夫婦の間の子どもへの影響の有無」に関して経年で「好ましくない影響があると思う」の値が増えており、これが関係しているのかもしれない。また、調査方法が調査員による個別面接聴取法から郵送法に変わったもの一因だろう。
また高齢層で「別姓反対派」の意見が多数に上る理由は、今件調査からだけでは判断が難しい。年を経る=人生経験が長いことを意味していることから、「今までの制度で長年過ごしてきたが、大きな問題はなかった。だから今後あえて制度を変え、混乱のリスクを積み増しする必要はない」との考えを、高齢者の多くは持っているのかもしれない。
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