直近では10.9万世帯…子育て世代=若年層の生活保護世帯動向(最新)

2024/05/08 02:36

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2024-0428こども家庭庁が2023年12月に発表した、2022年度版の「少子化の状況及び少子化への対処施策の概況(こども白書)」は、結婚や子供関連の観点から各種統計資料を収録、さらに対応する政策などをまとめた白書である。これは昨今の子育て問題などを網羅しており、検証できる指標が数多く盛り込まれ、注目に値する。そこで今回はその中の記述をベースに、子育て世代=若年層における子育ての困難さの現況を表す一つのデータとして、生活保護を受けている若年層世帯の動向について、原本データをたどり、状況を確認していくことにする(【少子化の状況及び少子化への対処施策の概況】)。

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別記事【20代雇用者のうち1/4は年収が300万円台…子育て世代=若年層の所得伸び悩み具合(最新)】でも記している通り、子育て世代=若年層のふところ具合は以前と比べ厳しい状態にある。

↑ 世帯年収階層別雇用者構成(世帯主年齢20代、就業構造基本調査より)(再録)
↑ 世帯年収階層別雇用者構成(世帯主年齢20代、就業構造基本調査より)(再録)

さらに多様な要因で生活するのに足りる収入を得ることができない場合、国の制度における生活保護の庇護(ひご)を受ける人も出てくる。次のグラフは2000年度以降の生活保護世帯数全体と世帯主が39歳以下の世帯(=子育て世代と設定)数推移、そして生活保護世帯全体に占める世帯主39歳以下世帯数比率を示したもの。生活保護世帯全体の増加とともに、子育て世代の被生活保護世帯数も増加して「いた」のが分かる。

なお今件データは厚生労働省の【被保護者調査】を基にしたもの。現時点では2022年度分までが確認できる。

↑ 生活保護世帯数(万世帯)
↑ 生活保護世帯数(万世帯)

↑ 生活保護世帯総数に占める世帯主39歳以下世帯数比率
↑ 生活保護世帯総数に占める世帯主39歳以下世帯数比率

景気後退の他に、少子化や核家族化に伴い世帯数そのものが漸増し、世帯を支える収入源(となる人数)が減ることで、平均世帯収入も減っていく。【収入と税金の変化(家計調査報告(家計収支編))(最新)】などでも触れているが、平均世帯収入そのものの水準が下がるのに伴い、生活保護世帯数が増加しているのは納得のいく話(状況そのものが好ましいわけではない)。それに伴い、生活保護を受ける子育て世代世帯も増えていく。特に金融危機ぼっ発・リーマンショックで世界的な景気後退の動きが生じた2009年以降は、増加率も加速度的な上昇の雰囲気を見せている。

他方2011年度以降は、保護対象の39歳以下世帯数がほぼ横ばい、さらには減少に向かうとともに、生活保護世帯全体に占める比率も減少している。これは該当する年齢階層の世帯数そのものの減少に加え、景況感の回復、そして高齢者、特に65歳以上の世帯主世帯による生活保護世帯が急増しているのが原因。今記事主旨とは別の話なので詳細は控えるが、2010年度から2022年度にかけて、65歳以上世帯の生活保護世帯数は47%も増加している(64歳以下では7%の減少)。

保護世帯全体に占める子育て世代世帯は、直近の2022年度では6.74%。統計値が取得できる2000年以降では2010年度の9.59%をピークとして漸減していたが、2020年度を底に増加に転じている動きがあり、注意すべき状況に違いはない。値が落ちていた原因は上記の通り。ちなみに高齢者世帯(65歳以上の高齢者のみ、あるいはそれに加えて18歳未満の未婚の人のみの世帯)の比率は、直近2022年度で59.5%に達している。

金銭が子育てに関する構成要素のすべてではない。しかし金銭が多様なサービス・物品の代替となり、それらが精神的な支えにもなることを考えれば、重要な要件であることに違いはない。子育て世代の生活保護世帯が多数存在することは、経済的観点で社会全体として子育てがしにくい状況であることを意味する(一定数の存在は仕方がない。多様なリスクの体現化はありうる)。少子化対策の観点からも、同世代に対する経済的支援・方策の必要性を再認識できる数字ではある。

ちなみに直近分となる2022年度分を含めた過去5年間における世帯主年齢階層別・被保護世帯率は次の通り。例えば2022年度では80歳以上が20.4%とあるので、2022年度における生活保護世帯全体の20.4%は、世帯主の年齢が80歳以上となる。

↑ 世帯主の年齢階層別生活保護世帯率(2018-2022年度)
↑ 世帯主の年齢階層別生活保護世帯率(2018-2022年度)

生活保護世帯数の総数が増えている(ここ8年ほどでは事実上横ばいだが)のにもかかわらず、若年層対象世帯数比率が減っていたのはなぜだろうと疑問に思う人もいたかもしれないが、このグラフから分かる通り、ここ数年は子育て世代の比率がほぼ横ばいから漸減、40代は減少、50代は微増、60代は減少、70代以上はおおよそ増加の傾向にある。60代の減少は退職金で生活保護を受けなくても済む人が増えたものと考えられる。

他方、70歳以上の比率はおおよそ増加。定年退職を果たし、再就職で生活資金の補てんを望むも再就職が難しく、年金などでは生活が困難な世帯が対象となる事例が多い(退職金やこれまでの積立金がほとんど無い事例が多いのだろう)。中でも一人暮らしの高齢者が圧倒的に多い。

↑ 高齢者世帯(65歳以上の人のみ、またはそれに18歳未満の未婚者が加わった世帯)の被保護世帯における世帯主の年齢階層・世帯構成人数別世帯数(世帯数)(2022年度)
↑ 高齢者世帯(65歳以上の人のみ、またはそれに18歳未満の未婚者が加わった世帯)の被保護世帯における世帯主の年齢階層・世帯構成人数別世帯数(世帯数)(2022年度)

中長期的な社会の安定維持を考慮すれば、若年層・子育て世代への手厚い保護を優先すべきなのは間違いないが、今後高齢化社会が進むに連れ、高齢者世帯による生活保護世帯の増加傾向のさらなる顕著化も予想される。自己責任や社会リソースの分配の観点で、子育て世代へのサポートとのすり合わせが、今まで以上に困難なものになることは容易に想像できよう。


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