独り身高齢者の「一人ぼっち」時間、子供との距離と比例関係に(2011年社会生活基本調査)
2013/02/21 11:30
総務省統計局は2012年7月13日から12月21日にかけて順次、2011年における社会生活基本調査の結果を発表している。そこで【ボランティア活動の実態(2011年社会生活基本調査)】を手始めに、調査結果の中から気になる点を逐次抽出し、必要な場合にはさらなる資料や統計局上のデータベース上で公開されている詳細値を使い、補足した上でグラフ化し、状況の把握と精査を行っている。今回は高齢者(65歳以上)が生活時間(睡眠時間を除く時間)において、一人で過ごしているか・他人といるかに関して確認をしていく。いわゆる「孤独高齢者」の問題を垣間見れるデータでもあり、留意に値する内容である(【平成23年社会生活基本調査(総務省)】)。
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今調査は1976年以降5年おきに行われており、1日の生活時間の配分と、過去1年間における主な活動状況などを調べている。そしてその結果は集計された上で、仕事と生活の調和の推進、男女共同参画社会の形成、少子高齢化対策など、各種行政施策の基礎資料や立案内容の裏付けとして役立てられることになる。
まずは全体的な「一人でいた時間」の動向。単純に高齢者全体以外に、単身高齢者(世帯主本人のみ。二世帯住宅などで子供世帯が同一敷地内にて生活している事例も含む)、さらには単身高齢者のうち子供が居ない事例、子供が居る人に区分し、子供が居る場合にはその子がどこにいるかについての細分化も行った上で、平均時間を算出している。
↑ 子供の有無・居住地別、睡眠時間を除く「一人でいた時間」(週全体、1日あたり、65歳以上)
【「歳をとるとよく眠る」は本当か…平均的な一日の生活時間配分(2011年社会生活基本調査)】などでも触れているが、概して高齢者は3次活動時間(要は自由時間、プライベート時間)が長い。退職している人がほとんどなのが理由だが、それは同時に企業経由での他人とのつながりの機会が失われることをも意味する。結果として平均でも(土日を合わせて、だが)起きている時間(15時間40分)のうち6時半ほどが「一人でいる」計算になる。
これが単身高齢者、つまり子供も配偶者も同一世帯には居ない高齢者に限ると、約2倍の12時間に増加する。生活時間はほぼ同じなので、詳しくは後述するが7割強の時間を一人で過ごしていることになる。また、子供が居るよりは居ない方、子供が居ても居場所が遠い高齢者ほど「一人の時間」が伸び、子供との物理的距離がそのまま時間の長短に反映される結果となっている。
この「一人の時間」を時間の長さではなく、起きている時間に占める割合で示したのが次のグラフ。例えば高齢者全体では、起きている時間のうち42.3%を一人で過ごしており、単身高齢者の半分程度なのが分かる(もっとも単身であるか否かで起きている時間には大きな差異は無く、「一人の時間」の割合がほぼそのまま踏襲された形となっている)。
↑ 子供の有無・居住地別、睡眠時間を除く生活時間に占める「一人でいた時間」比率(週全体、1日あたり、65歳以上)
二世帯住宅などで子供世帯が同一敷地内に居れば6割台にとどまるが、それ以外の単身高齢者は起きている時間のうち8割近くを、一人で過ごしていることになる。「同一敷地内」以外では子供の距離と比率の間にほとんど差異が見られないのは、ごくわずかだが「距離が離れる」ほど生活時間も長くなるため。
「一人でいる」場合以外は、何らかの人と会話や仕事、娯楽を楽しんでいることになる。その対象は「家族」「学校や職場の人」「その他の人」に区分できる。そのうち「家族」と共に居た時間を平均化し、生活時間に占める比率を求めたのが次のグラフ。高齢者全体では生活時間の4割強を家族と過ごしていることになる。これは多分に配偶者がいる世帯において、配偶者と共にいた時間で占められている。
↑ 子供の有無・居住地別、睡眠時間を除く生活時間に占める「家族といた時間」比率(週全体、1日あたり、65歳以上)
配偶者が居ない単身高齢者になると、家族と共にいる時間は平均で6.4%でしかない。単身でも子供が同居していれば少しは時間が増えるが、居ない場合はさらに減り、わずか1.9%になる。
興味深いのは「子供が居る距離」と「家族といる時間比率」には比例の関係があること。これは上記の「一人でいる時間」の長さから推測は出来る。また、接する時間が長いほど親近感も強まることは容易に想像できることから、「距離感が物理的なものだけでなく、時間、そして親密度にも影響を与えうる」ことが見えてくる。実際、近くに住む親世帯にはしばしば足を運び、逆に親が来訪する機会も多い一方、遠くにいると正月やお盆休み程度にしか里帰りできない状況は、多くの人が実体験しているはず。
独り身の高齢者は心境的な孤独感・閉塞感によるストレスの蓄積など、病理的な面以外に、何かトラブルが生じた時に周囲への助けを求められない、第三者による発見が遅れるリスクが高まることになる。実際問題として今後さらに単身高齢世帯の増加は避けられないが、社会全体で包括的に見守る体制が求められるのではないだろうか。
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【会話の頻度、近所付き合いなどから見る、高齢者の「ぼっち」状態(高齢社会白書(2012年版))】
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